『みんなの日本語 初級II 第二版』完全準拠。
導入や練習の仕方、教師として知っておきたい文型のポイントなどを解説します。
学習項目
練習A
1.V[辞書]のはAdj.です
2.V[辞書]のがAdj.です
3.V[辞書]のを忘れました
4.V[普通形]のを知っていますか
5.~のはNです
教案
新出語彙

新しい語がたくさん出てきます。「読み物」にもよく使う語が出てくるので、取りこぼさないようにしましょう。
★ポイント
- つきます:ここでは他動詞。『翻訳・文法解説』では、英訳は「tell」になっているが、「伝える・教える」といった意味では使わず、「嘘をつく」のほかには「ため息をつく」「悪態をつく」くらいでしか使わない。なお、「駅に着きます」(25課)、「電気がつきます」「ポケットが付きます」(29課)は自動詞
- 小学校、中学校:何歳から小学校へ行くか、義務教育がいつまでかなどは、国によって異なる。余裕があればそのあたりに触れてもよいが、学習者の実生活に直接関係がなければ、あえて教え込む必要はない
練習A-1:V[辞書]のはAdj.です
使える形容詞:
難しい・易しい・面白い・楽しい・気持ちがいい/悪い・危ない・大変な・いい・悪い、等
ただ、そのことを伝えるのは難しいので、使える形容詞を限ってしまいましょう。そうしないと、感想・評価にならない文を作り出すことになってしまいます。
×寿司を食べるのは高いです
×パーティーをするのはうるさいです
×日本に住むのは狭いです
導入
T:(漢字をわざと間違えて書く)
S:先生、違いますよ。
T:あれ?漢字は難しいですね。
T:S1さん、漢字は難しいですか。
S1:はい、難しいです。
T:書きます?読みます?
S1:どちらも。
Tそうですね。
かんじを よみます は むずかしいです。
T:漢字を書きますは難しいです。いいですか。
S:だめです。
T:そうですね。「動詞+は難しいです」はだめです。どうしたらいいですか。動詞を辞書形にして、ここに「の」を入れます。漢字を書くのは難しいです。

「の」が名詞の代わりであり、その結果名詞修飾と同様動詞が辞書形になる、ということは上のレベルでは教えてもいいですが、難しいようなら単純に「辞書形+の」で教えてしまってよいでしょう。
T:S1さんは中国人ですから、書くのは難しくないでしょう?
S1:はい、漢字を読むのは難しいです。
かんじを よむ のは むずかしいです。
◆形容詞を指定して変換練習

上でも述べた通り、形容詞を指定しないと非文になりやすいです。ここでは使える形容詞を限定して練習しましょう。
T:毎日お酒を飲みます、のは、体に悪いです(できるクラスなら口頭で、できないなら文字カードを見せる)。
S:毎日お酒を飲むのは体に悪いです。
・彼女/彼氏と話します のは 楽しいです
・ラッシュの電車で毎日通います のは 大変です
・温泉に入ります のは 気持ちがいいです
・電話しながら運転します のは 危ないです
他例文
・みんなでごはんを食べるのは楽しいです。
・一人でご飯を食べるのは寂しいです。
・家の近くにスーパーがあるのは便利です
・夜歩くのは危ないです。
・タバコを吸うのは体に悪いです。
・野菜を食べるのは体にいいです。
・一人でこの机を運ぶのは無理です。
・働きながら学校に通うのは大変です。
練習B-1
◆キュー出しで行う
T:いろいろな国の人と話します、楽しいです。
S:いろいろな国の人と話すのは楽しいです。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)
練習B-2
◆例を確認してから、ペアで練習する

ペアワークのやり方は様々です。まだ文がうまく作れそうにないと感じたら、全体で正しい文を確認してからペアでもう一度練習させてもいいでしょう。また、終わってから教師のキューに続いて全体でリピート練習すると、最後に正しい文を自分の口で練習して終わることができます。
練習:複文作成
◆「~のは簡単ですが、~のは難しい」を作る
例:日記を始めるのは簡単ですが、続けるのは難しいです
・大学に入る/出る
・結婚/離婚する
・言う/する
練習A-2:V[辞書]のがAdj.です
導入
◆L9形容詞は助詞が「が」になる事を復習
T:私はこれ(絵を見せる)好きです。
T:( )は何ですか。
S:「が」です。
T:でも、絵が好きです・・・。書きますか、見ますか、どちらですか。わかりません。
わたしは えを みます が すきです。
T:これはいいですか。
S:だめです。
T:「絵が好きです」は「書きます」好きですか、「見ます」好きですか、わかりません。でも、「動詞が好きです」はだめです。「名詞が好きです」がいいです。ここに「の」を入れます。書きますは何形?
S:辞書形、書く
T:書くのが好きです。
◆練習
T:私は絵が好きです(下手な絵、ドラえもんやピカチュウを描く)絵を書きます のが 下手です(できるクラスなら口頭で、できないなら文字カードを見せる)。
S:絵をかくのが下手です。
・絵を書きます のが 嫌いです
・歩きます のが 速いです
・走ります のが 遅いです
・宿題をします のが 嫌いです
・もう一度テストを受けます のが 嫌いです
「~のは」意見
「~のが」好き嫌い・できること
となります。
練習B-3
◆キュー出しで行う
T:わたしは好きです、花を育てます。
S:わたしは花を育てるのが好きです。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)
練習B-4
◆例を確認してから、ペアで練習する

