グーグルフォームを使った添削自動化の実施例┃実践報告と問題例

教育機関で日本語を教えていれば、テストとその添削は避けては通れない道でしょう。思考錯誤してテスト問題を作り、カンニングに厳しく目を光らせた後、待っているのは大量の添削・採点…。
そんな日々に追われていたとき、グーグルフォームを使って添削が自動化できる、ということを知りました。

これは簡単にいえば、問題と選択肢をグーグルフォームに入力しておき、学生に解答用紙として使ってもらうことで、正誤判断や点数計算が自動でできる、というものです。

グーグルフォーム自体、アンケートに答えるときに何度か使ったことがある程度で、パソコンにもそんなに詳しくない私にできるかな、と最初は不安でした。しかし、noteを購入させていただいたところ、カキアゲ先生が実際の画像を使って丁寧に説明してくださっていて、その通りにやってみたら本当に簡単にできました。

ここでは、実際に私がグーグルフォームを使ったテストをどのように行ったか、注意点や感想などをご紹介します。

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使用クラス

私がグーグルフォームを使ったテストを実施したクラスは全部で4つあります。
すべてJLPT対策クラスで、クラスサイズは5~20名程度です。

なお、私が実施したのはすべて「聴解」問題の小テストです。
のちに詳しく述べますが、どうしても学生自身のスマートフォンを使ってもらう必要があるため、私自身が不慣れなうちは、聴解問題以外はカンニングへの対処が難しいと判断したためです。小テストに限ったのも同じ理由です。
カキアゲ先生は色々な策を講じてカンニングへの対処をしておられ、そのノウハウもnoteで明記してくださっていますので、今後さまざまなテストでも実施できたらと思っています。

ちなみに、聴解のテストにおいては、テスト中に言葉の意味を調べるなどの行為は見られませんでした。そんなことをしていたら、大切な問題を聞き逃してしまいますね。

メリットとデメリット

メリットは大きくわけて2つあります。

  1. 添削・採点の必要がない
    本当に0です。模範解答を見ながら一つ一つチェックする必要はありません。ミスもありません。添削・採点にかかる時間も、点数を計算する時間も0秒です。
    また、添削・採点されたデータをExcel等でダウンロードすることもできます。

  2. その場で問題ごとの正答率や学生の答えがわかる
    これは解説の時に役立ちます。間違いが多かった問題・選択肢が一目でわかるので、解説のポイントがつかめます。

デメリットは以下の2つです。

  1. 自由記述の添削は難しい
    機能上、自由記述をさせることはできますが、その正誤判断まで自動化するのは難しいです。学生によっては日本語の入力が難しいという場合もあるので、避けた方がいいでしょう。

  2. 厳しいカンニング対策が必要
    上でも述べましたが、スマートフォンを使わせる以上、カンニングの危険は常にあります。しっかりとした対策が必要です。
どんな力をどうやって測りたいのか、それによってグーグルフォームの向き不向きが変わります。教師側が測りたい力に向いていると思えば、グーグルフォームはとても有用な方法です。

テスト作成から終了後の処理までの流れ

では、私が実際にどのようにテストを作成し、実施し、添削・採点されたものを処理したのか、まとめます。

テスト作成

グーグルフォームを使って、テストを作っていきます。詳しい作り方は、こちらをご覧ください。

問題文に注意点を加えたり、問題ごとに画像を挿入したりすることもできます。もちろん、配点も自由に設定できます。私は以下のような自分にあったフォームを作りました。

  1. クラスごとに色を変える
    「テーマをカスタマイズ」というところで色を変えられるので、間違えないようにクラスごとの色を決め、使い分けていました。

  2. テストは全2ページ
    フォームの1ページ目に学籍番号や名前を入力する箇所を、2ページ目に全ての問題の答えを入力する箇所を設置しました。これは、学生が間違って「次へ」のボタンを押してしまったり、途中でフォームが読み込めなくなってしまったり、というトラブルを防ぐためです。

  3. 学籍番号や名前は「必須」、問題の答えは「必須ではない」
    入力する箇所は、「必須」に設定することもできます。必須に設定すると、何かしら入力しないと次に進んだり送信したりできない仕組みになります。ということは、問題の答えを必須にしてしまうと、学生の「解答し忘れうっかりミス」を未然に防いでしまうことになるのです。後述しますが、私のクラスでは紙の解答用紙を使用している学生もいたため、不公平にならないよう、このような設定にしました。

