直接法による日本語の単語・文型の教え方

「そもそも日本語ってどうやって教えるの?」

直接法で教えます。今回は直接法のやり方を紹介します。

単語の教え方

まずは単語の教授法。いくつか例をとって説明します。

  • 食べる、泣く
  • テレビ
  • 高い

食べる・泣く

「食べる」と「泣く」は動詞です。この動詞を教えるのが最も簡単です。名詞や形容詞と違って実演可能なものが初級なら多いからです。

略称の意味:T(教師) S(学生) G(ジェスチャー)

S:食べますは何ですか
T:(右手で箸を持つG、左手でお椀を持つG、口で音を立てながら食べるG)

教師は一言も喋っていません。というか、喋る必要がないのです。

S:食べますは何ですか
T:食べますはごはんやパンを買いますね。袋を開けて、口の中に入れます。噛みます。飲みます。これを食べますと呼びます。
S:!??

というように、無駄に喋って学生を混乱させるより、Gをする方がいいのです。

教師は喋り過ぎないこと。これは直接法において最も重要なことです。わからない言葉(目標言語)を習得するために勉強しているのです。そのわからない言葉をずっと聞いていると眠くなるか頭がいたくなるか、どちらかの症状を学生が訴え始めます。顔で。具体的に秒数で表すと、症状が顔に出るまでの時間はおよそ5秒から10秒です。10秒は長いのでできれば5,6秒に抑えたいところです。

喋るなという訳ではなく、必要最低限の情報量に抑えようということです。

S:食べますは何ですか
T:食べますは、例えば、ごはんを食べます。パンを食べます。ジュースを?
S:飲みます

例文を用いて教えるのは基本です。ついでに確認問題(ジュースを?の部分)も出すといいでしょう。
同様にして、「泣く」も以下のように簡単に教えられます。

S:泣きますは何ですか
T:(泣くG)。じゃこれは?(笑うG)

言葉は要りません。
ちなみに日本語を日本語で教えることを直接法と言います。学校によっては日本語を学生の言語で教える間接法というものがあります(後述)。

ただ、これら「食べる」「泣く」は簡単な部類です。少し難度が上がると、例えば「結婚する」は簡単そうで難しいです。さらに難度を上げて初級を飛び出せば「判別する」や「(過去を)顧みる」などは動詞ですが、かなり難しいです。
注意しなければならないのが、誤解です。「歩く」は歩くGをしたとしても学生がそれを「移動する」という意味で捉える恐れがあるのです。この誤解を防ぐ方法が具体例を提示することです。

  1. T:歩きます(歩くGをする)
  2. T:走ります(走るGをする)

これで学生の頭から「移動する」という選択肢を消すことができ、ついでに走るという語も教えられます。

テレビ

テレビは名詞です。これも簡単です。初級なら画像で見せられるものがほとんどで、習っていない語(未習語)も画像を見せれば一発です。未習語の扱い方については以下の記事をご覧ください。

未習語が使える条件は2つ

高い

形容詞は難しいです。「おいしい」を表す際に、上述のようにGでやろうとしても

S:おいしいは何ですか
T:おいしいは(右手を頬に当て「ん~~♪」と言いながら恍惚の表情を浮かべ深く息を吸うG)
S:??

そのGを見て推測が当たる学生もいるでしょうが、それを「甘い」「幸せ」などと誤解する学生もいるでしょう。
そして「高い」、これは値段が高いこと、身長が高いこと、気温や可能性、物価、年齢など様々な言葉と一緒に使われます。日本人は気温や年齢に続く言葉が高いだということは簡単にわかるのですが、外国語ではそうはいきません。中国語では「年齢が大きい(高いの意)」と表現するのです。

では、具体的にどう教えればいいかですが、これも動詞「歩く」を教えた時と同様に、比較するものを提示すればいいだけです。「(身長が)高い」を表すのに背が高い学生を一人呼んではいけません。背の低い教師がその学生の隣に並んで

