『みんなの日本語 初級II 第二版』完全準拠。
導入や練習の仕方、教師として知っておきたい文型のポイントなどを解説します。
学習項目
練習A
1.~そうです(伝聞)
2.~ようです
教案
新出語彙
★ポイント
- 別れます:おもに人の関係性に使い、一緒にいた人と離れる場合に使う。一方、「分かれる」はおもにモノに使い、一つのものが2つ以上になる場合に使う(ただし「グループに分かれる」など、対象が人になる場合もある)
- 科学:Science。化学はChemistry。違いは、科学が理科分野以外もふくめ実験や観察などから得られた体系的な知識を指すのに対し、化学は物質を反応させて変化などを見る学問であること。化学は科学に含まれている
練習A-1:~そうです(伝聞)
43課で勉強した直前・予想の「V[マス]そうです」や、様態の「イ/ナadj.そうです」との混乱がよく見られます。今日勉強するのは伝聞の「そうです」なので、43課の内容にも触れながら、混乱しないように教授しましょう。
「~そうです」が伝聞であるのに対し、「~と言っていました」は引用です。したがって、「~と言っていました」は引用元を示さなければ使えません。
例:「田中さんが引っ越す」ということを…
田中さん本人から聞き、それを第三者に伝える場合
〇田中さんは来月引っ越すそうです。
〇田中さんは来月引っ越すと言っていました。
林さんから聞き、それを第三者に伝える場合
〇田中さんは来月引っ越すそうです。
×田中さんは来月引っ越すと言っていました。
(〇林さんは田中さんが来月引っ越すと言っていました。)
導入
◆動詞
T:S1さん、明日は雨が降りますか。
S1:え、わかりません。
T:天気予報を見ていませんか。
S1:はい、みていません。
T:じゃ、考えてください。
S1:うーん。今日も雨ですから、明日も雨が降ると思います。
T:ありがとうございます。
T:S2さんは天気予報を見ましたか。
S2:はい、見ました。明日も雨が降ると言っていました。
T:そうですね。私も天気予報を見たんですが、明日は雨が降るそうです。
あしたはあめが ふる そうです。
T:「雨が降ると思います」はS1さんが考えて言いました。「雨が降るそうです」は、私は考えていません。誰に聞きましたか。
S:天気予報の人です。
T:そうですね。私は天気予報の人の話を聞きました。その話をみなさんに教えました。このとき、「そうです」を使います。
T:最近何かニュースを見ましたか。
S:日本人は減っています。
T:そうですね。毎年子どもが少なくなっていますね。「減っています」は?そうです?
S:減っているそうです。
S:普通形ですか。
T:はい。「そうです」の前は普通形です。
S2:明日は寒い…そうです。
T:はい。普通形、寒いそうです。
S1:はい。風邪です。
T:かぜ・・・?
S1:風邪そうです?
T:普通形です。
S1:風邪だそうです。
ナ形容詞の「だ」を忘れてしまうと様態の「そうだ」になってしまいます。ただ、この段階で様態の話を出すと混乱するので、後でまとめましょう。
◆フラッシュカードで「~そうです」を作る練習
T:台風が来ます。そうです。
S:台風が来るそうです。
T:明日は暑いです。
S:明日は暑いそうです。
T:ペアの人に、自分の町について教えてください。(家族や友達などでも可)
~ペアで話す~
T:じゃ、S1さん。S2さんの町のことを教えてください。
S1:S2さんの町は、人が多くてにぎやかだそうです。
練習B-1
◆「~んですが、~そうです」の形を練習してからキュー出しで練習
T:天気予報を見ました、あさって台風が来ます。天気予報を見たんですが、あさって台風が・・・?
S:来るそうです。
T:天気予報を?
S:天気予報を見たんですが、あさって台風が来るそうです。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)
一文を一気に作るのが難しければ、前件と後件で分けて練習をし、最後に一文にしましょう。また、文が長いので文字でキュー出しをしても良いと思います。
練習C-1
◆例を確認してからペアで練習する
ペアワークのやり方は様々です。まだ文がうまく作れそうにないと感じたら、全体で正しい文を確認してからペアでもう一度練習させてもいいでしょう。また、終わってから教師のキューに続いて全体でリピート練習すると、最後に正しい文を自分の口で練習して終わることができます。
導入:Nによると
固い言い方ですが、レベルがあがってレポートを書くようになったときに必ず必要になる表現です。
T:さっき、S3さんは日本人が減っていると言いました。何でそれを知りましたか。
S:ニュースを見ました。
T:そうですか。ニュースで聞きました。ニュースによると、日本の人口は減っているそうです。
T:この「によると」は、話すときにはあまり使いません。でも、レポートを書いたり、スピーチをしたりするときに使います。それから、ニュースでもよく使っています。
練習B-2
◆拡大した絵を用いて行う
T:実験はどうでしたか。(例の絵を見せる)これは昼のニュースです。昼のニュース・・・
S:昼のニュースによると、失敗したそうです。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)
練習B-3
◆例を確認してからペアで練習する
「それで~んですね」は、今まで疑問に思っていたことが相手の発話によって理由付けられたことを示す言い方です。まずはこの意味を確認してから練習に映りましょう。「それで」は28課で理由を述べる表現として学習済みです。
直前・予想・様態の「そうだ」と伝聞の「そうだ」まとめ
伝聞の「そうだ」が一段落ついたところで、43課の「そうだ」との違いを明確にしておきましょう。
◆絵や写真を見せてどちらを使うか考えさせる
T:(女の人二人が話している絵を見せる)天気予報によると、雨がふ・・・
S:降るそうです。
T:いいですね。じゃ、これ。(暗い空の写真を見せる)この空を見ました。雨が・・・
S:降りそうです?
