【JLPT N1】「はおろか」

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「はおろか」【N1】

用法

≪接続≫
 N+はおろか
┃以下接続例
    V:なし
    A:なし
  Na:なし
    N:本+はおろか

≪意味・使い方
 XはおろかY。

  1. Xは当然として、Yも <X, let alone Y>
  2. YはXよりも難しい/簡単なもの、大切なもの、など程度が大きいものを置く
  3. XとYは、同じ種類の中における程度や価値に差があるものに限る
  4. 日常使いはしない
    例:×あのカレー屋はカレーはおろかサラダもおいしい
  5. マイナスの意味を持つ文になるため、Yは肯定の形もあるが、否定の形が多い。
    例:×日本語学校は、ただ日本語を習うことはおろか、習慣も知ることができる
  6. 後件に意志、働きかけなどは×
    例:×冬休みは国へ帰ることはおろか、国の家族に会いたい(意志)
      ×図書館では食事はおろか、話をしないでください(働きかけ)

よく一緒に使われる言葉・文型・表現

「さえ」…後件の文の主語に「さえ」を付けて強調することが多い。
例:彼は漢字はおろかひらがなさえ読めない。

例文

そんな成績では進学はおろか、卒業すらできないよ。 (With such grades, you can’t even graduate, let alone go on to higher education.)

腰が痛くて、歩くことはおろか、座ることさえ難しい。 (My back hurts so much that I can’t even walk, let alone sit down.)

地震は家や財産はおろか、家族の命まで奪っていった。 (The earthquake took away not only homes and property but also the lives of families.)

漢字はおろかひらがなさえ読めなかった。 (He couldn’t even read hiragana, let alone kanji.)

家賃は安いが、エアコンはおろかトイレすらない。 (The rent is cheap, but there isn’t even an air conditioner, let alone a toilet.)

彼は弁護士はおろか、家族まで信じられなくなっていた。 (He had lost trust not only in lawyers but also in his own family.)

彼は遭難中、食べ物はおろか、水すら飲まず過ごしていたらしい。 (During the ordeal, he went without food, let alone water.)

彼はパソコンはおろか、時計すら嫌いだという酷い機械嫌いらしい。 (He seems to dislike computers, let alone watches.)

ケチな彼は旅行してもお土産はおろか、食事すら持参のおにぎりしか食べない。 (He’s so stingy that even when traveling, he only brings homemade rice balls, let alone souvenirs.)

歯医者の父は私にチョコやキャンディーはおろか、果物すら与えてくれなかった。 (My dentist father didn’t give me fruit, let alone chocolates or candies.)

彼はデート中、食事代はおろか、電車代すら彼女に払わせる。 (During the date, he made his girlfriend pay not only for the meal but also for the train fare.)

教師用メモ

留学生からの質問

ある留学生から以下のメールをいただきました。

“YはXよりも難しい/簡単なもの、大切なもの、など程度が大きいものを置く”
と書いてあります。XはおろかYだとして程度の大きさを表すとX>Yになります。しかし、私が勉強している本では
” 「XはおろかY」 : 「Xを当然のこととして取り上げ、それよりも程度が上の場合の状態を強調する。”
と書いてあります。ここではX<Yになります。すると、まったく逆な説明となります。お忙しいどころをお手数をおかけしますが、これについてもっと詳しい説明をもらえないでしょうか。

まずはじめに言わなければならないのは、私の説明と上記メールを送った方が読まれた参考書とで説明、解釈に相違はありませんし、逆でもありません。程度の大小を表すならば、「X<Y」となります。

しかし、この「程度が大きい」というのは、少々理解が難しいので、補足で説明しておきます。

「程度が大きい」あるいは「程度が上」を考えるとき、「何の程度が大きいのか、上なのか」を考える必要があります。つまり、例えば「簡単さ」の程度なら大きいのは「簡単な方」、「難しさ」の程度なら大きいのは「難しい方」になるのです。
したがって、「XはおろかY」と言う時、Yの方が難しい場合もあれば簡単な場合も、大きい/小さい、高い/低い場合もあります

例えば、
 彼は成人しているのに漢字はおろかひらがなさえ読めない。
という文では、話者は「簡単さの程度が大きいひらがなも読めないのだから、漢字は当然読めません」と言いたいのです。「簡単さ」の程度が大きいのは「ひらがな」です。

一方、
 彼はまだ3歳なのにひらがなはおろか漢字まで読める。
という文では、話者は「難しさの程度が大きい漢字も読めるのだから、ひらがなは当然読めます」と言いたいのです。「難しさ」の程度が大きいのは「漢字」です。

このように、「程度が大きい」というのは、「何の程度が大きいのか」を考えなければならない、ということを念頭に置く必要があります。

もうひとつ、この「程度の大きさ」を決めるのは常に話者である、ということにも注意しなければなりません。

例えば、
 田中さんは漢字はおろかひらがなさえ読めない。
という文では、田中さんにとって「難しい(読めない)」のはひらがなと漢字です。これについて、田中さん自身がその難しさ、あるいは簡単さの程度に言及しているわけではありません。あくまでも話者が「簡単さ」の程度を決め、この事実について「簡単さの程度が大きいひらがなも読めないのだから、漢字は当然読めません」と発言しているのです。

このように、「程度の大きさを決めるのは話者である」ということも頭に入れておくと、「程度の大きさ」で混乱することは少なくなるのではないかと思います。

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