「~んです」(26課)を使って理由を説明します。「形容詞+んです」を忘れているようなら、復習しましょう。
練習C-1
◆例を確認してから、ペアで練習する

「~のが」と「~のは」をうまく使いましょう。学生同士で文を作らせても面白いと思います。
練習A-3:V[辞書]のを忘れました

「Nを忘れた」だけでは具体的にわからないことを例にとり、導入します。例えば、「傘を忘れた」は持ってくるのを忘れたとしか解釈できませんが、「鍵を忘れた」だと、「持って来るのを」か、「かけるのを」かわからないため、より詳しく説明するためにこの文型が必要です。
導入
◆「忘れる」が「を」を取る動詞であることを確認しておく
T:あ!
S:どうしましたか。
T:家のかぎ、忘れました。
T:( )は?
S:を
T:私は忘れました。かぎを忘れました。かぎを持って来ます を忘れました。かぎをかけます を忘れました。
かぎを かけます を わすれました。
T:これもだめですね。何を使えばいいですか。
S:辞書形と「の」です。
T:鍵を持って・・・?
S:持って来るのを忘れました。
T:かけますは?
S:かけるのを忘れました。
かぎを かける のを わすれました。
T:これも「漢字は難しいです」と同じです。何が難しいですか。書くのは?読むのは?忘れました、何を忘れましたか。持って来るのを、かけるのを、忘れました。
◆練習
T:宿題をします のを 忘れました(できるクラスなら口頭で、できないなら文字カードを見せる)。
S:宿題をするのを忘れました。
・エアコンを消す
・ごみを捨てる
・財布を持ってくる
・家賃を払う
練習B-5
◆キュー出しで行う
T:買い物に行きました、卵を買いませんでした。買いものに・・・
S:行きましたが?
T:そうですね。買い物に行きましたが?
S:卵を買うのを忘れました。
T:一つの文で。
S:買い物に行きましたが、卵を買うのを忘れました。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)

2文になっていますので、一度に全部作るのが難しい場合は分けて確認してから一文にしましょう。
練習A-4:V[普通形]のを知っていますか
答えが『はい、知っています』『いいえ、×知りません ○知りませんでした』になることに注意しましょう。
15課:Q~さんの住所を知っていますか Aいいえ、知りません
38課:Q~さんが結婚するのを知っていますか Aいいえ、知りませんでした
なお、形容詞・名詞の普通形も使えますが、38課では動詞の接続しか扱っていません。
導入
◆Sが驚くような情報で導入。ただしまずは誰かが知っているような答えが肯定になるものを選ぶ
T:(ディズニーランドの写真)これはどこですか。
S:ディズニーランドです。
T:そう。東京ディズニーランドですね。東京ディズニーランドが千葉県にあるのを知っていますか。
S1:え?東京じゃありませんか。
S2:知っています。千葉県浦安市にあります。
・・・はい、しっています。
◆「知りませんでした」導入
T:○○さん(有名人でも、先生でも)が来月結婚するのを知っていますか。
S1:ええ、そうですか。
S2:知りません、本当ですか。
T:はい、本当です。知りませんでしたか。
S:知りませんでした。
・・・いいえ、しりませんでした。
S:先生、どうして「でした」ですか。
T:そうですね。じゃ、これを見てください。
B:いいえ、しりません。
2)A:たなかさんが いけぶくろにすんでいるのを しっていますか。
B:いいえ、しりませんでした。
S:いいえ。
T:そうですね。Aさんの話に、田中さんの住所のインフォメーションはありません。だから、話の前も後も、ずっと知りません。でも、2では、Aさんの話が終わったとき、Bさんは田中さんがどこに住んでいますか、わかりましたか。
S:はい。
T:そうです。Aさんの話を聞く前に、Bさんは田中さんがどこに住んでいますか、わかりませんでした。でも、Aさんの話が終わったとき、話に田中さんの住所のインフォメーションがあって、Bさんは「ああ、田中さんは池袋に住んでいます」とわかりました。今Aさんの話を聞いて知りましたが、話の前は知りませんでした。
S1:ええ、そうですか。
S2:私は知っています。
S3:私は知りませんでした。寝ていましたから。
T:○○先生が猫を飼っているのを知っていますか。
S:はい、知っています。写真を見たことがあります。
T:「の」の前は、動詞の辞書形だけじゃありません。
S:普通形ですか。
T:そうです。動詞の普通形を使います。
◆練習
T:S1さん、9月に新しいiPhoneが出るのを知っていますか。
S1:いいえ、知りませんでした。
T:S1さん、S2さんに。S2さんが知らない・・・?ということを聞いてください。
S1:S2さん、来週お祭りがあるのを知っていますか。
S2:はい、知っています。
・・・
練習B-6
◆キュー出しで行う
T:木村さんが結婚します。しっていますか。
S:木村さんが結婚するのを知っていますか。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)
練習A-5:~のはNです

