【24課】教案:くれます、~てもらいます/くれます/あげます(授受②)

みんなの日本語 初級I 第二版』完全準拠。
導入や練習の仕方、教師として知っておきたい文型のポイントなどを解説します。

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学習項目

練習A
1.くれます
2.<人>がくれました
3.V[テ]もらいます
4.V[テ]くれます
5.V[テ]あげます

教案

新出語彙

Ⅲグループの言葉が多く出てきます。

★ポイント

  • 直します:壊れたものを直す(repair)、間違いを直す(correct)どちらの意味もある。「病気を治す」はみん日では扱わない。「治る」は35課
  • (人を)送ります:意外とイメージがつかみにくいらしい。どういう意味か聞かれたら、「子どもを学校まで送る」を例に、子供のために一緒に外出し、目的地に連れていき、自分だけ帰る、と例を示すとよい。「連れていく」との違いは、目的地で行動を共にするか否かである(例:子どもを病院へ連れていく)。「手紙を送る」は7課

練習A-1:くれます

「くれます」に入る前に、7課の「あげます・もらいます」を復習しましょう。なお、「くれます」のモノの移動の方向が話し手に向かっている、ということを強調するため、「あげます・もらいます」は自分以外の第三者同士のやりとりで復習したほうがいいです。

授受の方向は、以下の通り。
・あげる:【私は他人に】【他人は他人に】
・もらう:【私は他人に】【他人は他人に】
・くれる:【他人は私に】
なお、上下関係の授受は41課で勉強するのでここでは扱いません。また、ウチソトも扱いませんので、「友達は妹にお菓子をくれた」といった文は提出せず、「くれる」の方向は「私に」で統一します。

復習:あげます/もらいます

◆絵カードで「あげます・もらいます」復習
T:(男の人が女の人に花をあげている絵を見せる)これを見てください。男の人は太郎さんです。女の人は花子さんです。(PPTで見せて名前も提示しておくとよい)太郎さんは花子さんに、花を・・・?
S:あげます。
T:そうです。勉強しましたね。太郎さんは花子さんに花をあげました。じゃ、花子さんは?花子さんは太郎さんに・・・?
S:花をもらいました。
T:そうですね。あげます、もらいます、覚えていますか。

たろうさんははなこさんにはなを あげました 。
はなこさんはたろうさんにはなを もらいました。
※絵も一緒に提示し、モノの移動をわかりやすく矢印で示すとよい

導入:くれます

◆別の絵カードを使う
T:(別の、シャツをあげている絵で、武さんと私、と名前を表示する)この男の人は武さんで、この人は私です。私は武さんに?
S:シャツをもらいました。
T:はい。じゃ、武さんは私に?
S:シャツをあげました。
T:(首を振る)違います…武さんは私にシャツを、くれました。新しいですね。たろうさんは花子さんに花を、あげました。武さんは、「わたしに」(強調)、シャツを「くれました」(強調)。

たけしさんはわたしにシャツを くれました 。

24課内で先生や社長の人称名詞は用いないようにしましょう(「私は先生にお菓子をもらった」など)。上下関係が入った授受表現は41課で提出します。

T:誰かがわたしにプレゼント、のときだけ、ちょっとスペシャルです。
S:先生、私は武さんにプレゼント、は?
T:いい質問ですね。私は武さんにプレゼントを、あげました。これは同じです。

◆まとめとして、以下のような絵を見せてもよい。

練習B-1

◆B-1の絵を使って「くれました」の練習

導入段階では「~さんは私に~をくれました」の形を見せますが、実際の会話では「私に」は省略可です。その理由は「くれる」の向かう先が100%私(側)だからです。このことを伝え、練習B-1に入ります。

T:この人は私です。サントスさんは・・・?
S:サントスさんは私にコーヒーをくれました。
T:そうですね。でも、「くれます」はいつも「私に」ですね。ですから、「私に」を言わなくてもいいです。サントスさんはコーヒーをくれました。
S:サントスさんはコーヒーをくれました。(リピート練習)
T:じゃあマリアさんは?
S:マリアさんはぼうしをくれました。(リピート練習)
(同様に2~4も行う)

