『みんなの日本語 初級I 第二版』完全準拠。
導入や練習の仕方、教師として知っておきたい文型のポイントなどを解説します。
学習項目
練習A
1.わたしはNがほしいです
2.わたしはV[マス]たいです
3.V[マス]たいです/V[マス]たくないです
4.V[マス]/Nに行きます/来ます/帰ります
教案
新出語彙

この課で新出の動詞は少ないですが、使い方に注意が必要なものが多いので、以下のポイントを読んでよく教授しましょう。
★ポイント
- 遊びます:「好きなことをして楽しい時間を過ごす」といったふわっとした意味である。「×テニスを遊びます」「×パソコンを遊びます」という誤用がよくみられるが、言うとすれば「テニスをして遊びます」「パソコンを使って遊びます」になる。テ形はまだやっていないし、「テニスをします」「パソコンを使います」で事足りるので、「遊びます」は単独で使う、と教えるとよい
- 迎えます:ほとんどは「迎えに行く」の形で使われ、単独ではあまり使われない
- 疲れます:動詞であることに注意。意味的には形容詞に近いので、「疲れです」という誤用がよくみられる
- 食事します/買い物します:「×ごはんを食事します」「×服を買い物します」という誤用がよくみられる。「食事します」「買い物します」は目的語をとらないことをよく言い聞かせる。「×食事を食べます」「×買い物を買います」もよくみられる誤用である
- 散歩します:「公園を散歩します」で教える。「公園で散歩します」との違いは「教師用メモ」にて後述
- ほしい:英語であれば「want」で動詞だが、日本語では動詞ではなくイ形容詞であることに注意
練習A-1:わたしはNがほしいです

「ほしいです」は人称に制限があり、一人称にのみ使えます。「あなたは~が欲しいです。」「〇〇さんは~が欲しいです。」とは言えません。また、目上に対して「~が欲しいですか」と聞くと失礼になります(代わりに「いかがですか」(7課)を使います)。教授する際には注意しましょう。なお、否定形「ほしくないです」は扱いません。
導入:わたしはNがほしいです
T:(サンタクロースと子供たちの絵を見せて)もうすぐクリスマスです。
(Aの子供のセリフとして)わたしは自転車が欲しいです。
(Bの子供のセリフとして)わたしはパソコンが欲しいです。

「ほしい」はイ形容詞であり、「好きです」と同じように「Nが」を使うことに注意させましょう。「Nを」とする間違いが多くみられますので注意です。
T:S1さんは何が欲しいですか。
S1:私はカメラが欲しいです。
T:S2さんは?
S2:私はiPadが欲しいです。
そして、これらは学生がよく言う誤用です。授業中何度聞いたかわかりません。
「ほしい」のなかには「手に入れたい、自分のものとして所有したい」という意味が隠れています。ですので、所有できないもの、「所有」というイメージから遠いものは「ほしい」で言うことができません(※)。次で教える「Vたいです」を使うよう指導しましょう。
※ただし例外もあり、例えば「のどがカラカラだから冷たい水が欲しい」などは言うことができます。
練習B-1
◆すべてクリスマスの子供たち、という設定でやるとよい
T:(5人の子供と、上に例、1~4の絵を出しておく。1つ目を指して)私はカメラが欲しいです。(リピート練習)
(2つ目を指して)わたしは?
S:わたしはパソコンが欲しいです。(リピート練習)
(続けて2~4も行う)
導入:どんなNがほしいですか
T:私のパソコンは古いです。そして、重いです。私は・軽い・パソコンが欲しいです。
T:S1さん、私はカメラ・・・
S1:私はカメラが欲しいです。
T:どんなカメラが欲しいですか。
S1:小さいカメラがほしいです。
…ちいさい/ニコンの/たかい カメラ が ほしいです。
T:S3さんは何が欲しいですか。
S3:パソコンが欲しいです。
T:どんなパソコンが欲しいですか。
S3:新しいパソコンが欲しいです。
T:S3さん、S4さんに。
S3:S4さんは何が欲しいですか。
S4:時計が欲しいです。
S3:どんな時計が欲しいですか。
S4:ロレックスの時計が欲しいです。
(何回か繰り返す)
練習B-2
◆キュー出しで行う
T:パソコン。どんな・・・(質問するよう促す)
S:どんなパソコンが欲しいですか。(リピート練習)
T:かるい。
S:軽いパソコンが欲しいです。(リピート練習)
(続けて1~4も行う)
発展:何がいちばん欲しいですか
◆余裕があれば行う。「何がいちばんほしいですか」の前に「今」をつけるとより自然な言い方になる
T:車、カメラ、時計、皆さんは今何がいちばんほしいですか。
S:カメラがほしいです。
T:どうしてですか。
S:きれいな写真が好きですから。
…カメラ が ほしいです。きれいなしゃしんがすきです から。
練習A-2:わたしはV[マス]たいです

