教師用メモ
難しすぎる普通形
普通形/体は今まで勉強した4時制の活用などを全て覆す、目ん玉飛び出る難しさで学生を苦しめ続ける。負担が大きいので、文型がない分、活用にとことん時間をかけて、丁寧に教授する
普通形で注意する語
あります、いいです、たいです、できます、来ます、します
これらの語は普通形に変換すると大変形が紛らわしいので、学習者も困惑するもの。念入りに練習する
教案
普通体 動詞文導入
- 教える際の留意点- 1.普通形と普通体の違いには触れない。質問が出れば簡単に。さらに追及されたら下のように説明する。 ご覧の通り、難しくてやる気をなくすので、質問が出たら見せるに留める 2.「丁寧・普通体」が難しいなら、呼び方はなんでもいいが教師間統一しておくのが望ましい。以下呼び方の例
と様々な参考書で目にするが、現場ではやはり「丁寧・普通体」が最も多く用いられている 3.まだ助詞の脱落は扱わない |
◆いつ使うか説明:丁寧体の方の会話を初めにTとS1でする。板書しながら会話
【丁寧体を使う場面】
先生との会話、社長との会話、初めましての人との会話、アルバイトの人との会話
A:昨日宿題をしましたか
B:いいえ、しませんでした
【普通体を使う場面】
友達との会話、家族との会話、日記
A:昨日宿題をした?
B:ううん、しなかった
S:先生、普通形と普通体は何が違いますか
T:普通体と普通形、丁寧体と丁寧形があります。下が普通形です。
丁寧形:書きます 書きません 書きました 書きませんでした
普通形:書く 書かない 書いた 書かなかった
◆FCで変換練習
T:書きます。書く。見ます?
S:見る
◆練習
動詞の普通形を文単位で練習
毎日彼に電話する
普通体の質問
- 教える際の留意点- 1.質問の形を入れてから、会話を作る過程で →うん/ううん 2.イントネーション注意 |
◆人物カードを使って、友達という設定で会話を作っていく
★人物カードの男性と女性をWBに貼る
男:女さんは毎日電車に乗る?
女:うん、見るよ。男さんは?
◆『毎日』と『昨日』で時制を変えて、動詞のFCでキューを出す
T:泳ぎます、毎日?
S:毎日泳ぐ
T:掃除します、昨日?
S:昨日掃除した
毎日掃除する?・毎日宿題をする?・毎日洗濯する?
毎日洗濯する?・昨日学校へ来た?・昨日富士山に登った?・
先週掃除した?・今年日本へ来た?・去年日本へ来た?
◆下の例文を丁寧体→普通体に変える練習
- 昨日ジョギングしましたか
- 昨日朝ごはんを食べましたか
- 今朝新聞を読みましたか
- 今朝勉強しましたか
- 昨日の夜テレビを見ましたか
- 昨日友達と遊びましたか
- おととい雨が降りましたか
- 先週~先生に会いましたか
- 昨日家族に手紙を送りましたか
- 今日友達と遊びますか
- 明日傘を持って行きますか
- 今日は雨が降りますか
- 日曜日10時に起きますか
- 昨日お酒を飲みましたか
- 今晩お酒を飲みますか
- 先週お酒を飲みますか
い形普通体導入
- 教える際の留意点- 1.「あります、いいです、来ます」の変換は紛らわしい。20課に限らず、新しい形が出るたびにこれらの変換は重点的にやる 「あります」:✕あらない あらなかった |
い形容詞の普通形練習
着物は高いです
い形疑問形
- 教える際の留意点- 1.どのタイミングでもいいのだが、「こちら→こっち そちら→そっち あちら→あっち どちら→どっち」について教授する必要がある。 2.「この・その・あの・どの、これ・それ・あれ・どれ」は普通体・丁寧体同じ 3.この画像を見せるタイミングは教師の裁量に任せる。 一番最初に見せて概要説明をしてもいい。また、Naの疑問形は「だ」がないと説明するが、ある場合もある。しかし、それを聞く場面は初級でもあるかもしれないが、使う場面は当分訪れないし、誤用が生まれ、さらに説明は微妙なニュアンスを述べなくてはならないので、「だ」はない!と断言しておいていい |
◆普通形のルールの画像を見せる
適宜見せる
◆会話を完成させる。左の丁寧形が完成したら、右に普通形のを書く
A:日本語は難しいですか➔A:日本語は難しい?