活動:あげました/もらいました/くれました

げんきⅡ 第2版』の66ページのCまたはDを使って活動を行います。
活動の流れ:
1.ペアでモノの流れを見て、「あげました・もらいました・くれました」を使って文を交互に2つ作る
2.Tが一人ずつ当てて確認。テンポよく行う。
例)T:S1さん、1番、両親は私に?
  S1:お金をくれました。
  T:S2さん、1番、私は両親に?
  S2:お金をもらいました。

Cは「もらう・くれる」のみ、Dはそれに「あげる」が加わっているので、難易度としてはDのほうが高めです。絵の中には未習のもの(手袋、マフラーなど)がありますので、適宜語彙を添えるなり、絵を描き替えるなりしましょう。また、Cを使う場合、英語で書かれているもの(parentsなど)は必要があれば日本語に書き換えておきましょう。

使用教材:

贈り物として縁起が悪い時計
中国では掛け/置き時計は贈り物として縁起が悪いそうです。中国人onlyのクラスなら止めた方がいいかもしれませんが、あえて提出し、日本では気にしないことを教える事もできます。ちなみに、腕時計なら問題ないとのこと。
◆練習問題
 
答えと解説はこちら
https://jn1et.com/quizzes-of-basic-japanese6/#toc1
 

練習A-2:<人>がくれました

これは17課で勉強した「取り立ての「は」」の主題「~は」が省略されたものです。つまり、A「ブラジルのコーヒーですね。」B「ええ。サントスさんがくれました。」のBの発言は、「このコーヒーは」という主題が省略されています。この場合、主語は強調され「が」で示されるので、「サントスさんはくれました」とならないようにしっかり教授しましょう。

 

参考:

【画像】助詞「は」「が」の用法 違いと使い分け
6つの用法 ①名詞修飾 ②対比 ③最低限(予想以上のモ) ④目前・話題(取り立てのハ)用法 ⑤強調 ⑥既知と未知 ①~⑥の内、①~④は初級でも教えるが、残りは取り立てて説明する機会はない。「は」「が」の違いを説明する際は、上クラスならまとめ...

導入

◆Tの持ち物で導入
T:この時計を見てください。いい時計でしょう?誕生日に、父がくれました。

(このとけいは) たんじょうびに、ちちくれました。

T:本当は「この時計は」ですが、もう時計の話をしています、これは皆さん知っていますから、言わなくてもいいです。
S:先生、どうして「父が」ですか。「父は」じゃありませんか。
T:そうですね。私が、「(時計を見せて)くれました。」と言ったら、皆さんはどう思いますか。え?誰が?誰がくれましたか?と思いませんか。大切なことをいうとき、「は」じゃなくて「が」を使います。

◆Sの持ち物で練習
T:じゃ、みなさん、家族や友達がくれたものはありますか。教えてください。
S1:はい、このかばんです。母がくれました。
S2:この消しゴムは、友達がくれました。

練習B-2

◆シチュエーションと例を確認してから、ペアで練習させる
T:(練習B-1の絵を見せる)わたしはいろいろなものをもらいました。誰がくれましたか、友達に教えます。
 (練習B-2、例の絵を見せる)友達が言います。「ブラジルのコーヒーですね」私は教えます。「ええ。サントスさんがくれました」(リピート練習)
(続けて1~4をペアで練習するよう促す)

練習A-3:V[テ]もらいます

「~てもらいます」は、ある行為について、話し手の側からその行為への感謝の気持ちを込めて描写するときに用いる表現です。「父は私を駅まで送った」は単なる事実の描写ですが、「私は父に駅まで送ってもらった」には、話し手の父への感謝の気持ちが込められています。気持ちを込める文型は中級以降に多く出てきますので、ここでしっかり事実描写の文との違いを理解させましょう。

「~に(Vて)もらいます」の「に」と「から」の使い分け
「Nをもらう」は「に」「から」両方使えますが、「Vてもらう」は、モノの移動がはっきりしない場合、「から」では違和感があります。「に」だけを使えば間違えることはないので、「に」で統一して教授しましょう。
例:
友達(〇に/〇から)お菓子をもらった。
友達(〇に/〇から)写真を送ってもらった。
友達(〇に/?から)週末の予定を教えてもらった。
友達(〇に/×から)宿題を手伝ってもらった。
24課では、「~てもらう/くれる/あげる」において、一貫して「三人称は三人称に~」という形で教えていません(例:田中さんは佐藤さんに教えてあげた)。「三人称は三人称に~」の文は提出しないようにしましょう。