これも「ほしいです」と同じく人称に制限があり、一人称にのみ使えます。「あなたはVたいです。」「〇〇さんはVたいです。」とは言えません。代わりに「Vたがっています(N4)」を使います。また、目上に対して「Vたいですか」と聞くと失礼になります(代わりに「Vますか/Vませんか」を使います)。教授する際には注意しましょう。
導入:V[マス]たいです
◆日本にいて、ホームシックになっている留学生の絵を見せる
T:(留学生のセリフとして)両親に会いたいです。国へ帰りたいです。国の食べ物を食べたいです。
会います、会い・たいです。帰ります、帰り・たいです。食べます、食べ・たいです。
くにへ かえり
くにのたべものを たべ

「ます」をとって「たいです」をつけます。まだ「会いますのマス形」といったことは導入しなくてよいです。
また、目的語につく「を」は、「が」でも可です。『みんなの日本語』では「を」を採用していますが、「が」が出てきたらそれでもいい、より「~たい」を強調した言い方になる、と教授しましょう。
T:S1さんは国へ帰りたいですか。
S1:はい、帰りたいです。
◆動詞の絵カードを使って「Vたいです」の形を作る練習
練習B-3
◆拡大した絵を用いて行う
T:(例の絵を見せて)これはすき焼きです。すきやきを・・・?(文を作るよう促す)
S:すき焼きを食べたいです。(リピート練習)
T:(1の絵を見せて)ここはどこですか。
S:北海道です。
T:北海道・・・?(文を作るよう促す)
S:北海道へ行きたいです。(リピート練習)
(続けて2~4も行う)
練習A-3:V[マス]たいです/V[マス]たくないです
導入:V[マス]たくないです
◆上に引き続き、ホームシックになっている留学生の絵を見せる
T:(留学生のセリフとして)学校へ行きたくないです。勉強したくないです。
がっこうへ いきたく ないです。

「たいです」はイ形容詞と同じように使えることを教授しましょう。なお、板書は色を変えるなどするとわかりやすいですが、板書が大変ならパワーポイントで提示するのがいいです。
◆動詞の絵カードを使って「Vたくないです」の形を作る練習
◆文字で確認
『文型練習帳』58ページを使うなどして、文字で「Vたいです」「Vたくないです」の形を定着させましょう。
導入:<疑問詞>+V[マス]たいですか/何もV[マス]たくないです
T:夏休み、どこへ行きたいですか。
S1:北海道へ行きたいです。
S2:沖縄へ行きたいです。
T:いいですね。私も旅行したいですが、夏は暑いです。私は夏が嫌いです。私はどこも行きたくないです。
…ほっかいどう へ いきたい です。
…どこも いきたく ないです。
T:お昼ご飯、何を食べたいですか。
S1:ラーメンを食べたいです。
S2:おにぎりを食べたいです。
T:そうですか。私は・・・(おなかが痛いジェスチャー)なにも・・・(文を作るよう促す)
S:食べたくないです。
練習B-4
◆例を確認してから、ペアで練習させる

ペアワークのやり方は様々です。まだ文がうまく作れそうにないと感じたら、全体で正しい文を確認してからペアでもう一度練習させてもいいでしょう。また、終わってから教師のキューに続いて全体でリピート練習すると、最後に正しい文を自分の口で練習して終わることができます。
導入:何か~
T:(暑い、というジェスチャー)とても暑いですね。のどがかわきました。あ~、何か飲みたいです。お茶、ジュース、コーヒー・・・(何でもいい、というジェスチャー)何か、飲みたいです。
なにか のみたいです。