T:そうです。覚えていますか。43課で勉強しました。
あめが ふり そうです。(そらをみて、かんがえました)
T:「そうです」の前の形が違いますね。ニュースでみました、は普通形。そらをみて考えました、はマス形。これを間違えると、全然違う意味になりますから気を付けましょう。
T:じゃ、これは?(女の人二人が話している絵を見せる)ニュースによると、明日はあつい・・・
S:暑いそうです。
T:(暑そうな男の人と、女の人がそれを見ている絵)女の人は考えます。男の人は・・・
S:暑そうです。
あつ そうです。(おとこのひとをみて、かんがえました)
S:元気だそうです。
T:(入院しているが元気そうな男の人の絵と、女の人がそれを見ている絵)男の人は・・・
げんきそうです。(おとこのひとをみて、かんがえました)
絵を見てふたつの「~そうです」の文を作る練習。『文型練習帳』p.138などが使える。
◆練習問題
答えと解説はこちら↓
練習A-2:~ようです
「~ようです」は、自分の『五官』を通して主観的に、総合的に捉えた『その場の状況』に基づく推測を述べるときに使います。主観的ではあるものの根拠があるため、確度は高い推測と言えます。
導入
(Tがトイレへ行きたそうなジェスチャーをする)
S:先生、トイレへ行きたいですか。
T:え、どうしてそう思いますか。
S:見たらわかります。
T:(人だかりができて、みんながスマホのカメラを掲げている写真を見せる)あれ、これは…どうしてみんなカメラを使っていますか。
S:有名な人がいると思います。
T:そうですね。有名な人がいるようです。
ゆうめいなひとが いる ようです。
T:(人だかりと、救急隊が集まっている写真を見せる)あれ、これは?
S:じこ・・・ようです?
T:はい。事故のようです。
ゆうめいなひとが いる ようです。
じこの ようです。
T:これ、本当に事故ですか。見えますか。
S:いいえ、見えません。
T:じゃ、どうして事故だと思いましたか。
S:医者がたくさんいます。人もたくさんいます。みんな下を見ています。
T:そうですね。みなさんはいろいろ見て、考えました。これは?(有名な人の人だかりの写真)
S:みんなカメラをもっています。有名な人をとりたいと思います。
T:そうですね。有名な人は見えませんが、みんなが写真を撮りたいですから、たぶん有名な人だと思います。このとき、「ようです」を使います。
T:「ようです」の前は?
S:普通形?
T:はい。普通形ですが、な形容詞と名詞の「だ」は、「な」と「の」になります。名詞の前と同じですね。
なぜ「おいしいようです」と言えないのかという質問を受ける事があります。
〇このラーメンはおいしそうです。 43課
×このラーメンはおいしいようです。 L47
「ようです」は、色々な情報を元にして描写する文型です。「そうです」はパッと見た様子からの情報だけで推測を述べる文型です。「おいしいかどうか」は食べないとわからない(味覚)ものなので、「おいしいようです」とは言えないわけです。
◆フラッシュカードで「~ようです」を作る練習
T:事故がありました。「ようです」にしてください。
S:事故があったようです。
T:お祭りです。
S:お祭りのようです。
・・・
◆文作練習
絵を見て「~ようです」の文を作る練習。『文型練習帳』p.139などが使える。
練習B-5
◆拡大した絵を用いて行う
T:(例の絵を見せる)人が集まっています。事故・・・
S:事故のようです。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)
会話形式で行うのが難しそうなので、いったん文作成にとどめていますが、できそうなら会話形式で行ってもよいでしょう。また、練習B-4には「~がします」という別の要素が入ってくるため、後回しにしています。
導入:味・におい・音・声がします
五官で感じたものについて「~がします」という形で表現することができます。
T:(小さくスマホのアラームを鳴らす)あれ?
S:先生、聞こえます。
T:そうですね。なにか音がしますね。あ、すみません、アラームでした。
T:(香りつき消しゴムなど、においのするものを学生に渡す)どうですか。
S:先生、カレーです。
T:そうですね。この消しゴムはカレーのにおいがします。
カレーのにおいが します。
カレーの においが します。
とりの こえが します。
へんな あじが します。
練習B-4
◆拡大した絵を用いて行う
T:(例の絵を見せる)左の人を見てください。変な・・・
S:変なにおいがします。(リピート練習)
T:右の人は考えます。これはなんですか。
S:燃えます。
T:そうですね。ええ、なにかもえている・・・
S:何か燃えているようです。(リピート練習)
(同様に1~4も行う)
「~がします」の練習もかねて、しっかり発話練習しましょう。
練習C-3
◆例を確認してからペアで行う
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