導入

T:みなさんは、日本語のクラスで本を持っていないとき、どうしますか。
S:友達に「見せてください」と言います。
T:そうですね。そして、友達は本を見せました。

ともだちは ほんを みせました。

T:このとき、みなさんはどんな気持ちですか。
S1:ありがとう。
S2:うれしいです。
T:はい。この「ありがとう、うれしい」の気持ちがあるとき、「私は友達に本を見せてもらいました」と言います。

ともだちは ほんを みせました。
わたしは ともだち ほんを みせてもらいました

T:「友達は本を見せました」も、「私は友達に本を見せてもらいました」も、「友達」「本」「見せます」これは同じです。でも、「見せてもらいました」に、私の「ありがとう、うれしい」の気持ちがあります。

T:じゃ、友達がみなさんの宿題を手伝ったとき、何と言いますか。
S:私は友達に宿題を手伝ってもらいました。

繰り返しになりますが、ここでも「先生は~てくれました」のような上下関係を含む文は提出しないようにしましょう。

◆以下のような語彙を使って「~てもらいます」の練習

貸す・教える・読む・説明する・食べる・手伝う・撮る・洗う・入れる・直す・予約する・開ける・持つ・作る・電話する・紹介する・案内する・運転する・連れていく

練習B-3

◆拡大した絵を用いて行う
T:これ(三本の毛の人)は私です。佐藤さんは傘を貸しました。私は?
S:私は佐藤さんに傘を貸してもらいました。(リピート練習)
(同様に1~4も繰り返す)

練習B-4

◆例を確認し、ペアで練習する

ペアワークのやり方は様々です。まだ文がうまく作れそうにないと感じたら、全体で正しい文を確認してからペアでもう一度練習させてもいいでしょう。また、終わってから教師のキューに続いて全体でリピート練習すると、最後に正しい文を自分の口で練習して終わることができます。

練習A-4:V[テ]くれます

「~てもらう」の場合、すべて「私は○○さん」と「に」を使っていましたが、「~てくれる」では「○○さんは私」の3種類になります。

例:
 友達は私手紙を送ってくれた
 母は私シャツを洗濯してくれた
 父は私駅まで送ってくれた
動詞によって使う助詞が違うので、しっかり教授しましょう。
※「彼女が私とドライブしてくれた」のような「と」はここでは教授しません

「Vてもらう」と「Vてくれる」の違い
どちらもほとんど同じように使うことができますが、「てくれる」の方が相手が自分から進んで恩恵を与える行為をしたというニュアンスが入ります。
例:
 友達に薬を買ってもらいました→私が頼んだ
 友達は薬を買ってくれました→友達が自発的に買った
ただ、この段階でその差を詳しく扱う必要はありません。質問があったら教授しましょう。

導入

◆先ほどの、教科書を忘れた私と友達の絵を使う
T:はい、もう一度。私は・・・?
S:私は友達に本を見せてもらいました。
T:じゃ、友達は?友達は私に?
S:本を見せて・・・あげました?
T:いいえ。さっき勉強しましたね、友達は私に、のときは、あげますじゃなくて?
S:くれます。
T:そうです。じゃ、友達は私に?
S:友達は私に本を見せてくれました。

ともだちは わたし ほんを みせてくれました

◆動詞による助詞の違いを教授
T:私は先週の土曜日、病気でした。でも夫/彼氏が薬を買いました(パートナーの写真を見せて、感謝を述べる)。
S:優しいですね。
T:はい、夫はいつも私に薬を買ってくれます。

おっとは わたし くすりを かってくれます

T:病気の時、とても優しいです。
S:えー病気の時だけですか。
T:いいえ、病気じゃなくても色々してくれます。
S:例えば?
T:夫は・・・(と言って様々な動詞の絵カードを見せる。実際にパートナーに協力してもらって看病なり、料理したりする写真を見せても盛り上がる)。夫は?
S:料理を作ってくれます。