これはいわゆる「強調構文」と言われるもので、この課で最も大切な文型です。「のは」の後を強調したり、誰かの発言をとりあげて訂正したりするときに使います。「のは」の前は、動詞だけでなく形容詞や名詞もくることができます。

導入:~のは<疑問詞>ですか(強調)
◆AさんとBさん(留学生)の2人の会話で導入。PPTで絵やセリフを見せながらやるとわかりやすい
T:AさんとBさんが話しています。Bさんは留学生です。Aさんが聞きます。「どうして日本語を勉強しているんですか」。Bさんは答えます。「日本語で、日本のドラマが見たいんです」。Aさん「初めて日本のドラマを見たのはいつですか」Bさん「3年前です」。
T:初めて日本のドラマを見ました、いつですか。「の」を使います。
S:先生、「いつ初めて日本のドラマを見ましたか」と何が違いますか。
T:同じです。でも、「初めて日本のドラマを見たのはいつですか」のほうが、もっと「いつ?!いつですか!?いつ!?!?」と、「いつ」を知りたい気持ちが強いです。
◆前件を板書、質問文を作らせ、別のSに答えさせる
そのかばんを買いました・どこ → そのかばんを買ったのはどこですか
授業が始まります・何時 →
この学校を作りました・誰 →
あなたの国で一番有名です・何 →
日本語を勉強しています・どうして →
日本語の勉強を始めました・何歳 →
練習B-7
◆キュー出しで、絵を拡大したものを一つずつ見せながら行う
T:女の人は結婚しています。いろいろ質問しましょう。初めて会いました、いつ。初めて・・・
S:初めて会ったのはいつですか。(リピート練習)
T:(「例」の絵を見せる)今は2013年です。いつですか。
S:3年前です。
(同様に1~4も行う)
導入:~のはNです(訂正)

相手の言ったことを取り上げ訂正する際にも、訂正箇所を強調する必要があるため、この強調構文が使われます。
◆再び、AさんとBさん(留学生)の2人の会話で導入。先ほどの会話の続きを見せる
T:またAさんとBさんの会話です。Bさんは、日本のドラマが見たいですから、日本語を勉強していましたね。Aさんが聞きます。「ラブストーリーのドラマをよく見るんですか。」Bさんは答えます。「いいえ、よく見るのは医者のドラマです」。
B:いいえ、よく みる のは いしゃのドラマです。
T:Bさんが一番言いたいことはなんですか。
S:ラブストーリーじゃありません、医者のドラマです。
T:そうですね。これも、さっきの「いつ!?いつですか!?」と同じ。「ラブストーリーじゃなくて、医者!医者のドラマ!!!」医者のドラマです、ということを強く伝えたいですから、「医者のドラマをよく見ます」じゃなくて、「よく見るのは医者のドラマです」と言います。
◆動詞以外の品詞も使えることを教授
T:Bさんは医者のドラマのことを教えてくれます。「一番面白いのは「コード・ブルー」です。」「一番有名なのは、「ドクターX」です。」
いちばん ゆうめいな のは、「ドクターX」です。
T:「の」の前は、イ形容詞やな形容詞、名詞でもいいです。イ形容詞は「い」、ナ形容詞と名詞は「な」を使います。
◆主語が「が」になることに触れる
T:S1さんは、兄弟がいますか。
S1:はい、兄がいます。
T:そうですか。お兄さんは今ベトナムに住んでいるんですか。
S1:いいえ、兄は住んでいるのはアメリカです。
T:兄「が」を使います。
T:「の」の前の文の「私」とか「兄」とか「先生」とか、「は」じゃなくて「が」を使います。
練習B-8
◆例を確認してから、ペアで練習する

余裕があれば、自分たちで会話を作らせてみましょう。
会話練習:インタビュー
◆ペアで、「~のは」を使っていろいろインタビューする
会話例:
S2:S1さん、生まれたのはどこですか。
S1:上海です。
S2:じゃあ、家族は今上海に住んでいるんですか。
S1:いいえ、家族が今住んでいるのは北京です。

まずは教師と学生一人で例を見せてから、ペアで活動をさせるとスムーズです。もし質問が出にくそうだと思ったら、いくつかキーワードを板書してもよいでしょう。
教師用メモ
形式名詞「の」の使い方まとめ
9課【の=物】
・これは私のです
・このペンは彼のです
38課【の=事】評価・感想・嗜好・能力
・漢字を書くのは難しい
・~するのが好き
・歩くのが速い
・~のを知っている
42課【の=事・行為】用途・必要
・やかんはお湯をわかすのに使う
・行くのに一時間/千円はかかります


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