B:いいえ、難しくないです。Aさんは?➔B:ううん、難しくない。Aさんは?
A:難しいです➔A難しい
◆変換練習
T:日本のおかしはおいしいですか。普通形は?
S1:日本のおかしはおいしい?
下の例文で同様に練習
昨日の宿題は難しかったですか
日本料理でなにが一番おいしいですか
このクラスでだれが一番背が高いですか
T:普通形は、「どちら」は「どっち」になります。
こちら→こっち そちら→そっち あちら→あっち どちら→どっち
T:日本語は難しい?
S:うん、難しい
T:英語も難しい?
S:うん、難しい
T:日本語と英語とどっちが難しい?
S:日本語の方が難しい
T:(日本と中国の地図を見せて)大きい、質問は?
S:日本と中国とどっちが大きい?
T:どっち?
「バスと電車とどちらが安いですか」「そちらに置きました」
「お茶とジュース、とちらがいいですか」「こちらへ来てください」
「日本語と英語とどちらがおもしろいですか」「日本と中国とどちらが暑いですか」
「ビールとワインとどちらがいいですか」
※この・その・あの・どの、これ・それ・あれ・どれ ←普通体・丁寧体同じ
T:この、や、これ、どれ、どの、はそのままです。
T:この車は速いです。普通体は?
S:この車は速い
◆ディクテーションや口頭で練習。丁寧形→普通形
「アパートは広いですか」
- 「学校は楽しいですか」
- 「アルバイトは忙しくないです」
- 「アルバイトは忙しかったですか」
- 「日本の物価は安いですか」
- 「家は学校から近いですか」
- 「日本の夏は暑くなかったですか」
- 「今眠いですか」
- 「野菜は体にいいですか」
- 「そちらは危ないですか」
- 「野菜は体にいいですか」
Na普通形導入
- 教える際の留意点- 1.学習者がよくする間違いが「元気か?」というもの。間違いとは言えないが、学習者、しかもこの段階では「だ」はない!と断言しておいていい |
導入・練習
S6:うん、ハンサムだ
T:~先生はきれいですか
S7:~先生はきれい?
S8:うん、きれいだ
T:~先生が嫌いですか
S9:~先生が嫌い?
S10:ううん、嫌いじゃない
下の例文で同様に練習
- 仕事は大変でしたか
- 日本の電車は便利ですか
- ~の友達は親切ですか
- 先週は暇でしたか
- あなたの町はにぎやかでしたか
- あなたのお母さんが好きですか
- お金は大切ですか
- ~語は簡単ですか
Naの「だ」の脱落 逆接の「が」を「けど」に変換
- 教える際の留意点- 1.ダは語調が強くなるため、論文などによく使う。会話ではあまり使われない 2.終助詞「ね」「よ」紹介(普通形の形が定着してきたこのタイミングが望ましいが、上クラスならば最初の方で出してもいい) |
◆人物カードを使って、友達という設定で会話を作っていく
★人物カードの男性と女性をWBに貼る
男:明日はひま?
女:うん、ひま
T:「Naだ」は会話であまり使いません。ダヨは使いますが、ダだけは、作文で使います。
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T:おいしいですが、高いです。普通体は何ですが
S:おいしいが、高い
T:そうです。しかし、会話は、ケドを使います
おいしいけど、高い
T:近いですが、高いです、は?
S:近いけど、高い
T:好きですが、高いです
S:好きだけど、高い
◆応答練習
T:日本の食べ物は好きですか。普通体を言ってください。S1さん
S1:日本の食べ物は好き?
T:S2さん
S2:うん、好き
T:ううん
S2:ううん、好きじゃない
T:~さんの町はにぎやかですか
S3:~さんの町はにぎやか?
S4:うん、にぎやか。ううん、にぎやかじゃない。
下の例文で同様に練習
- 週末は暇でしたか
- 日本の電車は便利ですか
- 日本語が上手ですか
- アパートは静かですか
- きのうの試験は簡単でしたか
- 宿題は大切ですか
Nの普通形導入
T:な形の普通形は、元気だ、元気だった。名詞は、例えば学生です。普通
形は学生だ。学生じゃない。学生だった。学生じゃなかった。Naと同じです
T:今日は雨です 雨じゃありません 昨日は雨でした 雨じゃありませんでした
◆変換練習
T:雨です。雨だ。学生です?
