はじめて中級・上級クラスを持つ先生へ

「恐怖は未知からくる」という言葉があります。つまり、「わからないから怖い」のです。今日は初級しか担当したことがなく、中級・上級の授業がどのようなものか未知の状態の方にその授業の内容を紹介します。

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はじめて中級クラスを持つ先生へ

膨大な文型の量

中級はとにかく文型が多く出ます。意味と接続を教え、例文やいつ使うかなどを紹介します。初級もそれは同じなんですが、中級は一つの文型を教える時間が圧倒的に異なります

初級なら何か話題を与え、導入し、こういう風に使うというのを教えてから、意味、接続、練習(FCや機械練習で時間をかけて丁寧にする)を例文を出しながらします。初級の文型一つにかける時間で、中級の簡単な文型なら三つは教えられます。

例文作りの苦労とコツ

大変なのはその文型にピタッとはまる例文作りです。私は毎朝電車の中で例文を考え、メモしています。それぐらいしないと間に合わないぐらい量産しないといけないのです。
例文作りのコツ、と呼べるかどうかわかりませんが、例えば「だからといって」という文型の例文を作る際、インターネットの検索ワードにその言葉を入れると、「だからといって」に続く文がズラーと出てきます。これのいいところは、①その文型を使った自然な文②日本人がよく使う文を一発で見つけられることです。量も多いですし、非常に楽なので、おすすめです。

そして中級は能力試験、留学試験を受験するレベルであるということを忘れてはいけません。文型を勉強しながら、副教材で聴解や読解などもしますが、メインは試験に向けての文型の勉強でしょう。学生も以前に増して、緊張感を持って勉強します。

学生からの質問攻め

中級になると、学生から質問も多くなります。初級ではそもそも質問すらできないか、または比べる程の文型もまだ勉強していません(初級後半はクラスによっては質問が多い)。
しかし、中級になり、既習の文型が増えてくると、「先生、『内に』と『間に』『たとたんに・と思うと・か~ないかのうちに・がはやいか・そばから・なり・やいなや・次第』の違いを教えてください」などという質問が来ます。できるだけ多くの参考書を読み、質問に備えることが大切です。しかし、どの文型とどの文型が似ているのかは日本人ではなかなかわからないので、中級用の参考書を読んでおくといいでしょう。

初級にはない楽しさ

ここまで聞くと、なんだが暗いイメージを持ってしまいそうですが、実際に教室に入るとなかなか楽しいものです。授業が始まる前の雑談、からの導入は初級よりもうまくいきます。前日は「明日は何を話そうかなあ」と考えるのはなかなか楽しいものがあります。

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意見を述べる

それから、初級との大きな違いに「意見を述べる」というのもあります。

 初級:input
 中級:output

初級でも意見を述べることはありますが、中級はさらに深く、討論で相手を説得するやり方や、もう少し高度な話題を用いた作文、小論文の作成、グラフや表の読み取り方に取り掛かります。はじめはやる気のある学生をうまくノせてから、周りの学生も巻き込んで活発なクラス活動を行いましょう。

オーラル練習も忘れず

書いてばかりではありません。口頭練習を怠ると、スピーチなどの発表の場で学生が発話できなくなります。シャドーイングもイントネーションやプロミネンスを学ぶ上で大変効果的な手段です。これらは後述するディベートやディスカッションの技術に繋がります。

長くなりましたが、中級は初級で獲得した知識を使って様々な事を実践する場、ということです。

はじめて上級クラスを持つ先生へ

中級と上級の分け方の定義はしません。上級は上記の事を踏まえた授業をします。つまり、もう上記全ての事がほぼ問題なくできるという事を前提にして授業を行います。

 初級:inputメイン
 中級:outputの場が多くなる
 上級:さらに高度なoutputを行う

高度なoutputとは

具体的には、先述したディベートやディスカッション、プロジェクトワークなどです。中級でもこれらはできますが、中級では細かい間違いなどは気にせず、なんとなくでやってしまう事が多くなるでしょう。厳しくチェックしていたら話し合うどころではなくなり、授業が先に進みません。しかし、それで構わないのです。上級への足場なので。

上級では日本語教育能力検定試験でイヤになるほど勉強したコミュニケーション能力、社会言語能力、受け答え方などにもしっかりと着目させながら授業を行います。

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もちろん文型や読解、語彙などのブラッシュアップを行ってもいいでしょうが、それらは結局一人でもできることなので、せっかく上級まで進級できる能力がある学生です。ぜひ”学校でしかできない事”をやりましょう。

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