おっとは わたし くすりを かってくれます
 りょうりを つくってくれます。
 うたを うたってくれます。

T:じゃ洗濯は?
S:夫は私服を洗濯してくれます。
T:私に、じゃありません。これは誰の服ですか。
S:先生の服です。
T:じゃ先生の服を、ですね。

おっとは わたし くすりを かってくれます
おっとは わたし ふくを せんたくしてくれます。

T:家は駅から遠いです。ですから、夫は車で?
S:送ります。
T:そうです。じゃ、夫は?
S:夫は私の送ってくれます。
T:送りますは、人を、ですから、

おっとは わたし くすりを かってくれます
おっとは わたし ふくを せんたくしてくれます
おっとは わたし えきまで おくってくれます

T:夫は「私に」「私の」「私を」、この3つを使います。
S:先生、「てもらいます」は?
T:全部「夫に」だけです。簡単ですね。でも「てくれます」は3つありますから、頑張りましょう。

◆「私に/の/を」を省略した答え方
S:でも先生、「くれます」はいつも「私」ですね。言わなくてもいいですか。
T:いい質問ですね。そうですね。「くれます」は100%私ですから、言わなくてもいいです。でも、「私に」だけじゃありません。「私」を言わなくてもいいですが、助詞が「に・の・を」の3つありますから、それを忘れないでくださいね。

ここはかなり大事なところです。そして、この「私に/の/を」問題は最後に出すのがミソです。学習者が使い分けに辟易しているところにこの万能のルールを出すことで、学生の曇った顔に一筋の光を差してあげましょう。

練習B-5

◆拡大した絵を用いて行う
T:これ(三本の毛の人)は私です。佐藤さんは?
S:佐藤さんは傘を貸してくれました。(リピート練習)
(同様に1~4も繰り返す)

1)「セーターを送る」と、3)「駅まで送る」は、それぞれ「私」「私」です。ここでは「私」を省略した形で練習してよいのですが、助詞の違いがわかっているか、適宜確認するとよいでしょう。

練習B-6

◆例を確認し、ペアで練習する

「誰~?」「佐藤さん~」とならないように注意しましょう。忘れているようなら、練習A-2の「大事なことを聞いたり言ったりするときには「が」を使う」ということを思い出させましょう。

活動:日本へ来たとき・・・

◆日本へ来たとき、だれが何をしてくれたかを説明する

やり方①:一人ひとり発表させる
やり方②:ペア、またはグループで話す
やり方③:作文にする(『文型練習帳』p.128)

やり方は様々です。組み合わせて、②をした後①や③の活動を取り入れる、などしてもよいでしょう。クラスの雰囲気や進度に合わせて、いろいろ取り入れてみましょう。

練習A-5:V[テ]あげます

「~てあげる」でも、助詞は「私は○○さん」の3種類になります。しかも、省略不可です。

例:
 私は友達答えを教えてあげた
 私は母自転車を修理してあげた
 私は弟遊園地に連れて行ってあげた
動詞によって使う助詞が違うので、しっかり教授しましょう。

導入

◆こんどは、教科書を忘れた友達と私の絵を使う
T:今日は、友達が本を忘れました。私は友達に本を・・・?
S:私は友達に本を見せてあげました。
T:そうですね。

わたしは ともだち ほんを みせてあげました
「~てあげる」は、特に「見せてあげるよ」のように相手に直接使うと少々恩着せがましい印象があるため、特に目上には使うことができません。直接法で指導している場合、このニュアンスを伝えることは難しいですが、身振りで上から目線な態度を示すなどして伝えましょう。
「~てあげる」の代わりには「~ましょうか」(14課)がふさわしいです(『翻訳・文法解説』p.152)。
なお、教授の際は、事実描写の色が強い「~てあげました」という過去形に統一するとよいです。
S:先生、「本を見せました」と「本を見せてあげました」は、違いますか。
T:そうですね。「本を見せます」。これは同じです。どちらも、本を見せます(動作で示す)。でも、「本を見せてあげました」のほうが、「どうぞ。私は優しい人ですねえ。あなたはうれしいですね?よかったですか?「ありがとう」と言いたいですか?」このような感じがあります。ですから、「あ、Aさん、本を忘れましたか。じゃ、見せてあげますよ。(少々嫌味っぽく、大げさに)」これはちょっと、よくないです。
S:じゃ、何がいいですか。
T:「見せますよ」や、「見せましょうか」がいいですね。友達には、まあ、、、でも、先生やお客さん、バイトの店長には絶対にだめです!
 
