【33課】教案:命令形、禁止形

みんなの日本語 初級II 第二版』完全準拠。
導入や練習の仕方、教師として知っておきたい文型のポイントなどを解説します。

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当サイト管理人による、日本語教師養成個人レッスンの詳細はこちら

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学習項目

練習A
1.命令形、禁止形
2.命令文
3.「~」と書いてあります/読みます
4.~という意味です
5.~と言っていました
6.~と伝えていただけませんか

教案

新出語彙

名詞には、日常でよく見かける漢字がたくさんあります。漢字を知らないと指示に従えないこともあるため(危険、禁止、入口・出口など)、そういったものに関しては漢字を見て意味を理解できるように指導しましょう。

★ポイント

  • (電話が)あります:出来事が起こった、と言う意味
  • もう:
    7課:[already] 例)もうVましたか
    14課:[one more] 例)もう一ついかがですか/もう一人来ます
    33課:[any more]※後ろに否定がくる 例)もう走れない/もう時間がない
  • 中:
    ~中(ちゅう)(33課):動作性のX=している最中 時間名詞=その時間内全て
     電話中・仕事中・7月中
    ~中(じゅう)(37課):Xの示す範囲全て
     日本中・町中・会社中・学校中・今日中
    ※ジュウは場所が多いが、「今日じゅう」というのもあることに注意

練習A-1:命令形、禁止形、練習A-2:命令文

命令・禁止はスポーツの応援以外で実際に使うことは少ないですが、言われて理解できないと困るので、その点を伝え、確実に理解できるようになるよう伝えましょう。なお、もう少し優しい命令に「~なさい」がありますが、みん日では扱いません。

導入:命令形(応援)

◆まずは応援で導入
T:(サッカーの応援をしている場面などをビデオで見せる)今何と言いましたか。
S:走れー、がんばれー、とめろー、・・・
T:そうですね。サッカーをしている人に、「頑張ってください」と言いたいです。「いま、ゴールまで走ってください!ボールを止めてください!パスしてください!」と言いたいです。でもこれは長いですね。このとき、「頑張れ!走れ!行け!止めろ!パスしろ!」と言います。これを命令形と言います。

がんばります→がんばれ
はしります→はしれ
とめます→とめろ
パスします→パスしろ
◆Ⅲ→Ⅱ→Ⅰグループの順番で導入する
T:じゃあまずはⅢグループ。「します」は「しろ」、「来ます」は「来い」。これは覚えてください。
 
T:Ⅱグループはいつも簡単。「とめます」は「とめろ」、「見ます」は「見ろ」。「やめます」は?
S:やめろ
T:そうですね。「ます」をとって、「ろ」をつけます。
 
T:Ⅰグループは、「はしります」は「はしれ」、「いきます」は「いけ」、「がんばります」は「がんばれ」。ルールはなんですか。
S:「いーーー」が「えーーー」ですか。
T:そうです。「いーーー」の音は「えーーー」の音、「ます」はありません。
します→しろ
きます→こい

とめます→とめ
みます→み

はしります→はし
いきます→い

練習

T:皆さん、これは?(「言います」を指して)
S:言え
T:じゃこれは?(「休みます」を指して)
S:休め
T:じゃS1さん、これは?(「おります」を指して)
S1:おりろ
T:じゃS2さん、これは?(「コピーします」を指して)
S2:コピーしろ

変換練習はFC(フラッシュカード)が便利です。以下のリンクを押すと、無料でダウンロードできます。形式はpdfです。

FCはこちら➔33 FC 1g2g動詞 命令形・禁止形

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◆文字で確認
文型練習帳』49ページを使うなどして、文字で確認する。
※禁止形も同じところにあるため、命令形のところのみやらせるか、禁止形を勉強した後まとめてやってもよい

練習B-1

◆キュー出しで行う
T:(サッカーの試合の絵を見せて)応援しましょう(応援は未習、ジェスチャーで伝える)。頑張ります、は?
S:がんばれ!(リピート練習)
(同様に1~4も行う)

導入:命令形(指示)

命令形を教える際に私は次のように話します。

T:命令形って言葉には『命』が入ってるけど、それは命を守るって意味です。銀行強盗に入った悪い人が「手を上げます!お願いします!」なんて言いません、「手を上げろ!」と言います。わからず手を下げたままだと『命』がなくなります。わからないと一番困る(死ぬ)可能性のある文型です。他にも、工場では「避けろ!」がわからないと大怪我をします。家やバイト先に入って来た強盗が「金を出せ!」と言い、わからず首をかしげ続けていれば死にます。火災が起きた際に「逃げろ!」がわからないと死にます。だから、しっかり勉強しましょう。

