授業の基本的な進め方

 

目次

  1. 提出順序

  2. 進行方法(導入方法)

  3. 練習方法

  4. 接続

  5. 例文作成

  6. 教材分析

提出順序

様々なやり方があると思いますが、最も基本的なものを紹介します。
各課にいくつかの文型があります。その中の一つの文型を使った会話、活動、目標を決め、それを達成することを目指します。一つ達成したら、次の文型に進み、また次と繰り返します。

みん日には各課左のページから『文型』『会話』『練習A』『練習B』『練習C』『教科書問題(教問)』があります。どれからやればいいのかわからないという声をよく聞くので、まず基本的な展開を紹介します。

①:導入
→②:練習B
→③:練習C
→④:練習BとCを全て終わらせる
→⑤:文型
→➅:会話/教問
※練習Aは学生が家で一人で見ればいいもので、一緒に見る必要はなく、実際私はこれを使った/やったことはありません。
※会話はビデオを先に見せ、どんな場面での会話かなどたっぷり広げてスクリプトを見せます。

具体的な進め方ですが、まずは導入で平叙文。平叙文とは最も基本的な文で、何もいじっていない形のことです。例えば、「私はカキアゲです」などの文のことです。これを「私はカキアゲじゃありません」とすると、否定文となります。

平叙文の次に教えるのは、否定文です。そして、疑問文と続きますが、この3パターンではないので、ここでL2とL13を例にとって、説明します。

L2の「これは<物>です」
①平叙文:これは辞書です
②否定文:これは辞書じゃありません
③真偽疑問文:これは辞書ですか+質問の答え方
④疑問詞疑問文:これは何ですか
⑤会話練習、活動

①が終わったらその形をリピートさせ、練習です。このリピートが初級では一番重要なところで、これをおろそかにすると、学生の口が回らず、②以降がぐだぐだになってしまうことに加え、⑤の活動なんて話せないから大失敗に終わります。このリピートは①の後だけでなく、②の後も、③の後も新しい形が終わったら毎回してください。練習は辞書を他の物、消しゴムや教科書に代える代入練習などを全体でやり、個別に当てての確認の流れです。

L13の「<人>はVマスたいです」
①平叙文:私は沖縄へ行きたいです
②否定文:私は沖縄へ行きたくないです
③真偽疑問文:あなたは沖縄へ行きたいですか +質問の答え方
④疑問詞疑問文:あなたはどこへ行きたいですか

コラム

学生に答えを言わせた後、私は必ずその答えを2回は繰り返すようにしている。
私が学生だった頃、教師が学生に当て、答えた学生の声が小さく聞こえないのに次の問題に行く教師から獲得した技術だ。
日本語学校の場合、声量だけの問題でもない。学生が「1番の答えは『取て』です」と言って次の問題に行ってしまうと大変だ。『取って』のような特殊拍などが怖いのでダメ押しで私はさらに答えを書く!よっぽど長い文章の場合や時間に追われていない限り書く!

練習例

代入練習・・・与えられたキューを使って文の一部を入れ替える。飽くまで「を食べます」のところを練習しているので、パンやりんごに焦点を当てているわけではない
例:パンを食べます ご飯を食べます りんごを食べます……

文法練習・・・動詞を入れ替えるだけ
例:パンをたべます パンを食べました パンを食べる パンを食べません パンを食べています…

拡大練習・・・前を足していく練習。日本語の文は後ろが大事
例:私はパンを食べます 私はいつもパンを食べます 私は毎朝パンを食べますが、食べられないときもあるので~

結合練習・・・与えられた二つ以上の文を一つにする練習
例:これは黒いです。これはペンです。→これは黒いペンです。

変換練習・・・活用などの文法事項を変化させる。Tがキューを出し、例えば「否定形に」させるキューを出し、Sが「電話をかけています」を「電話をかけていません」にする

導入するときに、②と③が逆の方がいいと思うことがありますが、これが一番オーソドックスなやり方です。できないクラスに対しての練習では、文を細かくバラして、リピート→結合→文作→・・・のようにボトムアップが望ましいです。
⑤のゴールで可能なら授業が終わっても忘れない、印象的な(楽しい)活動を行うと「楽しかったけど勉強もしたなあ」という充実感を学生に与えられていいでしょう。経験が浅い内は活動を考えるのにかなり骨が折れるので、こちらを参考にするといいでしょう。

