非常勤講師は掛け持ちの方がいいのか、それとも一つの学校で働いた方がいいのか、色々な側面から解説していきます。
メリット
取得経験値の早さと多さ、豊富さ
様々な学校で同時に多種多様な国の学生と、教材、テキスト、環境で教えながら学べる状況に身を置くことは、一つの学校に在籍するよりもはるかに成長が早いです。
給与の交渉機会が増える
日本語教師の給与はどのように上がるのでしょうか。
A『いるだけで上がる』
B『自分から上司に交渉しに行く』
と2パターンに大きく分けられると思います。しかし、これには3つ目の
C『学校を変える際の交渉』
があります。AとBは上がり方が微々たるもので、Bを日本社会において平然とやってのける人は少ないでしょう。そこでCです。前いた学校、または現在在籍している学校の給与は移ろうと思っている学校の人達には伝わりません。
そもそも、AとBは上げるための理由として弱いのです。対してCは明確な根拠(前の学校が〇〇円だったから)があるため、交渉がしやすいという利点があります。
具体的には、現在のコマ給を1800円とします。そして、面接時に希望給与を聞かれるので2000円を提示してみましょう。もちろん、移動先の学校は現在のコマ給1800円を知らないので、模擬授業で満足させられればそれで通ります。
ここで交渉時のコツですが、学校側から「今働いている学校のコマ給は?」と聞かれます。そこで、平然と嘘をつけるかが今後の長い生活が楽になるかの分かれ目です。
学校側もできるだけ安い額で雇おうと探りを入れ、交渉をしてくるのです。バカ正直に1600円と伝え、「じゃ1600円でいいよね?」と買い叩かれる事もあります。面接の時は自分の値段をちゃんと伝えた方がいいです。それでダメなら別の学校へ行くだけ。自分の安売りはしません。
リスク回避
あまりないことですが、学校が潰れてしまう事もあります。最近では留学生の仕事の斡旋などでしょっぴかれるというニュースも聞きます。
その際はこの掛け持ちがあなたを救うことになります。さらに給料未払いや、トップの方針に賛同できなくなった場合も、掛け持ちをしている事ですぐに別の学校に避難する事ができます。
人脈
上のリスク回避に繋がるのですが、複数の学校を掛け持ちしているので知り合う学生の数も教師の数も何倍にもなります。これによる利点は転職、別業種でもいいですし他の日本語学校でもいいのですが、選べる道が多くなり、可能性が広がります。
デメリット
学生の名前
覚えるのが大変です。例えば3つの学校を掛け持ちしているとしましょう。20人×8クラス分の名前、覚えられますか。
そして、覚えられないと学生から批判されます。名前を間違えると「先生ヒドい…」、名前が出てこないと「ええ、まだ覚えられないの先生」、学生に興味がないと思われます。10クラス持っている先生も1クラス持っている先生も同じです。”この先生は名前を覚えない”という事実でしかないのです。
休み時間や授業前などは名前を覚える努力をしましょう。
スケジュール管理
学校を複数掛け持ちするという事は、クラスも多く持つという事ですが、同時にスケジュールもいくつも管理しなければならないという事です。
夏休みや学校独自に設定された休日など、ちゃんと管理しないとダブルブッキングをしてしまいます。A学校が休みだと思っていたら授業があったり、B学校で授業だと思っていたら休みだったり。
やり方
専任によって授業のやり方、進度は違います。学校を2つ掛け持ちしていて、2つともみん日を使っていたとしても、専任が違うので、結局教え方を変えなければなりません。しかも、2つの学校が同じ教材・テキストという可能性はほぼ0です。
一つ極端な例を紹介します。
秋学期、3か月を2つの学校で過ごす
【A学校】
みん日 1課~13課
担当専任:田中
みん日 13課~25課
担当専任:鈴木
【B学校】
みん日 1課~25課
担当専任:木山
みん日 26課~50課
担当専任:金子
A学校とB学校、使用テキストは同じです。しかし、ご覧の通り進度が違います(ちなみにB学校のような進度が早いのはダメな学校です。理由はこちらに書いてます)。そして、担当専任それぞれのやり方に合わせて非常勤は動くので、「慣れるまで大変!」なんて生易しいものではありません。
学校の形態
自分の教え方というのは皆さんそれぞれあると思いますが、概要は専任が決めたものがあります。「ぜーーーんぶお任せします。頑張ってーー」というのは”日本語学校”では少ないでしょう。理由は日本語学校が引き継ぎ主体だからです。
例えば専門学校・大学ならば、それぞれ学生が学ぶ科目(経済、日本語、PCスキル、英語など)があります。ですから、次の人に「ここまで教えましたよ。でもこことあそこを教え忘れました」という連絡をしなくてもいいのです(全ての学校ではありません)。逆に日本語学校はこれが必須であるところが大半です。
つまり、ある程度足並みを揃えなければならず何かミスをすると他の先生に迷惑がかかるのが日本語学校、自分の好きなように担当科目を調理し教え忘れなどのミスも自分でフォローすれば済むのが日本語学校”以外”です。
さて、ではどちらの学校で働くのかですが、給与面では日本語学校の方が劣るでしょう。
しかし、レベルアップするという意味では断然日本語学校の方が優れています。それは、皆でやっているのが日本語学校だからです。専門学校などでは、上記の通り経験が必要な事が多いです。
実際どうなの?
実際掛け持ち生活はどうなのか。
案外いけます。なぜなら非常勤は休みの日は休みだからです。週末はもちろん、GWやお盆、年末、学期末の1~4週間の休みもあります。むしろ、死ぬ気でシフト入れないと一人暮らしは無理でしょう。
ただし!休日に休めると思ったら大間違いです。授業準備に追われる毎日です。特に新人だと全ての教材やテキストが初めてで、授業のやり方もわからないままいきなり週5なんて無理です(まず学校がそんな無茶なシフトを組みません、新人にさせません)。新人はまず一つの学校で週3の半日(午前中/午後だけ)授業と別のアルバイトで糊口をしのぐのが限界です。週5通しは慣れてからがいいでしょう。無理すると私のように入院するはめになります。
非常勤の一人暮らしなら「週5」「通し」で貯金できる程度、実家住まいなら「週5」「半日」で人間らしい生活が送れるでしょう。
非常勤ならば私は強く掛け持ちを勧めたいです。理由は上述の一つ、経験値取得の早さです。それから色々な学校のやり方、先輩教師の教え方、様々なテキストを一気に学べるからです。
授業が上手くなり、経験が蓄積されれば給与も上げられます。ひいては経済的に楽になるのです。




コメント
まったくその通りだと思います。
また、非常勤ですと社会保険にも入れず、全額を自費出費で賄わなければならないですから、一人暮らしでの非常勤は金銭的な覚悟があるか、金銭的に余裕のある方がなるのが良いと思います。