よく同僚とこの話題について話すのですが、結論はだいたいいつも同じです。皆さんは単一国籍クラスと多国籍クラス、どちらがいいと思いますか。
単一国籍クラス
とは、クラスで学ぶ留学生の出身国が一つのみのクラスのことです。それではそれぞれのメリットとデメリットを考えてみましょう。
メリット
説明が楽
文法の説明にしろ、単語にしろ、間接法で教えてしまえばいいのです。学生が皆同じ国の人なのですから。
国内で中国人のみ、韓国人のみという日本語学校をたくさん知っていますが、それら多くの学校ではなぜか直接法で教えています。効率が悪く、時間の無駄です。なぜ単一国籍なのに直接法にこだわるのか。中国語や韓国語ができる日本語教師が集まらないのでしょうか。
どうして私が効率が悪く、時間の無駄だと思うのかは下の記事に書いているのでここでは割愛させていただきます。
関連
連絡が楽
日本語学校には多くの国籍の留学生がいます。それゆえ、校内放送では、例えば3分の放送を各言語によって伝えるのですが、3分×国籍数でなかなか放送が終わりません(授業時間が少なくなる)。単一国籍ならば、この校内放送が1回で済みます。
テキストが買いやすい
学生の国籍によってテキストの訳を合わせずに済み、発注しやすいという利点もあります。
デメリット
クラス活動の幅が狭まる
「あなたの国はどうですか」、この質問は特に授業中でよく聞かれる質問じゃないでしょうか。TS(教師から学生)、ST(学生から教師)、SS(学生から学生)、様々な方向で行われると思いますが、少なくとも上記3つの内SSによるインタビューはまずできなくなります。同じ国なのですから。
もちろん、日本を見てもわかる通り、一つの国の中でも習慣が異なることなどしばしばで、中国など右端と左端、上と下なんて別の国です。しかし、同国でのインタビュー、しかもクラス全員が同じ国籍ならば授業は紛糾しますし母国語がほぼ100%飛び交います。
多国籍クラス
とは、クラスで学ぶ留学生の出身国が二つ以上のクラスのことです。こちらもそれぞれのメリットとデメリットがあるのですが、単一国籍の逆になっているだけなので、特に書くことはありません。
メリット
クラス活動の幅が広がる
デメリット
説明が大変
連絡が大変
テキストが買いにくい
ネットの反応
下は私がツイッターで本記事の表題でアンケートをした結果です。
実施日時:
皆さんはどちらがいいですか。
単一国籍クラス(クラスの国籍が一つのみのクラス)で教えるのと、
多国籍クラス(クラスの国籍が二つ以上のクラス)で教えるの— 『日本語教師のN1et』のカキアゲ (@kakiagex) June 5, 2017
これだけ多国籍クラスを支持する人がいることがわかります。
経営的な視点と教育的な視点
単一国籍は管理が楽で、テキストの購入や事務員の単一国籍化も兼ねるので、経営者的にはやりやすくなるでしょう。しかし、教育的な観点から見るとどうでしょうか。
確かに単一には多くのメリットがありますが、学生や教師にとって、多国籍の方がメリットが大きいのです。
教師が単一でしか教えていないと、日本の多くの多国籍の学校で教える際に苦労します。単一国籍の学校から多国籍の学校へ移動すれば、教材は全廃棄です。それに、せっかく”日本語”教師になったのです。日本語 ×を 〇で 教えたいじゃないですか。
そして、最も配慮すべき相手が留学生の日本語能力です。
- 友達に消しゴムを貸してもらう時に日本語
- 友達と遊びに行く約束は日本語で
- 日本語で友達と遊ぶ
- クラスで友達を作るのも恋人を作るのも日本語必須
- 休み時間に友達と話す際の共通語は日本語
- 授業中の様々な場面では日本語が必要
単一国籍の学校でできる友達と恋人は同国の人です。その交友関係上では学校の中でも外でもずっと学生の母国語を話し続けるのです。
結論、結局どっちがいいのか
ちなみに私はどちらの学校でも働いたことがあるのですが、やはり多国籍クラスの方がいいと思います。
雑談するのもケンカするのも、誘うのも、提案するのも、全てにおいて何気なく日本語が用いられる環境を整えてこそ国内の日本語教育機関であり、楽だからとメリットに背を向け教育的なメリットがあまりない単一国籍に安寧としていてはいけません。
関連
コメント