進行方法

いい授業、万人がうなずく授業はありません。
楽しい授業を多くの先生が心がけていると思いますが、全ての学生が楽しい授業を望んでいるわけではありません。静かにもくもくとプリントをしていたい学生もいるでしょう、リピートなんて無駄だと思う子も、ペアワークが騒がしいだけだと思う子もいます。そこらへんはクラスの雰囲気を見て使い分けるといいです。
私はもくもくとやるのは性に合わないし、勉強が嫌いなので、バランスよくどちらの学生の要望にも応えられるように、「わいわいpart」「もくもくpart」と分けて授業をしています。こんな感じ↓

①導入
②機械練習
③応用練習
④プリント
⑤活動(ゲーム)

(③と④はかわることも)
授業時間の比率は①2 : ②2 : ③2 : ④1 : ⑤3

もくもくpartは要らない!と主張する方、「とにかく会話じゃーい!」とおっしゃる先生もいますが、私は反対です。①→②→③とやって続けざまに活動とやると頭パンクします。一度プリントをはさみ、習った事を『頭に落とす』作業が必要になってきます。
①インパクトのある絵やレアリアを使って、その文型に一番ふさわしい使用例を提示

 導入は授業で一番大切なところです

ここを適当に、サクっと、やってはいけません。導入は一番印象に残ります。だから、導入の『入り』にクラスがざわついている状況はよくないです。練習Bはまだいいです、Cはむしろ騒いでほしいぐらいですが、導入入りは神聖な時間です(が、導入後半は一緒になって騒ぎます)。

例えば、文型「たことがあります」。珍しい事、経験を述べるものの導入で、「ネッシーを見たことがあります」という文はあまりよくないです。まず導入で『これまで授業で使わなかった言葉』は使わない方が無難です。しょっぱなつまずきます。ネッシーという語を授業中に教えていて、かつ『一人の漏れもなく周知している』のなら、いい導入です。ただ、ネッシーが世界的に知名度が高く、呼び方も国でほとんど違いがないとは思えませんが・・・(未習語についてはこちらの投稿にまとめてあります)

次に「寿司を食べたことがあります」
これもいまいち。弱い。だから何?
「馬に乗ったことがあります」
これもあまりよくないです。練習B向け。弱い。確かに乗ったことのある人は少ないでしょうが、乗馬の経験について話す事ってあまりないし、そもそも乗馬の話っておもしろいですか。導入で学生に「うーーまーーに!乗ったーーことーーが!ありっます!!」なんてリピートさせたくないです。
「犬を食べたことがあります」
「マイケルジャクソンに会ったことがあります」
クラスが全て犬を食べる国の学生だと使えませんが、食べない学生または食べる・食べない学生の混交クラスなら使えます。マイケルジャクソンは教科書では出てこない語ですが、私のクラスの学生にマイコーを知らない子はいませんでした(マイコーの写真必須)。私の場合15課の「~を知っていますか」でも入れているのでOKなのです。
犬食べんのお前の国!?
マイコーに会ったの?マジ?先生すげー
となれば成功ですが、この後騒がしくなるので、すぐにリピートさせて、黙らせます。

導入→盛り上がる→リピートで黙らせる→もうちょっと導入→リピート→②

この後のつまらない機械練習の事を考えると可哀そうなので(学生も先生も)、導入で思いっきり遊ばせてあげましょう!

②その日使う文型をFCで口慣らし(平叙文のみ)
14課のテクダサイの口慣らしで、「あります」などの動詞のFCを混ぜないように注意
動詞などのPCを見せて、その動詞が何なのかを推測→文型を言わせる。
例:「書きます」PC見せる→S:書いてください 「行きます」→S:行ってください
>>FCの使い方

③状況PCを見せて、文型だけでなく、助詞や目的語なども含めた完全な文を作らせる。
キューの出しかたに注意。これが曖昧だったり、わかりにくかったりするともうグダグダで、テンポも悪いしで、学生からため息が出ます。

④プリントやり方説明→書かせる→回収→添削→翌日返却
簡単に、確認程度です。初級は発話してナンボです。

⑤文型を使ったゲーム・活動
これは上述の比率で3としましたが、本当に文型によりますし、ものによっては活動できないものもあります。別にやんなくてもいいですが、学生も、せっかく①~④までやったんですから、それを使って何かできることを実感したい、何ができるようになったのか知りたいと思うので、できるだけやった方がいいと思います。