T:〇〇さんは背が高いです。私は背が低いです

と言うことで身長に焦点が当たります。

以上、

  • 食べる、泣く
  • テレビ
  • 高い

について説明をしました。どうでしょうか。日本語教師がいかに落語家であり、女優であり、スポーツ選手かがわかったのではないでしょうか。

ちなみに、上に挙げた「食べる」や「結婚する」「おいしい」などは簡単すぎて意味を聞かれたことはありませんが、説明しやすいようこれらを使っただけなので、あしからず。

文型の教え方

という言い方はあまり好きではないのですが、便宜的に。
文型にはそれを使用するための状況を用意することが必須です。突然教師が話し始め、口頭のみで状況を説明し、そして例文を書く人がいますが、それでは伝わりません。

導入

悪い例。カッコ内は学生の心の声です

T:ここはデパートです(教室じゃん)。何を買おうかな~。あ、あそこにかわいいかばんがあります!(ないよ)すみません、これはいくらですか(誰に話しかけてるの?)。ええ~2万円~?(会話が成立した・・・?)ん~じゃこれをください!

いい例

T:ここはどこですか(と言いながらデパートの写真を貼り、見せる)。
S:デパートです
T:デパートで皆さんは何が欲しいですか(もうこの時点で教室の全員がデパートにいると学生との間で共通認識ができている)
S:かばんが欲しいです
T:じゃどこに行きますか(と言いながらデパート各階の案内掲示板を見せる)

このように、対話でもって授業を進めます。この後機械練習やプリントなどをやるのですが、それについては以下の記事をご覧ください。

授業の基本的な進め方

状況の絵カードでわからせる

この「状況の絵カード(以下、PC)でわからせる」という言葉を本サイトではもうごまんと言っているのですが、それぐらい大事なことなのです。

単語の教え方の項でも述べました、教師が喋り過ぎない。これを達成するために必要不可欠なのがこのPCです。教室という狭い空間を脱出するアイテムがPCであり、学生と教師が今どこにいて、何をしている最中なのか、今から何をし、その目的は何なのか、教師がごちゃごちゃと喋る手間をPCが1秒で代行してくれます

ですます

ところで、この記事に限らずなのですが、当サイトでは初級の授業での教師の話し方が全て「~です」「~ます」になっていることにお気づきになったでしょうか。これは丁寧体と呼ばれるものです。日本語教師でない人にとっては少し異様に映るかもしれません。
なぜこのような話し方をするのかというと、丁寧体で話さないと学習者がわからないからです。日本語は活用が面倒です。

  • 行きます
  • 行って
  • 行けば
  • 行かない
  • 行かれた
  • 行こう

など、他にもありますが、それら活用を習いたての初級では「行かれた」が「行く」の受身であることを理解するのに時間がかかります。だから、基本形(国語文法では「行く」ですが)である「行きます」、いわゆる「ます形」が会話でしばしば用いられるのです。
中級ぐらいになれば丁寧体でなくともわかるのですが、初級の内はこうしないと会話に、授業にならないのです。

間接法

最後に、直接法に対して、間接法というのがあります。この間接法とは日本語学習者に学習者の母語で言語を教えることです。

日本語を日本語で教えることを直接法と呼びますが、この直接法は日本国内では広く用いられています。その理由は様々な国籍の留学生が集まる教室で使える共通語が日本語だからです

間接法は主に国外で用いられており、例えば韓国の日本語学校に集まる日本語学習者は韓国人なので韓国語で教授しても問題ないのです。

機関によっては国内でも日本語を学生の言語で教える場合もあります。学校の学生が単一国籍の場合がそれに当たります。他にも時間のないビジネスパーソンには間接法が用いられることが多いです。

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他にも場所PCを使った”教師が喋らない”授業の展開方法もあります。

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当サイト、管理人による日本語教師養成プライベートレッスンを行っています(skype可)。サイトには載せていないアイディアや教材、文型の違いをお教えしています。詳細はこちら

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