S:学生だ
全Sでこれを10回程繰り返し、各Sにあてていく
T:雨じゃありません。雨じゃない。学生じゃありません?
S:学生じゃない
全Sでこれを10回程繰り返し、各Sにあてていく
T:雨でした。雨だった。学生でした?
S:学生だった
全Sでこれを10回程繰り返し、各Sにあてていく
T:雨じゃありませんでした。雨じゃなかった。学生じゃありませんでした?
S:学生じゃなかった
全Sでこれを20回程繰り返し、各Sにあてていく
◆応答練習
T:きのうアルバイトでしたか。普通体は?
S:きのうアルバイトだった?
T:きのうアルバイトだった?S1さん
S1:はい、アルバイトだった
T:はい?
S1:うん、アルバイトだった
T:S2さん、ここは菊川ですか
S2:ここは菊川?
S3:うん、ここは菊川だ
T:これはどこのワインですか
S4:これはどこのワイン?
T:イタリアです
S5:イタリアのワインだ
◆下の例文で同様に練習
- いい週末でしたか
- すき焼きは日本の食べ物ですか
- これは新しいノートですか
- ~さんはアメリカ人ですか
T:山田さんはサラリーマンです → 山田さんはサラリーマンだ
今日はテストです
彼はアメリカ人です、
ここは区役所です
寿司は日本の料理です
今12時です
◆練習。Na普通形
今日は暇です
普通体 後続句を用いた文型
- 教える際の留意点- 品詞だけでなく、「ことができます・なければなりません」などの普通形もこれ以降たくさん使うので、しっかり教授。 |
◆導入・練習
まずはそれぞれの文型の普通形の形を板書しながら、確認する
T:のみたいです。普通形はのみたい(?)
T:のみにいきます。普通形はのみに いく(?)
T:かいて ください。普通形はかいて
T:かいて います。普通形はかいて いる(?)
T:かいても いいです。普通形はかいても いい(?)
T:いかなければ なりません。普通形はいかなければ ならない(?)
T:いかなくても いいです。普通形はいかなくても いい(?)
T:泳ぐことが できます。普通形は泳ぐことが できる(?)
T:よんだことが あります。普通形はよんだことが ある(?)
T:よんだり、かいたり します。普通形はよんだり、かいたり する(?)
(?)は質問の形板書にはそのまま(?)と書く
◆変換練習
T:私はジュースが飲みたいです。私はジュースが飲みたい。京都へ行きたいです
S:京都へ行きたい
T:京都へ行ったことがあります
S:京都へ行ったことがある
T:京都へ行かなければなりません
S:京都へ行かなければならない
T:京都へ行かなくてもいいです。S1さん
S1:京都へ行かなくてもいい
T:学校へ来なくてもいいです
S2:学校へ来なくてもいい
T:テレビを買ってください
S3:テレビを買って
T:日本語を教えてください
S4:日本語を教えて
T:見たことがありません
S5:見たことがあらない
T:ありません、の普通形は何ですか
S:ない
T:そうです。ですから見たことがありませんは?
S5:見たことがない
T:飲みに行きます
S6:飲みに行く
T:食べに行きます
S7:食べに行く
同様に、他の動詞も丁寧体→普通体を練習
T:読んだり書いたりする。読んだり書いたりします。丁寧体を言ってください
T:書いている
S:書いています
T:読んでいる
S:読んでいます
T:遊んでいる。S1さん
S1:遊んでいますか
T:買い物したり、食事したりします
S2:買い物したり、食事したりする
同様に、他の動詞も普通体→丁寧体を練習
◆応答練習
T:~さんはジュースが飲みたいですか。ジュースが飲みたい?京都へ行きたいですか
S:京都へ行きたい?
T:新宿へ行ったことがありますか
S:新宿へ行ったことがある?
T:どうですか
S:うん、行ったことがある
T:学校へ行かなければなりませんか
S:学校へ行かなければならない?
S:うん、いかなければならない
T:学校へ行かなくてもいいですか。S1さん
S1:学校へ行かなくてもいい?