コラム

授業ではよく学生に「週末何したの?」「どこ住んでるの?」「どんな映画が好き?」と聞くことがありますが、まずは教師自身の事を話さないと学生もあまり教えてくれません。授業初日、私は名前を教えた後、
「何か質問ある?」
と聞きます。これは日本へ来て0か月の学習者にも同じ文句で言います。それはもう皆一斉に質問を投げかけてくるのですが、これは
①そのクラスのレベル
②そのクラスの雰囲気、仲の良さ
③今後導入で使える明るい学生
がわかると同時に
④日本語を話させる
⑤互いの事を知る
という重要な役割を担っているので大変おすすめです。

練習方法

機械練習や口頭練習、QA、結合、FC、後件作成などなど、実にたくさんある練習方法ですが、この練習を①どう調理するかによく頭を抱えます。それ以上に悩むのが、②決めてからの教材作りです。

①どうやるか

前件だけ板書をして、後件は空けて学生に考えさせるやり方は私がよくやるやり方ですが、これをする場合、板書に非常に時間がかかるため、休み時間にこれをしておくことを強くお勧めします。休み時間ならゆっ~~~くりメモした例文を見ながら板書できますし。
もしタイミングが合わず、まだ後件作成ができない段階で休み時間に入ってしまった場合は口頭で。そこらへんは臨機応変に。

他には状況PCなどを見せて、会話を作らせたり(これは練習C寄りですが)、TSでQAをしたりがありますが、TSのQAはあまりいい練習方法とは言えません。なぜなら、Tが質問ばかりしてしまって、Sが質問する機会がなくなってしまうからです。TSQAは楽な反面、こういう危険があります。できるだけSSでQAは行いましょう。導入以外なら全てそれでやることができるはずです。

状況、使用場面がわかりにくいものはPC。接続が難しいものは文字で!

が基本です。

②教材作り

この『教材』というのは、レアリアはもちろん、PCなどを切り貼りして編集したり、絵が書ける人ならそれを書く、といった作業のことです。練習方法が上述の後件作成ならば、前件も『例文』と言う名の『教材』と言えるでしょう。後述しますが、練習B一つ作るのに、軽く3時間、長い時で4時間はかかります。これは日を改めて再考する時間も含めています。
以上のように、練習方法は他にもさまざまありますが、大切なことは一つだけです。それは、

練習Bの『意味』を考えることです
板書して練習するか、口頭で練習するか。板書でする場合は前件作成か、後件作成か。文字カード(LC)を使うか、絵カード(PC)を使うか。後件は働きかけの文か、単に文型を使った接続練習か。後件に使われている既習文型は何なのか。どういった状況で使われるかといった使用場面を適切に示せるか。示すならそれはPCでやるのか、ジェスチャー(G)でやるのか。練習内に使われている品詞は?

特に、練習B1とB2は似ている事が多いですが、よく見るとB1は主語が前にあるけど、B2は主語が後ろにある、など微妙に違うものから、文型そのものが違う、まったくの『別物』まであります。
その練習Bを一つ一つよく観察して、教授項目を整理し、順序立てて授業をしていれば、教案を見ながら授業しなくて済みます。その分、分析→作成の流れに費やす時間は膨大で、数時間は当たり前です。
練習Bは最低でも6つ、多くて20は例文やキューを作ります。導入文も最低5つ以上です。残りは自分で、各学生(年齢や国)に合った、よりよいものを、先生の個性溢れる文で授業を展開してください。

カリキュラムの進むペースが早い学校だと最初の内は精根尽きます。しかし、何時間も費やして分析すれば、練習方法を考えれば、授業中にそれを忘れるなんて事は『不可能』なはずです。教案を見るということは、忘れるぐらいの分析しかしていないということです。