◆続けて、命令形を使った指示文を導入
T:(コンビニ強盗などのビデオを見せる)今何と言いましたか。
S:動くな、金を出せ、おとなしくしろ、さわぐな・・・
T:そうです。「金を出せ」「おとなしくしろ」、おとなしく、は静かに、です。「しずかにしろ」。これも命令形です。この男の人(強盗、未習)は、「金を出してください」「静かにしてください」・・・言いませんね。丁寧にお願いしません。金を出せ!静かにしろ!!(大きな声で)このように言います。

かねをだします→かねをだせ
しずかにします→しずかにしろ
T:これは、みなさんは使わないと思いますが、聞いて、わからなければなりません。みなさんがアルバイトをしているとき、この人(強盗)が来たらどうしますか。「手を挙げろ、金を出せ」、でもみなさんが「え、何を言っていますか?」わからなかったら、この人はどうしますか。
S:ナイフで私を切るかもしれません。
T:そうです。ですから、命令形を聞いたとき、「あ、これは「手を挙げてください」ですね」とわからなければなりません。
T:ほかにも、火事の時(未習、写真をみせる)、「にげろ!」、わからなかったらどうなりますか。
S:やけどします。
T:やけどならいいですが、逃げられなかったら、死にます(未習)よ。ですから、命令形、しっかり覚えましょう。

導入:禁止形

T:さっきのコンビニのビデオ、ほかにも言っていました。「動くな」「騒ぐな」・・・「騒ぐな」は「大きい声を出すな」です。これも同じで、丁寧なお願いは「動かないでください」「大きい声を出さないでください」です。でも、この人(強盗)は、そう言いません。「動くな!大きい声を出すな!」この「~な」は、禁止形と言います。

うごきません→うごく
おおきいこえをだしません→だす
でません→でる
しません→する
きません→くる

T:「~な」は簡単です。「~な」の前、何形ですか。
S:辞書形です。
T:そうです。「辞書形+な」で、禁止形が作れます。

教室の状況を見て、様々な禁止形を以下のように導入する教師がいます。

T:(話している学生に)隣の人と話すな!

隣の人と話すことは、関係性にもよりますが、禁止形を使うほどの悪事でしょうか。それに、導入、つまり授業の始めにいきなり命令や禁止を言われた学生のショックも考えなければなりません。導入をする際は、状況の絵カードなどを示し、その中で行われている出来事として扱うか、または次のように仕方なく言わざるを得ない状況なので言う、ということを示しましょう。
例:S1さん、起きて起きて・・・起きろ!!
例:(テスト終了後)ペンを置いて置いて、置け!

練習

T:皆さん、これは?(「言います」を指して)
S:言うな
T:じゃこれは?(「休みます」を指して)
S:休むな
T:じゃS1さん、これは?(「おります」を指して)
S1:おりるな
T:じゃS2さん、これは?(「きます」を指して)
S2:くるな

変換練習はFC(フラッシュカード)が便利です。以下のリンクを押すと、無料でダウンロードできます。形式はpdfです。

FCはこちら➔33 FC 1g2g動詞 命令形・禁止形

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◆文字で確認
文型練習帳』49ページを使うなどして、文字で確認する。

「あります」「わかります」「できます(可能動詞)」等、状態的な動詞には命令・否定形はありません。(例外的に「あれ」「わかれ(よ)」は使うことがあります。例:「お試しあれ」「幸あれ」(いずれも命令の意は薄い)「いい加減分かれよ!」)
なお、「くれます」の命令形は「くれ」になります。

練習B-2

◆拡大した絵を用いて行う
T:(例の絵を見せる)これはなんですか。
S:ボールです。
T:ボールを?
S:ボールを投げるな。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)

導入:禁止形・命令形を使う場面

すべてを覚えさせる必要はなく、紹介程度で構いません。ただ、以下②の「命令形/禁止形+よ」はよく使われるので、学習者に「日本人は命令ばかりする」と思われないように、少し触れておいた方がいいでしょう。

①【主に男性】目上→目下、父親→子供
 例:早く寝ろ。/遅れるな。

②【主に男性】友達と話すとき(たいてい「よ」がつく)
 例:家へこいよ。/遅刻するなよ。(依頼・誘いの意味合いが強い)

③【主に男性】緊急時の指示
 例:逃げろ!/押すな!

