『みんなの日本語 初級II 第二版』完全準拠。
導入や練習の仕方、教師として知っておきたい文型のポイントなどを解説します。
学習項目
練習A
1.<場所>にNがV[テ]あります
2.Nは<場所>にV[テ]あります
3.V[テ]おきます(準備)
4.V[テ]おきます(事後措置)
5.V[テ]おきます(放置)
教案
新出語彙
場所の語彙や、そこへ物を設置する語彙がたくさん出てきます。練習の中で繰り返し覚えさせましょう。
★ポイント
- 並べます:他動詞。「並びます」は42課だが、この二つはどっちがどっちだか混乱されやすい
- 隅(すみ):隅も角(23課)も英語ではcorner。cornerの外側が角、内側が隅である。
- まだ:ここではstillの意味(まだ~ています)。yetの「まだ」(~ていません)は7課で学習済み
練習A-1:<場所>にNがV[テ]あります
教える際のポイント
◆助詞は「が」
動作動詞の他動詞には「NをV」のように目的語に助詞「を」をつけますが、「動詞のて形+てある」の場合は「を」→「が」になります。
◆誰かの意図がある
「動詞のて形+てある」は誰かが意図的に行った行為の結果の状態を表します。動作性の意志動詞が使われます。L30では意味をわかりやすくするために「置く・掛ける・並べる・開ける・閉める・つける・消す・貼る・しまう」などの設置動詞(だけではないですが)を中心に練習します。
◆「に」は存在の「に」
「<場所>に」の「に」は存在の「に」です。したがって、設置動詞でない場合は使いません。
例:
〇部屋に机が置いてあります。
✕部屋に窓が開けてあります。(部屋にある窓、部屋の窓、ならOK)
導入
◆教室のものを使って、「学生のために意図を持っておいてある」という形で導入する
T:みなさん、教室に何がありますか。
S:テレビがあります。
T:そうですね。教室にテレビがあります。先生たちは、みなさんに、テレビやDVDを使って日本語の会話を見せたいです。ですから、教室にテレビを置きました。そしていま、テレビが教室に置いてあります。
T:ほかには?
S:パソコンがあります。
T:はい。パワーポイントを使っていい授業がしたいですから、パソコンを置きました。今、パソコンが置いてあります。S1さん、今日は暑いですか。
S1:はい、暑いです。
T:そうですね。今日は暑いです。教室の中も暑いですから、朝窓を開けました。今、窓が開けてありますね。どうですか。
S1:少し涼しいです。
まどが あけてあります。
T:これは「教室にテレビがあるといいですねえ、置きましょう」と思ってテレビを置きました。そして、今置いてあります。「暑いから窓を開けるといいですね」と思って、窓を開けました。そして今、開いています。
S:先生、「テレビを置きます」「窓を開けます」です。他動詞ですが、「が」を使うんですか。
T:そうなんです。
◆「本に」という、場所とはとらえにくいものも導入
T:S3さん、本を見せてください。…あ、名前が書いてありますね。
S3:はい、みんな同じ本ですから。
T:ここの助詞はなんですか。
S:に?
T:そうです。教室に、部屋に、本に。おなじ「に」を使います。
まどが あけてあります。
ほんに なまえが かいてあります。
花を飾りました
鏡を掛けました
木を植えました
いすを並べました
ドアを閉めました
電気を消しました
ポスターを貼りました
資料をしまいました
部屋を片付けました
◆「~ています」との違い
S:先生、「窓が開いています」と「窓が開けてあります」は何が違いますか。
T:「窓が開いています」は、だれが?どうして?わかりません。私は知りません。(適当に歩いて、ああ、窓が開いているね、とジェスチャーで見せる)でも、「窓を開けてあります」は、「暑いですから、開けましょう!」と思って開けました、今開けてあります。「暑いですから開けましょう」という、私やほかの人の気持ちがあります。ここが違うところです。あと、「窓が開いています」は自動詞、「窓が開けてあります」は他動詞ですね。
S:「てあります」はいつも他動詞ですか。
T:そうです。
~ が V[テ] います。 ←じどうし
◆練習問題
答えと解説はこちら↓
練習B-1
◆拡大した絵を用いて行う
T:(例の絵を見せる)これは何ですか(棚を指す)。
S:棚です。
T:これは?(人形を指す)
S:人形です。
T:棚の上に人形が…?
S:置いてあります。
T:そうですね。まあ、人形を見せたくて、置きます。これは「飾ります」がいいですね。
S:飾ってあります?
T:そうです。もう一度、棚の…?