接続

日本語は接続が大変厄介です。例えば「きれいじゃありません」はNaです。そして「食べません」はVです。そして「おいしくないです」はAで正しい日本語ですが、「食べないです」はVで正しくないです(下記で詳しく述べる)。なぜこんなに紛らわしいのか・・・
そしてさらに丁寧形と普通形というふざけた使い分け。単純に考えてフォームが2倍になるわけです。「①L21と思います」「②L32かもしれません」は普通形と接続します。授業中に「これはふつう形と接続するからねー」と言っていいのでしょうか。
半分正解で、半分不正解です。「元気です」の普通形は「元気だ」「元気」の2つあるからです。
①は「×元気と思う」、②は「×元気だかもしれません」とそれぞれ普通形の接続のし方が違うのです。本当イヤらしいですね。
だから授業では「これは普通形と接続するからねー。でも!NaとNは・・・」とちゃんと付け加えなければなりません。

さらに最近日本人でも多いのは「食べないです」「ないです」などに見られる「ふつう形+です」。これが許されるのはタ〇ちゃんだけです。これは誤用なんですが、違和感ない人もきっと多いと思います。正しくは「食べません」「ありません」で、デスは形容詞と名詞にのみ付くものです。
「行かないです」とは言いますが、「行くです」とは言いません。活用してみてみましょう。
×行    くです
〇おいし  いです
?行か   ないです
〇おいしく ないです
〇行か   なかった
〇おいしく なかった
動詞の否定形は形容詞(い形)と活用が同じだからこのような現象が起きます。学生も言っているので、陥りやすいのでしょう。
別に日常で使う分には全く構わないのですが、「ふつう形+です」を是として書いてる教科書は認めません。たくさん使われているから教えよう!とは決してなりません。

例文作成

初級に限った話ではありませんが、文型を教える際、最も重要な例文。間接法で説明できれば確かに楽ですが、国内の日本語学校では直説法が主流(学生が各国から集まっているため)。難しい日本語を使う訳にはいかないので、例文と簡単な語で解説することになります。
そこで、私がよくやる例文作成法をいくつかご紹介します。よかったら参考までに。

①色々な状況で考える
満員電車が一番多いですが、山登りや旅行中、美術館やショッピングでぽんっと思いつくことがあります。机上で考えているとどうしても偏りがちな例文は外で考えると様々な趣向のものが生まれます。人を待っている時などでもいいですが、次教える文型をケータイのメモに入れておくといい時間潰しになります。

②Googleで検索
twitterを持っていない人向け。例えば「はおろかN1」という文型で例文を探したい時、それで検索をかけると、その文型を使った文がずらーっと出てきます。

教材分析

それから、教える前にやる事として大切なのは、教材分析です。日本語に限らず言葉には一つの事実を言うのに様々な言い方があります。
少し蛇足になりますが、「死ぬ」という表現一つとっても
死ぬ、死す、逝く、没する、亡くなる、召される、帰らぬ人となる、死亡、死去、死没、逝去、絶命、絶息、往生、永眠、他界、物故、昇天、辞世、崩御 くたばる 朽ちる 息を引き取る
これだけあります。
学習者にとっては迷惑極まりないことですが、仕方がありません。私は色々な言い方があっていいとは思うのですが、それを全て学生に教えていいわけではないので、注意しなければなりません。

みん日1版なのですが、9課~11課にかけての存在文。11課を例にとります。
この会社 に 外国人 が ひとり います。
この文を
この会社 は 外国人 が ひとり います。
『XはYにいます』の形は10課のA-4とA-5でやっていますが、10課では『X=人・動物・物』のみで、『X=場所』の形は扱っていません。さらに、
①ビルの前 に  車  が 三台  あります。
という文は確かにいいのですが、この①の文を教科書で扱っているのは【教科書問題聴解1-2】だけで、【標準問題集では5-3】だけです。つまり、教科書ではほとんど扱っていないということです。
教科書では人ばかりなのに、先生が作った練習問題などでは『物が助数詞あります』が出てくる、すると学生は当然混乱します。教問、標問にあるのですから、練習は必ずしなければなりませんが、練習BやC、文型、例文、会話にすらないのですから扱いは軽くしなければなりません。

それから、もう一つ気をつけなければならないのが接続です。
L35の話題の「なら」。同じくL35の教授項目である条件形はV・A・Na・N全ての活用を教えますが、次のナラはVとの接続は扱いません。勝手に「スキーに行くなら、長野がいいですよ」などと言ってはいけません。

このように、一つの文型を教えるにあたって、調べるところは実に多いですが、学生の混乱を避けるため、先生同士の連携の乱れを崩さないためにもしっかりしておいたほうがいいでしょう。

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