④訓練中の指示
 例:走れ。/休むな。

⑤スポーツの応援
 例:がんばれ!/負けるな!

⑥標識
 例:止まれ/入るな

参考:『翻訳・文法解説』pp.54-55

練習A-3:「~」と書いてあります/読みます

導入:「~」と書いてあります

◆様々な看板を見せながら進める
T:これを見てください(禁煙と書かれた絵カードを見せる)これは何ですか。
S:きんえん
T:読めるんですか。すごいですね。そうです、これはきんえんと書いてあります。

「きんえん」と かいてあります

T:「書きます」じゃなくて「書いてあります」と言います。

「~てあります」は30課で勉強しました。

◆学生が読めそうな看板などを使って練習
T:これは何と書いてありますか。
S:「おす」と書いてあります。
・入口/出口
・押す/引く
・止まれ

練習B-3

◆拡大した絵を用いて行う
T:(例の絵を見せる)右の人はドアを引いていますね。でも?
S:「押す」と書いてあります。
T:そうですね。左の人が教えます。そこに「押す」と書いてあります。どうぞ。
S:そこに「押す」と書いてあります。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)

導入:「~」と読みます

◆読むのが難しそうなものを見せる
T:(「学生割引」と書いてあるチラシを見せる)これは何と書いてありますか。
S:がくせい・・・わかりません。その漢字は何ですか。
T:これは「わりびき」と読みます。

「わりびき」と よみます。

T:じゃ、これは何と読みますか。わかる人いますか。
S1:「きけん」と読みます。
T:じゃ、これは何と読みますか。
S2:「ちゅうい」と読みます。
・・・

練習B-4

◆拡大した絵を用いて行う
T:(例の絵を見せる)これは何と読みますか。
S:・・・わかりません。
T:(「たちいりきんし」を見せる)
S:「たちいりきんし」と読みます。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)

読める人がいれば、その人に答えを言ってもらいましょう。

練習A-4:~という意味です

導入

◆意味が分からなそうな標識を使って導入
T:これは?(「通学路 文」の画像を見せる)
S:何ですか。
T:「文」?
S:何の意味ですか。
T:何の意味ですか、違います。どういう意味ですか。
S:どういう意味ですか。

どういう いみですか。

T:これは学校です。「文」があります、学校があります。答えは?
S:学校がありますの意味です。
T:学校があるという意味です。

どういう いみですか。
…がっこうがある といういみです
T:「~と思います」と同じ、「~と」の前は?
S:普通形です。
T:そうです。命令形、禁止形は普通形ですから、「~と」の前に使ってもいいです。
 
例えば禁煙や撮影禁止のマークは見れば意味がわかるので、「どういう意味ですか」と尋ねる状況がおかしいということになります。つまりこの文型を使う必要がないのです。学習者の属性にもよりますが、道路標識は知らない学習者も多いので使えます。他にも、せっかく「どういう意味ですか」という文型を使うのですから、未習語かつ学習者が興味を持ちそうな「オタク」「イケメン」「時給」などの単語を教えるのもおすすめです。

◆練習。「不在連絡票」や「駐車違反」「光熱費請求書」
T:これはどういう意味ですか(駐車違反の紙を見せる)
S:それは自転車を止めてはいけない/お金を払えという意味です

◆様々なボディランゲージを使い、その意味を紹介。日本のものだけでなく、学習者のボディランゲージも紹介させるとおもしろい。
T:(指で輪っかをつくり、OKを示す)これはどういう意味ですか
S:いいです
T:そうです。いい・・・と?
S:これはいいという意味です

以下、ボディランゲージの例
・お金
・OK
・ウィンク
・手招き⇔あっち行け
・じゃあね
・腕時計をたたく(急いで)
・お辞儀(感謝・謝罪)

練習B-5

◆拡大した絵を用いて行う
T:(黒板にすべての絵を貼る。例の絵を指して)あれはどういう意味ですか。
S:右へ曲がるなという意味です。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)

標識の意味
例:右折禁止
1:進入禁止
2:(その他の)危険
3:駐車禁止

海外で教える場合など、日本の標識になじみがない場合は、はじめに標識の意味を提示するか、自国の標識を使いましょう。

練習B-6

◆例を確認してから、ペアで練習する

ペアワークのやり方は様々です。まだ文がうまく作れそうにないと感じたら、全体で正しい文を確認してからペアでもう一度練習させてもいいでしょう。また、終わってから教師のキューに続いて全体でリピート練習すると、最後に正しい文を自分の口で練習して終わることができます。