S:棚の上に人形が飾ってあります。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)
位置詞、設置動詞など複雑ですので、一つずつ確認して文を作って練習していきましょう。
練習
◆口頭練習
T:教室の中を見て、「~てあります」で文を作ってください。
S1:電気が付けてあります。
S2:机が並べてあります。
S3:ポスターが貼ってあります。
◆作文
部屋の絵を見て、「~てあります」でたくさん作文する。
『文型練習帳』p.27を使うなどしてもよい。
練習A-2:Nは<場所>にV[テ]あります
導入
◆絵カードで導入
T:(Aがはさみを探している絵カードを見せる。絵カードには引き出しも書かれている)Aさん「あれ?はさみは?」Bさん「はさみ・・・」。S1さん、はさみはどこですか。
S1:はさみは引き出しです。
T:そうですね。動詞は何ですか。引き出しに…?
S1:入れます?
T:「~てあります」を使って。
S1:入れてあります。
T:はい。はさみは引き出しに入れてあります。
S:先生、今度は「は」ですか。
T:そうです。これは29課でも勉強した、「はさみ!はさみは!!ここ!」と、「はさみ」のことをメインに話すときに使う「は」ですよ。
S:先生、「はさみは引き出しにあります」と何が違いますか。
T:「入れてあります」は「入れましょう!」の気持ちがあって入れます。そして、今入れてあります。はさみは危ないですからね。「入れましょう!」の気持ちがあったときは、「入れてあります」を使います。
◆練習
T:じゃあS2さん、カレンダーはどこですか。
S:壁にかけてあります。
T:ああ、ありました。カレンダーは壁にかけてあります。えーと、時計はどこですか。
S:あそこです。
T:時計は?
S:時計はあそこにかけてあります。
練習B-2
◆拡大した絵を用いて行う
T:買い物のメモはどこですか。
S:冷蔵庫に貼ってあります。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)
活動:部屋の間取りを書こう
◆友達の部屋を言葉を聞いて間取りを書いて完成させる
活動手順
1.紙に四角を書き、壁にABCDを振る
2.一人がモノの場所を質問し、もう一人は答える。答えを聞いて、間取りを完成させていく。紙は見せない
3.最後に完成した間取りを見せて、あっているか確認する。
活動例
S1:時計はどこですか。
S2:時計はAの壁にかけてあります。
S1:エアコンはどこですか。
S2:Bの壁にあります。
S1:冷蔵庫はどこですか。
S2:冷蔵庫はありません。
練習A-3:V[テ]おきます(準備)
「~てある」と「~ておく」の違い
「てある」:(主に)物の状態を他動詞で述べている。行為にももちろん用いるが、行為にも使えるということはあまり出さなくてもいい。
物について述べる場合:長時間その物が、ある状態だと述べる。
「ておく」:(主に)行為について述べる文型。物の状態について用いる用法も教科書ではあるが、それは物の状態というよりも、行為について述べている(だから「てください」と働きかけの文になれる)。
物について述べる場合:頻繁に使われる物の状態を述べる(皿を洗っておく)。
「てある」「ておく」はよく似ていますが、例文で比べると差がよくわかります。以下の、Aの文は物の状態を述べているのに対し、Bの文は人の行為について述べています。
A:カレンダーが壁に貼ってあります。
B:(私は)パーティーの準備をしておきます。
主語は、Aはカレンダー(物)、Bは私(人)です。
導入:Vておきます
T:明日はテストですね。みなさん何をしますか。
S:勉強します。
T:テストの前に、勉強しておきます。他には?勉強だけ?トイレに行ってはいけませんよ。
S:トイレに行きます。
T:テストの前に?
S:テストの前に、トイレに行っておきます。
トイレにいっておきます。
「~まえに」は18課で勉強していますが、忘れているようなら今一度「V[辞書]まえに」と「Nのまえに」を確認しておきましょう。
S1:デートをします。
T:デートの前に何をしておきますか。
S1:お金をたくさん出しておきます。
T:友達が?
S2:友達が来る前に、掃除しておきます。
他例文
引っ越しの前に
国へ帰る前に
お酒を飲む前に
結婚する前に
会議の前に
◆練習
T:今週末、クリスマスパーティをしましょう。みなさん、何をしておきますか。S1さん、何をしておきますか。
S1:お酒を買っておきます。
T:S2さんは?
