授業の基本的な進め方

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授業の基本構造

日本語授業は、文型の導入から応用まで段階的に進めることで、学習者の実践的なコミュニケーション能力を養います。

以下は、みん日の各課(文型・会話・練習A・B・C・教科書問題)を活用した授業の流れです。

  1. 導入:文型の意味と使用場面を明確に提示。
  2. 機械練習(練習B):文型を反復練習し、口頭での定着を図る。
  3. 応用練習(練習C):文型を実際の会話や状況に応用。
  4. プリント:書く練習で知識を整理・定着。
  5. ゲーム・活動:文型を使った実践的な活動で学習を楽しく締めくくる。

※ 練習Aは自習用として扱い、授業では省略することが一般的です。会話ビデオの活用方法はこちらを参照してください。

授業時間の配分例:導入20%、機械練習20%、応用練習20%、プリント10%、ゲーム・活動30%。この配分は、学習者の集中力と楽しさをバランスよく保ちます。

導入の重要性と展開方法

導入

文型の導入は授業の成功を左右する重要なステップです。インパクトのある絵やレアリアを使って、その文型に一番ふさわしい使用例を提示します。

 導入は授業で一番大切なところです

学習者が文型の意味と使用場面を直感的に理解できるようにします。

導入の『入り』にクラスがざわついている状況はよくないです。練習BやCは多少ざわついていてもいいですが、導入は完全に静かになるまで始めません。

例えば、文型「たことがあります」。珍しい事、経験を述べるものの導入で、「ネッシーを見たことがあります」という文はあまりよくないです。まず導入で『これまで授業で使わなかった言葉』は使わない方が無難です。しょっぱなつまずきます。ネッシーという語を授業中に教えていて、かつ『一人の漏れもなく周知している』のならいい導入と言えます。ただ、ネッシーが世界的に知名度が高く、呼び方も国でほとんど違いがないとは思えません(未習語についてはこちらの投稿にまとめてあります)

「寿司を食べたことがあります」
「馬に乗ったことがあります」
どちらも練習Bならいいですが、導入としてはもう少しインパクトが欲しいです。確かに乗ったことのある人は少ないでしょうが、乗馬の経験について話す事はあまりないし、そもそも乗馬の話であまり盛り上がる教室はありません。

「マイケルジャクソンに会ったことがあります」
マイケルジャクソンは教科書では出てこない語ですが、私のクラスの学生にマイケルを知らない子はいませんでした(マイケルの写真必須)。私の場合15課の「~を知っていますか」でも入れているので使えます。

S:マイケルに会ったの?先生すごい!

となれば成功ですが、この後すぐに騒がしくなるので、すぐにリピートさせて、静かにさせます。

導入→盛り上がる→リピートで黙らせる→もうちょっと導入→リピート→②

の流れで導入を進めます。

機械練習

その日使う文型をFCで口慣らしします。

例:みん日2課「これは<物>です」

  1. 平叙文:これは辞書です(絵カードや実物で提示、リピート練習)。
  2. 否定文:これは辞書じゃありません(別の物で代入練習)。
  3. 真偽疑問文:これは辞書ですか+答え方(質問と回答を練習)。
  4. 疑問詞疑問文:これは何ですか(疑問詞を用いた応用)。
  5. 会話・活動:ペアで質問・回答のゲーム。

例:みん日13課「<人>はVマスたいです」

  1. 平叙文:私は沖縄へ行きたいです(旅行の写真で提示)。
  2. 否定文:私は沖縄へ行きたくないです(理由を尋ねるQA)。
  3. 真偽疑問文:あなたは沖縄へ行きたいですか+答え方。
  4. 疑問詞疑問文:あなたはどこへ行きたいですか(個人に合わせた回答)。

応用練習

状況を表す絵カードを見せて、文型だけでなく、助詞や目的語なども含めた完全な文を作らせる。
キューの出しかたに注意。これが曖昧だったり、わかりにくかったりするとテンポが悪くなります。