「何」は疑問詞ですが、「か」と一緒に使うことで平叙文の中で使うことができるようになります(もちろん、疑問文でも使うことができます。)。「何か」のあとの「を」は省略可、と『翻訳・文法解説』には書かれていますが、普通は使いませんので省略した形を教授します。ほかに「どこか」「誰か」「いつか」などがあります。
練習C-2
◆T⇔Sで例をやって見せてから、ペアで練習する
※2の絵では「何か」を使わないので注意
発展:~から、V[マス]たいです/V[マス]たくないです
◆前件を与えて、後件を「Vたいです」「Vたくないです」を使って作文する
例:寒いです
・寒いですから、ラーメンを食べたいです。
・寒いですから、外へ行きたくないです。
『文型練習帳』59ページを使用してもよい
練習A-4:V[マス]/Nに行きます/来ます/帰ります
導入:V[マス]に行きます

まずは場所を出し、そこで何をするのかの目的をつぎに提示したほうがよいでしょう。印象にも残るし、助詞も大きく変えずに済み、代入練習もしやすくなります。新しい形なので、「に」にしっかりと注目させましょう。
T:みなさんは新宿へ行きます。
S:はい、行きます。
T:新宿で何をしますか。
S1:お酒を飲みます。
S2:アルバイトをします。
S3:映画を見ます。
S4:買い物します。
T:そうですか。新宿へいきます。新宿へ・お酒を飲みに・行きます。新宿へ・映画を見に・行きます。「アルバイトをします」「買い物します」、待ってください。
おさけを のみ
えいがを み

「花屋へ花を買いに行きます」「映画館へ映画を見に行きます」のように、「その場所でするであろう当然のこと」にはあまり使いません。
練習B-5
◆拡大した絵を用いて行う
T:(例の絵を見せる)ここはどこですか。
S:イタリアです。
T:イタリア・・・?(文を作るよう促す)
S:イタリアへ歌を習いに行きます。(リピート練習)
(続けて1~4も行う)
導入:Nに行きます

ここでは、3グループの動詞と「Nをします」は「Nに行きます」の形で扱います。
T:S2さんは、新宿でアルバイトをします。S4さんは、新宿で買い物します。新宿へ行きます。新宿へ・アルバイトに・行きます。新宿へ・買い物に・行きます。
アルバイト
かいもの
◆コンビニへ何をしに行くか練習
T:コンビニは?コンビニへ・・・
S1:おにぎりを買いに行きます。
S2:荷物を送りに行きます。
S3:バスのきっぷを買いに行きます。
S4:雑誌を買いに行きます。
◆まだ言える語が少ないので、以下の未習語を提示してもよい
・コピーします(14課)
・お金をおろします(16課)
・保険証(17課)のお金を払います(17課)
・お弁当/おかし/化粧品/下着/ペンを買います
練習B-6
◆キュー出しで行う。パワーポイントなどで文字を見せながらやるとよい
T:公園へいきます、散歩します。公園へ・・・(文を作るよう促す)
S:公園へ散歩に行きます。(リピート練習)
T:京都へ行きます。花見をします。
S:京都へ花見に行きます。(リピート練習)
(続けて1~4も行う)

教科書を見て各自で考え書かせてから、数名に発表してもらうなり板書してもらうなりして確認する、という形でもよいでしょう。その際も、口でのリピート練習も必ず行いましょう。
練習B-7
◆例を確認してから、ペアで練習させる

「どこでごはんを食べに行きますか」という誤用が出るので注意です。
○どこへごはんを食べに行きますか。
×どこでごはんを食べに行きますか。
○どこでごはんを食べますか。
導入:<疑問詞+助詞>+V[マス]/Nに行きます