S2:料理を作っておきます。
・・・
練習B-3
◆キュー出しで練習
T:レポートを書きます・資料を集めます。「前に」と「~ておきます」を使ってください。
S:レポートを書く前に、資料を集めておきます。(リピート練習)
(同様に例2、1~4も行う)
導入:Vておいてください
「~ておきます」は様々な形があります。ここでは、よく使われる「~ておいてください」を中心に練習します。余裕があれば、ほかの形も練習しましょう。
・「~ておきましょうか」→「例文」の3
・「~ておくN」「~ておかないと」→「会話」
・「~ておいたらいいですか」→「練習C」の2
に出ています。
T:書きます、これのて形は?
S:書いて
T:てください
S:書いてください
T:じゃおきます、これのて形は?
S:おいて
T:てください
S:おいてください
↓
かいておいてください。
T:(フラッシュカードを見せながら)取ります
S:取っておいてください
T:直します
S:直しておいてください
◆Nまでに~ておいてください
T:来週のこのクラスのスケジュールはなんですか。
S:来週は31課を勉強します。
T:そうですね。来週までに、31課の言葉を全部覚えておいてくださいね。
S:大変です…。
「~Nまでに」は17課で勉強していますが、忘れているようなら今一度確認しておきましょう。「まえに」と「までに」の違いは、ページ下部の「教師用メモ」にまとめてあります。
◆練習
T:S1さんはアルバイトをしていますね。忙しいですか。
S:忙しいです。
T:何時が一番忙しいですか。
S1:7~9時です。
T:わかりました。私は新しいアルバイトの人です。5時から働きます。何時までに何をしておきますか、わかりませんからS1さん教えてください。
S1:7時までに皿を洗っておいてください。
練習B-4
◆キュー出しで行う
T:来週の講義・この本を全部読みます。「までに」と「ておいてください」を使ってください。
S:来週の講義までに、この本を全部読んでおいてください。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)
一文が長いので、まずは「~ておいてください」を作り練習→前件と後件に分けて練習→一文で練習、と段階を踏んでもよいでしょう。
練習A-4:V[テ]おきます(事後措置)
何かをやり終えて、その次に何をやるのか、他の人に措置の指示を与えるときに使う文型です。「~たら~ておきます」の形で導入するとわかりやすいです。
導入
T:ごはんを食べたら、皿はどうしますか。
S:洗いますよ。
T:どうしてですか?
S:また使いますから。
T:ごはんを食べたら、皿を洗います。次使いますから、皿を洗っておきます。
◆後件作成
T:ごはんをたべます、たら、ごはんをたべ?
S:ごはんを食べたら、皿を洗っておきます。
T:パーティーが終わります。
S:パーティーが終わったら、皿を洗って/ジュースを冷蔵庫に入れておきます。
T:授業が終わります。
S:授業が終わったら、窓を閉めて/ゴミを捨てて/電気を消して/エアコンを消しておきます。
練習B-5
◆例を確認してから、ペアで練習させる
ペアワークのやり方は様々です。まだ文がうまく作れそうにないと感じたら、全体で正しい文を確認してからペアでもう一度練習させてもいいでしょう。また、終わってから教師のキューに続いて全体でリピート練習すると、最後に正しい文を自分の口で練習して終わることができます。
練習A-5:V[テ]おきます(放置)
「~ておきます」は、ある状態をそのまま保持する時にも使える文型です。「~から~ておいてください」の形で導入するとわかりやすいです。
導入
T:もうすぐ休み時間ですね。じゃ、エアコンを消しますね。
S:消さないでください。
T:どうしてですか。
S:暑いです。
T:エアコン、そのまま、お願いします。エアコンをつけておきます、てください。
S:つけておいてください。
T:そうですね。暑いですね。じゃ、窓を開けましょうか。
S:エアコンをつけています。
T:エアコンをつけていますから?
S:窓を閉めておいてください。
練習B-6
◆例を確認してから、ペアで練習する
必要であれば、「まだ~ています」の意味を確認しましょう。
教師用メモ
「Vている」と「Vてある」の違い
~がVています(29課):
物自体の変化を表す自動詞を使う。物自体の変化の結果としての現在の様子を、見たままに言い表す。
~がVてあります(30課):
人の動作を示す他動詞を使う。人が何らかの意図で行った行為の結果としての、物の現在の状態を表す。
「~まえに」と「~までに」の違い
まえに(18課):【V[辞書]まえに】【Nのまえに】
それより後ではない。順番的に前であることを示す。
例)友達の結婚式の前に美容院へ行く。←美容院⇒結婚式の順番
までに(17課):【Nまでに】
それより遅くない。締め切りよりも早いことを示す。
※「検査の結果が出るまでに念のため入院の準備をしておく」のような【V[辞書]+までに】は非提出
例)友達の結婚式までに美容院へ行く。←結婚式が締め切り、直前でも5日前でもいい
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