プリント

プリントのやり方説明→書かせる→答え合わせ

という流れでやります。答え合わせの際は学生に答えを言わせるだけでなく、教師も答えを言いましょう。学生は声が小さかったり、特殊拍が口頭ではわかなかったりします。

文型を使ったゲーム・活動

導入から練習までやったのは、この活動をするためです。つまり、この『ゴール』を目指してこれまで頑張ってきたので、それを使って何ができるようになったのかを実感させましょう

練習の種類と進め方

練習は文型の定着と応用を促すために多様な形式で行います。以下は代表的な練習方法です。

  • 代入練習:例:「パンを食べます」→「ご飯を食べます」(文型の一部の要素を入れ替え)。
  • 文法練習:例:「パンを食べます」→「パンを食べました」(活用形を練習)。
  • 拡大練習:例:「私はパンを食べます」→「私は毎朝パンを食べます」(文を拡張)。
  • 結合練習:例:「これは黒いです」「これはペンです」→「これは黒いペンです」(複数の文を統合)。
  • 変換練習:例:「電話をかけています」→「電話をかけていません」(文法事項を変化)。

クラスの雰囲気に合わせ、「わいわいパート」(ゲームや会話)と「もくもくパート」(プリント)をバランスよく配置。一度プリントをはさみ、習った事を『頭に落とす』作業としてが必要になってきます。

教材作成のポイント

効果的な授業には適切な教材が不可欠です。以下は教材作成の方法と注意点です。

  • 絵カード(PC):文型の使用場面を視覚的に提示(例:「書きます」→「書いてください」)。
  • 文字カード(LC):接続が難しい文型を文字で提示。
  • 板書:前件を書き、後件を学習者に考えさせる。休み時間に準備し、授業時間を効率化。
  • 例文の選定:文化的背景を考慮し、興味を引く文を選ぶ。

学生の年齢や背景に合わせ、10~30の例文を用意する。

この『教材』というのは、レアリアはもちろん、PCなどを切り貼りして編集したり、絵が書ける人ならそれを書く、といった作業のことです。
教材を作る上で大切なことは一つだけです。それは、

練習の『意味』を考える

ことです。意味とは下記のことです。

  • 板書して練習した方がいいか
  • 口頭で練習した方がいいか
  • 板書でする場合は前件作成か後件作成か
  • 文字カード(LC)は必要か、絵カード(PC)を使うか
  • 後件は働きかけの文になっているかまたは単に文型を使った接続練習か
  • 後件に使われている既習文型は何なのか
  • どういった状況で使われるか文型、例文か
  • 使用場面を適切に示せるか、示すならそれはPCでやるのか
  • ジェスチャーも交えながらやるのか
  • 練習内に使われている品詞は

特に、練習B1とB2は似ている事が多いですが、よく見るとB1は主語が前にあるけど、B2は主語が後ろにある、など微妙に違うものもあります。

練習C

ここからは、練習Cのやり方を紹介します。教科書の練習Cをスキャンし、そのイラストに吹き出しを入れて、拡大印刷したものをホワイトボードに張り付けておきます。

31課のC-1を例にとります。会話は下記の通りです。

A:夏休みは何か予定がありますか
B:北海道を旅行するつもりです
A:いいですね。どのくらいですか
B:10日の予定です

①まずは会話シーンを見せ、どのような会話が行われているか考えさせます。

教師がホワイトボードに吹き出しを書き、ここにどんな台詞が入るか考えさせます。

台詞は完全に教科書と一致させなくてもいいですが、練習Cにしかない表現や単語もあるためそれらはこちらから提出します。

会話が完成したら、次の会話を上記のように進めていきます。

練習Cはそれぞれ3つありますが、3つ全て会話を完成させたらペアワークで練習させます。

まとめ

日本語授業の成功は、論理的な構造と学習者中心のアプローチにかかっています。インパクトのある導入、段階的な練習、楽しい活動を通じて、学習者に「学んだことが使える」実感を与えましょう。教材分析と例文作成に時間をかけ、学生の背景に合わせた授業設計を目指してください。

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