今の時点で「疑問詞+助詞」を産出するのはかなり高難易度です。疑問詞カードと助詞カードをうまく使って繰り返し練習しましょう。
◆復習
T:映画を見ます。(【だれ】カードを見せる)だれ・・・?
S:と?
T:そうです。誰と映画を見ますか。
買います。(【なに】カードを見せる)
S:なにを買いますか。
(いくつか繰り返す。「誰に会いますか」も入れておく)
◆「~に行きます」の形で練習
T:食事に行きます。(【いつ】カードを見せる)
S:いつ食事に行きますか。
(いくつか繰り返す)
練習B-8
◆キュー出しで行う。パワーポイントなどで文字を見せながらやるとよい
T:だれ、映画を見ます。誰・と・映画を見・に・行きます・か。(強調)
誰と映画を見に行きますか。(リピート練習)
(【姉】を提示)
S:姉と見に行きます。(リピート練習)
T:なに・買います
S:何を買いに行きますか。(リピート練習)
T:(【靴】を提示)
S:靴を買いに行きます。(リピート練習)
(続けて2~4も行う)
活動:「私が行きたいところ」作文
◆今行きたいところや国について、作文を書く
まず、以下のような質問を挙げ、何を書くか明確化してから取り組ませるとスムーズにいく
1.どこへ行きたいですか。
2.だれと行きたいですか。
3.何を見たいですか。
4.何を食べたいですか。
5.何が欲しいですか(何を買いたいですか)。
教師用メモ
「公園を散歩します」と「公園で散歩します」の違い
・を:移動の経路、空間を示す 例:道を歩く、横断歩道を渡る、空を飛ぶ
・で:行為が行われる場所を示す 例:広場でサッカーをする、家で勉強する
したがって、「公園」を「散歩という移動の経路・空間」と捉えていれば「公園を」、「散歩が行われる場所」と捉えていれば「公園で」となります。
通常、「散歩」を公園のみで行う、ということは考えにくいです。
家から出て公園をぐるっと回ってまた家へ、というのが散歩であり、公園は移動の経路・空間の一部であると考えられますので、「公園を」が自然でしょう。
ほかに「山を登る」も移動の経路の「を」ですが、よく「山に登る」との違いを聞かれます。
助詞の違いについては以下の記事をご覧ください。

N(を)~しに行きます/来ます
上述のとおり、『みんなの日本語』では「散歩に行きます」「花見に行きます」が推奨され、「散歩しに行きます」「花見をしに行きます」はNGとされています。
しかし、日常生活ではよく聞きますし、ちょっとできる学生なら「~しに行きます」と自然と言ったりします。
この形を扱ってよいかどうかは、学校や先生方の方針によるでしょうから、一概には言えません。
ただし、チームで教えている場合は、同じチームの先生とどのように扱うかを決めておいたほうがよいでしょう。
A先生はだめと言ったのにB先生はいいと言った、となると学生も混乱してしまいます。
?「公園へサッカーに行きます」
「北海道へスキーに行きます」には違和感がないのに、「公園へサッカーに行きます」には違和感があります。同じスポーツなのになぜでしょうか。
恐らく、「旅行に行きます」に違和感がないように、レジャー要素が強いものは「Nに行きます」で言うことができるのではないでしょうか。
「スキー」とスポーツ名で言っても、そこには長距離移動や宿泊を伴うことがほとんどです。
その証拠に、「毎日近くの山へスキーに行きます」は少々違和感があるのではないかと思います(ただし個人の語感によります)。
「公園へサッカーに行きます」は「公園へサッカーをしに行きます」だと違和感はなくなります。どのスポーツならいいのかはわかりにくいので、スポーツを扱うなら全て「~をしに」で教えるようにしましょう。
ただしその場合、「N(を)~しに行きます/来ます」を扱えることが条件です。
「日本へ日本語の勉強に来ました」
「日本へ日本語を勉強しに来た」と言いたがる学生は多いです。『みんなの日本語』推奨のルールでは、「来ます」の前は名詞(句)に限りますので、「日本語の勉強に来ました」と言わなければなりませんが、これがすんなりできる学生はほぼいません。「日本語を勉強に来ました」といった文になってしまいます。
「N1のN2」は1課から勉強しているので、「日本語」は名詞、「勉強」も名詞、じゃあ助詞は?と言えばわかるはずなのですが、とにかく間違いが非常に多いので、教授する際はしっかりと確認します。
○日本語の勉強
○日本語を勉強します。
○日本語の勉強をします。
×日本語を勉強
×日本語の勉強します。
×日本語を勉強をします。
○日本へ 日本語の勉強 に来ました。
○日本へ 日本語を勉強し に来ました。
○日本へ 日本語の勉強をし に来ました。
×日本へ 日本語を勉強 に来ました。
×日本へ 日本語の勉強し に来ました。
×日本へ 日本語を勉強をし に来ました。


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