並列助詞の「と」 【総記】
目前、または話題のものを全て挙げる。
- はさみとペンがある。
- 球技ではサッカーと野球が好きだ。(サッカーと野球のみ)
並列助詞の「も」 【累加】
あらかじめ挙げようと思っていたものを挙げていき、最終的に全て挙げる。
- 田中も鈴木も川口も試験に受からなかったって。(受験したのは3人、他にはいない)
この「も」は“全て”挙げるのが正式な用法だが、実際に、必ず“全て”挙げるとは限らない。
- DVDもブルーレイも、素人目には大差ない。
映像を記録する媒体は他にもある、つまり、“全て”挙げていない。話者が単にDVDとブルーレイしか選択肢がない、と考えることもできる。
並列助詞の「に」 【加算】
足し算のことで、次々に思いついたものを加えていく。基本的にこの「に」を用いる場合は全て挙げないが、最終的に全て挙げる場合もある。
- 語学にアニメに料理にと、彼の趣味は他にも様々あるらしい。(他にも趣味がある:全て挙げていない)
- 授業参観で教師は、生徒にその親にと気を配らなければならない。(授業参観には教師と生徒、その親しかいない:全て挙げている)
並列助詞の「か」 【選択】
挙げるものは2つ、そのどちらか1つを選ぶ用法。
- 晩ご飯、寿司かラーメン、どっちがいい?
- 山に行くか、海に行くか決めよう。
- 終電で帰るか、始発で帰るか、まだ迷っている。
並列助詞の「や」 【例示】
目前、または話題のものを代表的なものだけを挙げる。「例えばXやYなど」と言いたい時に用いる。全て挙げない。
後ろに「~など/なんか」などがよく併用される。また、Yは必須である。
「と」同様、初級で学ぶ並列助詞である。
- はさみやペンがある。
- 球技ではサッカーや野球(など)が好きだ。(サッカーと野球の他にも好きなものがある)
並列助詞の「とか」 【例示】
「例えばXやYなど」と言いたい時に用いる。全て挙げない。
後ろに「~など/なんか」などがよく併用される。また、Yは必須ではない。接続は引用節と同じ。
- マクドナルドとかKFCとか、ファストフードばかりだと体を壊すよ。
- あれとかこれとかじゃわかんないだろ。
- やめろとかやれとか、いったいどっちなんだ。
並列助詞の「だの」 【例示】
「例えばXやYなど」と言いたい時に用いる。全て挙げない。後ろに「~など/なんか」などがよく併用される。また、Yは必須ではない。接続は引用節と同じ。
- 表現の自由だのといった話に繋げるのはおかしい。(Yは必須ではない)
- 無職だの浪人だの言われる。
- マナーが悪いだの気持ちを考えろだのとうるさい。
- ウザイだの迷惑だのと言われる。
「や」「とか」「だの」の違い
後ろが名詞の場合
後ろが名詞の場合、両方接続可能だが、そうでない場合は「とか」が接続可能。
- 部屋にははさみ ( 〇や 〇とか ✕だの ) ペンがある。
- 部屋にははさみ ( ✕や 〇とか ✕だの ) がある。
- 彼は日本語 ( 〇や 〇とか ✕だの ) 英語 を勉強している。
- 彼は日本語 ( ✕や 〇とか ✕だの ) を勉強している。
文中に二回現れる場合
「とか」「だの」が接続可能。
- 部屋にははさみ ( 〇や 〇とか 〇だの ) ペン ( ✕や 〇とか 〇だの ) がある。
- 彼は日本語 ( 〇や 〇とか 〇だの ) 英語 ( ✕や 〇とか 〇だの ) を勉強している。
ポジティブかネガティブか
上の「だの」の例文で違和感を持った日本人もいるのではないだろうか。これは「だの」が持つ「ネガティブな言葉と接続しやすい」という性質から生まれるものだ。
- 君は料理に塩 ( 〇や 〇とか ◎だの ) 醤油 ( ✕や 〇とか ◎だの ) 入れすぎだからこんなにまずいんだよ。
話者のネガティブな気持ちが文中の「まずい」から前面に表れているが、このような文の場合、「だの」がより自然。
接続
「や」は名詞のみとの接続を行うが、「とか」「だの」は引用節と同じで、制限がない。
- 部屋にはさみ ( 〇や 〇とか 〇だの ) ペンがある。
- 部長はしろ ( ✕や 〇とか ◎だの ) するな ( ✕や 〇とか ◎だの ) 言う事がころころ変わる。
- 昨晩の火災現場では、逃げてください ( ✕や 〇とか 〇だの ) 水はありますか ( ✕や 〇とか 〇だの ) といった声が響き渡っていた。
最後の火災の例文は違和感があるが、用法の説明のために無理して作った文なので、気にしないように。そして、何事にも例外がある、言語など人によって年代・性別で様々な感じ方があるだろう。「や」が名詞とのみ接続するのが誤りとする人もいるに違いないし、実際に名詞以外で接続されているのもまれに見られるが、日本語学習者がそのようなレアケースを学んでも仕方がなく、さらに名詞以外と接続することも可能だと教えると、だいたい非文ができてしまうので(「や」は初級で学ぶ)、教えるタイミングは考えること。
【例示】の使い方
効率性
挙げたらキリがないという用法で、例示らしい例示の使い方である。
- そのゴミ屋敷にはバナナの皮とかがその辺に落ちていた。
- 並列助詞には「だの」とかいろいろ種類がある
曖昧性
日本人は曖昧な表現を好む。「や」「とか」「だの」は例示の用法を超越した【曖昧性を表す】用法がある。
- A:何悩んでるの? B:仕事とか大変なんだ。
悩みは仕事だけではない。しかし、それ以外についてはあまり言いたくないというニュアンスを持たせることもある。
総記
「や」「とか」「だの」は全て例示の用法であり、それぞれに全て挙げないと明記しているが、全て挙げることも多々ある。
- ① いいとか悪いとかなんとか言ったらどうなの?
- ② 「しろ」だの「するな」だの、部長は朝令暮改がはなはだしいったらない
①いいか悪いかしかない。②するかしないかしかない。
つまり、全て挙げているにもかかわらず、本来全て挙げない使い方をする「や」「とか」「だの」が用いられたもの。
【総記の「と」】と【例示の「や」】の違い
総記は全て挙げ、例示は全て挙げない。
左の画像は
✕ はさみとペンがある。(それら2つ以外にもあるので✕)
〇 はさみやペンがある。(それら2つ以外にもあるので〇)
右の画像は
〇 はさみとペンがある。(それら2つのみなので〇)
✕ はさみやペンがある。(それら2つ以外にはないので✕)
並列助詞とは
並列助詞で代表的なもので「と」や「や」がある。これら2つに見られるように、並列助詞は目前や話題のものを全て、あるいはいくつかを列挙する用法でそれぞれ共通している。
「に」や「だの」「とか」は使用場面を誤ると問題が起こる。特に「とか」は日本人がよく使うため、日本語学習者は気軽に使いがちだ。例えば、謝罪する場面で
- こちらの不注意とかが原因でお客様には大変ご迷惑をおかけいたしました。
と言ったらどうだろうか。「とか」以外はとても丁寧なのに、「とか」1つあるだけで文全体が軽率で失礼な文になってしまうので、使用には注意を要する。
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