S2:ううん、学校へ行かなければならない
T:学校へ来なくてもいいですか
S2:学校へ来なくてもいい?
S3:ううん、来なければならない
T:~先生を見たことがありますか
S5:見たことがある?
S6:うん、見たことがある
T:ううん
S6:ううん、見たことがない
T:今晩飲みに行きますか
S7:今晩飲みに行く?
S8:ううん、飲みに行かない
T:今晩食べに行きますか
S9:今晩食べに行く?
S10:うん、食べに行く
同様に、他の動詞も丁寧体→普通体を練習
T:読んだり書いたりする。読んだり書いたりします。丁寧体を言ってください
T:書いている?
S:書いていますか
T:読んでいる?
S:読んでいますか
T:遊んでいる?S1さん
S1:遊んでいますか
T:買い物したり、食事したりする?
S2:買い物したり、食事したりします
同様に、他の動詞も丁寧体→普通体を練習
◆RP
T::学生
S:先生
T:私は学生です。皆さんは先生です。
T:すみません、先生。宿題を忘れました。
S:明日持ってきて/今書いて/今日持ってこなければならない
T:先生、トイレへ行ってもいいですか
S行ってもいいよ/行ってはいけない
◆役割を逆に。T:先生 S:学生
T:今晩何をする?
S:今晩宿題をします
T:昨日どこへ行った?
S:新宿へ行った
◆最後にTがSに役を与えて、ロールプレイさせる
T:S1さんは先生。S2さんは学生。明日はたらかなければなりませんか。先生、どうぞ
S1:明日働かなければならない?
S2:はい、働かなければなりません
T:何時に終わりますか
S1:何時に終わる?
S2:9時に終わります
◆活動『今度遊ばない?』

考察
格助詞の省略について
話し言葉においては、「たばこ買ってきて」のように格助詞の省略がよく見られます、注意すべき点があります。
全ての格助詞が話し言葉において省略されるわけではない
「が」「に」「を」「で」の中で「で」のみが『話し言葉において』省略されない
省略可能なもの「が・に・へ・を」
- A:誰(が)行く? B:私(が)行くよ。
- A:どこ(に/へ)行くの? B:ちょっとスーパー(に/へ)行ってくる。
- A:今何(を)してる? B:日本語(を)勉強してるとこ。
省略不可なもの「で・から・まで・と・より」
- A:学校勉強している。(「で」の省略は不可)
- 3時勉強する。(「から」なのか「まで」なのか、または「に」なのかわからない)
- 彼会う。(「と」なのか「に」なのかわからない)
- XさんはYさん背が高いです。(「より」の省略は不可)
「に」の【時】の用法は省略不可だが、【場所】は可能。
格助詞が省略されても文の意味に支障は生じない
動詞のタイプによって格助詞の組み合わせが決まるから
格助詞の省略はそれ以外の言語現象との関わりが認められる
目的語に助詞「も」をつけると、下のように「を」が消える
- 本を買った→本も買った
助詞
日本語学習者が苦労させられる文法形式に助詞がある。それぞれがいろいろな用法を持つのだが、何より先に彼らが学ぶのが「場所」を表す用法である。
まず、「教室にいる」と「教室で勉強する」では、同じ場所を表すのに助詞が異なっている。つまり、「に」は存在の場所であり、「で」は動作の場所を表す。
僕と自分だけ
道で迷子になった男の子に声を掛ける時に言う言葉
「僕、迷子になったの?」
日本語はIを表す人称名詞が多くあるが、本来”I”で使われる人称名詞を”YOU”として使う場合がある。これは「僕」以外の他の人称名詞でも言えるのか。
×私・俺・拙者・うち・小生・わし・吾輩・おいら
〇僕・自分・我
ちなみに、Iを表す名詞以外の人を表す言葉でYOUが言えるか考えてみる。
〇娘・ガキ・坊主・(お)兄/姉ちゃん・(お)父/母さん・そこの男/女
×弟・妹・男・女・大人・中年・アラサー・未成年・成年・青年・彼・彼女・彼氏・彼ら
弟と妹は「あなたの」をつければ使える。男と女も「そこの」をつければ使えるが、単体だと使えない
格助詞の省略についてはこちらでさらに詳しく解説しているので、ご覧ください。

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