会話の映像(ビデオ)を使った授業の進め方

みんなの日本語の会話、映像を使った授業のやり方がわからないとご質問を多く受けるので、これについて書いてみようと思います。

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33課 映像概要

みんなの日本語2版 33課 会話「これはどういう意味ですか」
を例にとり説明します。33課は「命令・禁止形」「~という意味です」などを扱う課です。

ワットさんが駅前に車を止め、駐車違反の紙をもらいました。たった10分の駐車で15000円の罰金を払わなければならないという内容です。
是非、お手持ちのテキストを見ながら読み進めてください。

なお、「ビデオ」という言い方は世代によってわかりやすい人とそうでない人がいます。言い方も若干古い印象なので、「映像」と表記します。

映像視聴前:映像に関する話をする

映像を視聴する前に、映像に関する話をします。先行知識の活性化(先行オーガナイザー)です。

T:自転車に乗りますか
S:はい
T:自転車を止めてはいけないところがありますね。どこですか
S:駅前です。どうして止めてはいけませんか。私の国は大丈夫です
T:人が多いですから。皆が駅前に自転車止めたら大変ですよ。止めたらいくら払わなければなりませんか
S:(地域による)円

撤去されること、お金を払わなければならないことなどを話します。

T:この紙を見たことがありますか(駐車禁止の貼り紙の写真を見せる)

レアリアは入手が難しいので、画像などを見せてもいいでしょう。興味を引くことできます。

映像途中:話の顛末を予想

映像を途中で止めて、話の顛末を予想させます。時間がない場合はここを削るといいでしょう。例えば、会話、p61の7行目、ワットさんが「~だけ…」と言っています。ここで一度映像を止めます。

T:この後、ワットさんはどうなると思いますか。何をすると思いますか
S:お金を払いに行きます
S:逃げます。国へ帰ります

JLPTの問題に「この後男性はどうしますか」「この後2人は何をするでしょう」といった未来について考えさせる聴解の問題が多くあります。話の流れから答えを選ぶわけなのですが、それを今から練習しておく、できるのです。

映像終了後:その後を考える

映像を最後まで見たら、その後皆ならどうするかを考えさせます。

罰金15000円、雑誌300円で、大赤字というオチがついていますが、この後、ワットはどうなるのかを考えさせます。それぞれ「その後」を話し合わせ、書かせ、言わせてもいいでしょう。

また、「その後」だけでなく、他の〇〇違反を紹介して、いくら払うと思うかなどを話し合ってもいいでしょう。JLPTは日本語能力が高いだけでは合格できません日本の文化の習得も大事です
きっとおもしろい答えが飛び出します。

難しい単語、表現の扱い

会話の中で出てくる難しい単語、表現などは適宜説明していきます。

下のクラスならば最初に説明したいところなのですが、「わからない言葉を推測する力」を養えないので、お勧めしません
やるのならば、映像の途中でやりながらか、できるクラスなら最後まで一気に観て、まとめて説明しても構いません。

字幕の表示・非表示

映像に字幕を表示させるかどうか選べますが、どれだけできないクラスでも最初は字幕を見せずにやりましょう。

漢字圏の学生も非漢字圏の学生も、聴解の前では皆等しくなります。字幕を表示すると文字に頼ってしまい、聴解の目標が達成できません。

字幕を見せるのならば、2回目以降にしましょう

暗記➔発表ってどうなの?

よく聞く練習方法が、

  1. 映像を見る
  2. 暗記する
  3. 発表する(ペアまたは全員の前で)

という3段階です。暗記は「会話の流れを覚えるからいい」とする意見も聞きます。しかし、それが日本語能力の向上に役立っているのか、効果は甚だ疑問です。この3段階に1コマ使うなんて教師もいます。覚える時間、発表する時間をもっと能動的な、脳を動かす活動に充てた方が有意義です。

まとめ

会話の映像はただ見るだけではもったいない、非常に様々な活用方法が考えられます。映像自体、授業ではあまり使わないので、うまく活用できれば学習者の興味を引けます

観る』という受動的な活動から、『発話する』という能動的な活動へ持って行くことが望ましいです。

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