◆動詞による助詞の違いを教授
T:私は先週の土曜日、そして日曜日も病気でした。でも、月曜日、元気になりました。だから、夫が好きな料理を作りました。
S:なんですか。
T:カレーです。私は夫に・・・?
S:夫にカレーを作ってあげました。
わたしは おっと カレーを つくってあげました

T:それから、夫の部屋もそうじました。
S:私は夫部屋をそうじします・・・?
T:夫に、じゃありません。
S:夫の?
T:そう。夫の部屋ですから。さっき勉強しましたね。

わたしは おっと カレーを つくってあげました
わたしは おっと へやを そうじしてあげました
T:そして、夫の仕事が終わったとき、駅まで迎えに行きました!
S:ええ、本当ですか。
T:…はい。私は?
S:夫…を?
T:そうです。
S:私は夫を駅まで迎えに行ってあげました。
わたしは おっと カレーを つくってあげました
わたしは おっと へやを そうじしてあげました
わたしは おっと えきまで むかえにいってあげました

T:はい、さっき勉強しました。「あげます」も、「夫に」「夫の」「夫を」、この3つを使います。
S:先生、「夫」を言わなくてもいいですか。
T:だめです。「くれます」は100%私、でした。だから言わなくてもいいです。でも「あげます」は、夫も友達もA君もBさんも、たくさんいます。だから、言わなければなりません。
S:ええー。
T:でも、「あげます」を使わないときと、助詞が同じですよ。「夫にカレーを作りました」「夫にカレーを作ってあげました」。「夫を駅まで迎えに行きました」「夫を駅まで迎えに行ってあげました」。同じです。わからないとき、「あげます」を使わない文はなんですか。考えましょう。

練習B-7

◆キュー出しで行う
T:おじいさん、道を教えます。私は?
S:私はおじいさんに道を教えてあげました。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)

教師用メモ

3回の授受表現

7課  「Nをあげる/もらう」(上下・ウチソトは×)
24課 「Nをくれる」+「Vて あげる/もらう/くれる」(上下・ウチソトは×)
41課 「Nをやる/いただく/くださる」+「Vて やる/いただく/くださる」

「貸してもらう」=「借りる」

「私は貸してもらう」=「私は借りる」なのですが、ここで混乱する学生がたまにいます。中級以降でも、ふとした瞬間に「あれ?どうして私は借りているのに「貸す」を使うの?」となる学生もいるようです。

「貸してもらう」は「”貸す”という相手の行為について、”~てもらう”を使って話し手側の感謝を込めている表現」というように解釈できます。つまり、導入でも見せた
・友達は傘を貸した
・私は友達に傘を貸してもらった
のとおり、”貸す”という行為について、話し手の感謝の意を表す表現なのです。

初級の学生に説明するのは難しいので、上のようにまずは事実描写の文を作り、そこから「~てもらう」の文を作るよう指導するとよいでしょう。

〇あげよう 〇もらおう ×くれよう

〇あげよう
〇もらおう
×くれよう
これらから分かる通り、「くれる」には意志性がありません。

したがって、
〇あげたい
〇もらいたい
×くれたい
となります。

これ、もらってくれる?

「これ、たくさんあるから、よかったらもらってくれる?」

この段階でこういった表現は教えませんが、これはどういう意味なのでしょうか。

日本人は物をあげるとき、しばしば「これ、あげる」ではなく、「これ、もらって」と言う事があります。「あげる」と「もらって」の違いは「て(ください)」の部分にあり、「あげる」は単に自分の行為を述べていて相手のことは考慮していないのに対し、「もらって」は相手に受け取ることを指示、またはお願いする形になっています。

さらにこの「もらって」に「くれる?」がついた場合、受け取るかどうかの判断を相手に任せていることになり、よりやわらかいお願いになります。また、「くれる」を使うことで「あなたがこれを受け取ったら私は嬉しい」という気持ちをも表していることは、この24課で学んだ通りです。

このように、授受表現の組み合わせで様々なニュアンスを表すことはよくあります。普段何気なく使っていますが、いざ学生に聞かれると「えっどういう意味だろう?」となるものもあるかもしれません。

  • これ、もらってもらえる?
  • ピーマンもらってあげる。
  • 要らないかもしれないけど、もらってやってください。
  • A君のこと、大目に見てやってくれ。
  • そんなに欲しいなら、くれてやる。
【23課】教案:~とき、~と
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コメント

  1. 本当にわかりやすくて、授業の前におさらいとして読むのに最高です。
    感謝です!