本記事では、形容詞をイ形、形容動詞をナ形と表記することがある。
形容詞には種類が2つある。
嬉しい=感情形容詞 楽しい=属性形容詞
属性形容詞・感情形容詞とは
そもそも形容詞とは何なのか。形容詞は大きく2つに分けられる。
属性形容詞:客観的な性質・状態・特徴を表す
人称による制限はない
例:長い 黒い 高い
感情形容詞:主観的な人の感情・感覚を表す
三人称では「がる/そうだ」が必要。そのままの形で、二人称で使うならば疑問形になる
例:嬉しい まぶしい 欲しい
感情形容詞は基本的には1人称主語しか許さない(人称制限がある)。つまり、1人称以外が主語になる「あの人はうれしい」は許容度が低く、「そうだ」「みたいだ」などの話し手の判断を表す要素(モダリティー)を必要とする
- 〇私はうれしい
- ?あの人はうれしい
- 〇あの人はうれしそうだ
【✕嬉しい 〇楽しい】
「楽しい」はそのものの状態を述べるため、感じる主体に三人称は来ないが、伝聞の文型「そうだ・らしい」や「がる」をつければ問題ない。難しいのは「彼は楽しい人だ」の「彼」は三人称だが、彼が【楽しいと感じていること】を述べている訳ではなく、彼の【属性(彼自身)】について述べているのである。
- 買い物は楽しい
- パーティーは楽しい
- 昨日の遊園地は楽しかった
- サッカーは楽しい
- 日本語の勉強は楽しい
- 怖いから何か楽しいお話して
これらは全て属性を表す。
【〇嬉しい ✕楽しい】
その事物に対して話者が感じた気持ちが嬉しい、であるから、「楽しい」とは違い三人称での使用は伝聞以外を用いた場合を除き使用不可
「✕彼は嬉しい」「✕彼は嬉しい人だ」
- 明日はデートだ。嬉しいな
- 彼氏に結婚しようと言われた。とても嬉しかった
「パーティーは嬉しい」とはできないが、「パーティーに誘われて嬉しかった」ならば問題ない。
【〇嬉しい 〇楽しい】
- 日照りが続いていたが、やっと雨が降って嬉しい(雨の日に対して話者が嬉しいと感じた、と述べている)
- 雨が降って楽しい(楽しい事があると言っている)
- 20年ぶりに友達に会った。とても嬉しかった(会ったことに対しての話者の気持ち)
- 20年ぶりに友達に会った。とても楽しかった(友達と何かをして、その行為(お喋りなど)が楽しかった)
形容詞の様々な違い、用法
ここからは、形容詞や形容動詞、連体詞についての細々した違いなどを解説していく。
イ形・連体詞両方OK
イ形 :大きい木 小さい箱 おかしい人
連体詞:大きな木 小さな箱 おかしな人
※✕大きだ、小さだ、おかしだ (連体詞は述語にはならず、体言が続く時だけ連体詞になる)
イ形・ナ形両方OK
イ形:暖かい部屋
ナ形:暖かな部屋
やわらかい食物 やわらかな声
ナ形・イ形の違い
イ形の方が事実にもとづく客観的な説明で、ナ形が話し手の気持ちをこめた表現と言われる。たとえば、
- 今日は気温が上がり、あたたかい1日になりそうです。
- 今日は気温が上がり、あたたかな1日になりそうです。
を見比べると、「あたたかな」の方が、ちょっと嬉しそうなニュアンス。たった一文字の違いが、こういったところに微妙なニュアンスを生む。
「ない」の品詞
「ない」には2つの品詞がある。
a.ここには本がない
b.その本は読みたくない
c.彼は本を読まない
d.走らないと遅れる
形も、否定する働きも同じだが、品詞が違う。abは形容詞、cdは助動詞。
「ない」を「ぬ」にできるものは助動詞である。
がる=感情形容詞?
「がる」が付くと感情形容詞だが、「強がる」のように、属性でも「がる」が付くものがある。
属性感情形容詞
元々は感情形容詞だが、感情を引き起こすものの性質を形容する時は感情形容詞を三人称でも使える。そういう言葉を「属性感情形容詞」と呼ぶ。
例:この町は「寂しい」
例えば「寂しい」は、この道を見て寂しくなるのは話し手だが、話してはこの道が「寂しい」と形容しているため、このような場合は感情形容詞である「寂しい」を使うことができる。
「好き・嫌い」は三人称でもOK
「好き・嫌い」は二つとも一応感情形容詞だが、「彼は彼女が好きだそうだ」とも言えるが「彼は彼女が好きだ」でもOK。つまり、「好き・嫌い」などは三人称に使う場合でもモダリティーを置かず使える特別な言葉である。他にも「悪い」は属性、感情どちらでも使用可能だ。
「頭が悪い」=属性形容詞
「気分が悪い」=感情形容詞
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