ちなみに、学生が解答後に正答などを参照できるようにすることも可能ですが、私はしませんでした。

テスト実施

テスト当日は、学生にスマートフォンからグーグルフォームにアクセスし、答えを入力して送信するよう伝えます。あとは、紙の場合と同じように、テストを実施するだけです。

グーグルフォームのアドレスはURLで提示することも可能ですが、私はQRコードを使用しました。URLをQRコード化し、プロジェクターなどで映して学生にスマートフォンで読み取ってもらいます。

なお、テストの問題・選択肢は全て紙でも配布しました。スマートフォン上ではメモを取ることが難しく、また文字の折り返しが多くなってしまい、読みにくいためです。テスト中は紙で解いて、テストが終わってから答えをフォームに入力する学生もいました。

注意点として、送信までの時間を与えすぎるとカンニングやおしゃべりの隙を与えることになるので、「テスト終了後60秒以内に送信すること」等の指示をしておくと良いです。

テストの解説

メリットの2.でも述べましたが、グーグルフォームは学生が解答を送信した瞬間に、全ての学生の答えをグーグルフォームの管理画面で確認することができます。答え合わせをしながら間違いの多かった問題・選択肢を確認し、その問題だけ解説をするようにしました。私は以前からテスト終了後すぐに解説をしていましたが、この機能のおかげで解説が効率よくできるようになりました。

テスト終了後の処理

メリット1.で述べたように、添削・採点は自動でしてくれます。あとは、添削・採点されたデータを処理するだけです。処理の仕方は学校ごとに違うので一概に言えませんが、私は小テストの点数のみ必要だったので、添削・採点されたデータをExcelでダウンロードし、学籍番号でソートするなどして処理していました。

このように、学生が入力した情報がすべて一覧でダウンロードできます。
左の「タイムスタンプ」というのは、学生が解答を送信した時間です。システム上、何度も送信が可能なので、同じ学生から複数の送信があった場合は、タイムスタンプが早い方を有効解答として扱いました。

問題のサンプル(日本語教育能力検定試験)

カキアゲ先生の【模擬試験】日本語教育能力検定試験対策室 -勉強法-より問題をお借りし、私が実際に使っていたテストとほぼ同じ形式でグーグルフォームのテストを作成してみました(問題使用の許可を頂いています)。このようなテストが出来上がるんだ、といった参考になれば幸いです。

PCで当ページをご覧の方は、以下のQRコードをスマートフォンで読み込んでテストにアクセスすることも可能です。ぜひお試しください。

注意点

カンニングについてはすでに述べましたので、ここではスマートフォンを使えない学生がいた場合について触れておきます。

当日スマートフォンを忘れてしまう学生もいるでしょうし、個人のスマートフォンを学校のテストに使用するのを嫌がったり、速度制限でインターネットに繋がりづらかったり、さまざまな学生がいます。そのような学生に使用を無理強いしたくはなかったため、私は必ず紙の解答用紙も準備し、希望する学生にはそちらを使ってもらっていました。

大切なのは「フォームに入力し送信してもらうこと」ではなく、「テスト問題に解答してもらうこと」です。

感想

ここまで様々なメリットやデメリット、使い方などを紹介してきましたが、とにかくグーグルフォームを使った添削自動化は「簡単!楽!です。慣れれば10分程度で問題を作成でき、今まで添削・採点、点数の計算、Excelへの入力…と時間がかかっていた作業が一切なくなりました。今回はクラス人数が最大でも20名程度でしたが、以前40~50名規模のクラスを持っていたこともあるので、その時に知っていれば…と思うばかりです。

日本語教育で行われるテストすべての添削・採点を自動化するのは難しいです。しかし、一部でも自動化できれば、その分、教材研究や授業準備に充てる時間が増やせます。使い方を見極めればとても有用な方法ですので、添削・採点に時間を取られている方にはぜひ、試してみてほしいアイディアです。

⇒ 添削自動化!グーグルフォームを使って、試験や宿題の添削を完全に0にする方法

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