日本語教育能力検定試験っぽく問題を作ってみました。解説は実際の教育現場で見られる誤用なども交えながら行っています。
問題
問題 次の問題の【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを、それぞれ1~4の中から一つずつ選べ。
(1) 【アスペクトによる動詞の分類】
1 ある 2 要る 3 居る 4 死ぬ
(2) 【授受動詞】
1 くれる 2 あげる 3 もらう 4 やる
(3) 【使役の用法】
1 強盗は銀行員に金を用意させた
2 先生は課題を忘れた学生を立たせた
3 母親は子どもを買い物に行かせた
4 時間になったので、先生は学生を休ませた
(4) 【「~て」の用法】
1 母と手をつないで歩いた
2 たこ焼きは必ずソースをかけて食べる
3 毎晩行きつけの居酒屋で飲んで帰る
4 帽子をかぶって挨拶すると、叱られる
(5) 【軽視を表す表現】
1 貴様など私が相手をするまでもない
2 これくらいの大きさのかばんがあったはずなんですが。
3 あなたなんかどうせ勝てないに決まっているわ
4 子どもごときにこの私が負けるはずがないだろう
(6) 【撥音の調音点】
1 みんな 2 はんたい 3 あんど 4 はんじ
答えと解説
(1) 【アスペクトによる動詞の分類】
1 ある 2 要る 3 居る 4 死ぬ
答えは4です。アスペクトとは、動詞に「~ている」をつけたときの意味の違いに着目した文法カテゴリーです。1,2,3は「~ている」が付かないものです。ちなみに「死ぬ」は動作動詞/継続動詞/非結果動詞などと呼ばれるもので、1,2,3は状態動詞と呼ばれますが、これら呼び名には学者により異なります。
(2) 【授受動詞】
1 くれる 2 あげる 3 もらう 4 やる
答えは1です。「~たい」をつけて考えます。「あげ/もらい/やりたい」となりますが、「くれたい」はできません。「くれる」は自身の行為ではなく、他者の行為なので、自らの欲求を表す「~たい」とは接続ができないというわけです。
(3) 【使役の用法】
1 強盗は銀行員に金を用意させた
2 先生は課題を忘れた学生を立たせた
3 母親は子どもを買い物に行かせた
4 時間になったので、先生は学生を休ませた
答えは4です。4は許可の用法で、他は強制の用法です。
(4) 【「~て」の用法】
1 母と手をつないで歩いた
2 たこ焼きは必ずソースをかけて食べる
3 毎晩行きつけの居酒屋で飲んで帰る
4 帽子をかぶって挨拶すると、叱られる
答えは3です。3は継起や順接と呼ばれる用法で、前件の後に後件が起こったという時に用いられる「~て」の使い方です。他は付帯状況を表す表現です。
(5) 【軽視を表す表現】
1 貴様など私が相手をするまでもない
2 これくらいの大きさのかばんがあったはずなんですが。
3 あなたなんかどうせ勝てないに決まっているわ
4 子どもごときにこの私が負けるはずがないだろう
答えは2です。軽視を表す表現は多いです。2の「くらい」は軽視の用法ではありませんが、「1万円くらい貸してくれよ」という文であれば軽視の用法と呼べます。
(6) 【撥音の調音点】
1 みんな 2 はんたい 3 あんど 4 はんじ
答えは4です。
調音点が歯茎のものは1,2,3で、以下のようになります。
「みんな」の「ん」の後の子音は[n]です。[mjinna]
「はんたい」の「ん」の後の子音は[t]。[hantai]
「あんど」の「ん」の後の子音は[d]。[ando]
調音点が後部歯茎のものは4です。
「はんじ」の「ん」の後の子音は[dӡ]。[handӡi]
撥音の発音記号は[m][n][ɲ][ŋ][ɴ]と様々な異音がありますが、「ん」の後ろの拍の子音が歯茎音[n][t][d][ts][z][г]、または後部歯茎音[dӡ][tʃ]の場合、「ん」は[n]となります。
他の問題は検定問題にまとめてあります。
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