練習A-5:~と言っていました

21課の「~と言いました」との違いは、「~と言っていました」は「誰かから聞いたことを伝言するときに使う」という点です。したがって、自分の発言を「~と言っていました」で言うことはできません
なお、21課で学んだ通り、他人の発言であっても、「Aさんは私に会社を辞めると言いました」「キング牧師は、夢があると言いました」のような伝言性のないもには、「~と言いました」を使いません。

導入

◆「伝言である」ということがわかりやすい場面で導入
T:(田中さんと私が話している絵を見せる)これは田中さん、これは私です。田中さんは言います。「2時に戻ります」。私は「わかりました」と言いました。(別の、高橋さんと私が話している絵を見せる)それから、私は高橋さんに会いました。私は高橋さんに伝えます。「田中さんは、2時に戻ると言っていました」。

たなか:2じにもどります。
わたし:わかりました:

わたし:たなかさんは、2じにもどる といっていました
たかはし:そうですか。
T:誰かの話を、別の人に伝えるとき、「~と言っていました」を使います。「~と」の前は?
S:普通形です。
S:先生、「~と言いました」と何が違いますか。

T:違うところは2つあります。まず、「~と言っていました」は「私は」で使うことができません。

〇 わたしはテストがあるといいました。
✕ わたしはテストがあるといっていました。
T:そして、伝えるときは「~と言っていました」をつかいます。
A:たなかさんはどこですか。
B:いま、いません。2じにもどると
 ✕ いいました。
 ○ いっていました。
◆練習
T:○○先生は、次のテストはいつだと言っていましたか。
S:明後日だと言っていました。
・・・

練習B-7

◆例を確認してから、ペアで練習する

普通形が怪しい場合は、根気強く練習を続けましょう。

練習A-6:~と伝えていただけませんか

「~ていただけませんか」は26課で既出です。ここでは「伝えて」の形でのみ練習します。なお、「~ていただけませんか」は今後も34課・39課・43課・44課・48課などで何度も提出することになる、大切な依頼の表現です。何かをお願いするとき、相手にいやな思いをさせないためにも、しっかりと習得させましょう。

教室内のもので導入するのは難しいので、ビジネス場面や先生相手など、場面と人物を提示して会話例を見せて導入しましょう。

◆男の人と女の人が話している絵を見せる。できればPPTで文字も見せるとよい
T:男の人と女の人が話しています。
男:これからパワーでんきへ行きます。…あれ、部長はどこですか。
女:今会議中です。
男:そうですか。じゃ、部長に2時に戻ると伝えていただけませんか。
女:わかりました。
T:ここ、「2時に戻ると伝えていただけませんか。」どういう意味ですか。
S:2時に戻ります、と伝えてください。
T:そうですね。「~ていただけませんか」は「~ください」の丁寧バージョンです。相手が偉い人、先生、あとは、仕事をしているときにもよく使います。

2じにもどる とつたえていただけませんか

 

◆練習
T:S1さん、アルバイトを休むとき、どうしますか。
S1:店長に電話します。
T:じゃ、今ちょっとやってみてください。(電話かけるふり)もしもし。
S1:あ、S1です。
T:S1さんこんにちは。○○です。店長は今いません。
S1:そうですか…じゃ、今日は体調が悪いのでアルバイトを休むと伝えていただけませんか。
T:わかりました。

練習B-8

◆キュー出しで行う
T:田中さん、「もうすぐ会議が始まります」。田中さんに、もうすぐ・・・
S:田中さんに、もうすぐ会議が始まると伝えていただけませんか。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)

キューの「 」内は長いので、文字で出した方がいいでしょう。

 

会話「これはどういう意味ですか」

33課の「会話」は、しっかりオチもついていて面白い内容です。
こちらで、この会話ビデオを使った活動について詳しく書いていますので、よかったら参考にして、授業でやってみてください。

会話の映像(ビデオ)を使った授業の進め方
みんなの日本語の会話、映像を使った授業のやり方がわからないとご質問を多く受けるので、これについて書いてみようと思います。 33課 映像概要 みんなの日本語2版 33課 会話「これはどういう意味ですか」 を例にとり説明します。33課は「命令・...

なお、会話はDVDで見せたほうが効果的です。

 

【32課】教案:~ほうがいいです、~でしょう。、~かもしれません
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【34課】教案:Vた/Nのとおりに、Vた/Nのあとで、Vて/Vないで~
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