「なり」【N1】
用法
≪接続≫
V辞書形+なり┃以下接続例
V:する+なり
A:なし
Na:なし
N:なし
≪意味・使い方≫
XなりY。
- Xの直後にYをする <no sooner do Y after X>
- Yは、話者にとってマイナスのことが多い
- Yには意志・命令・依頼などは来ない
1.Xの状況・状態のままYに移る、次の行為に移る、といったニュアンスがある
例文
彼は席に着くなり、すぐにスマホをいじり始めた。
彼は授業が始まるなり寝てしまった。
さっきまで降っていなかったのに、家を出るなり降り始めた。
新宿駅に着くなり迷った。
帰宅するなり入浴する。
入荷するなりすぐ売りきれてしまった。
彼は店に入るなりメニューも見ずに注文した。
彼は机に向かうなり寝てしまった。
母親の顔を見るなり娘は泣いてしまった。
観客はその芸人の顔を見るなり笑い出してしまった。
電車のドアが開くなり客が一斉に乗り込んだ。
ごはんを食べるなり彼は家を出て行ってしまった。
類似文型とその違い
「たとたんに」【N3】
「と思うと」【N2】
「か~ないかのうちに」【N2】
「がはやいか」【N1】
「そばから」【N1】
「や否や(やいなや)」【N1】
「なり」を含め、これらはすべて「XたとたんにY」「Xと思うとY」のように使い、「Xの直後にY」という意味を持つ文型で、XとYがほぼ同時に起こることを表します。XとYの主語は同じでも異なっていてもかまいません。
これらの文型は、使う場面やニュアンスが微妙に異なります。
まず、使う場面についてです。「たとたんに」「と思うと」「そばから」は、会話でもよく使われます。「なり」「か~ないかのうちに」は、頻度は高くありませんが会話で使われます。「が早いか」「や否や」はかたい表現、書き言葉として使われますが、「や否や」の方がよく使われます。
次に、それぞれの文型が持つニュアンスです。「たとたんに」は、突然起こったマイナスな変化について言いたいときによく使います。例えば、「彼は就職が決まったとたんに学校を休むようになった」のように使います。
「と思うと」は、XとYが反対の行為である時によく使います。例えば「彼は怒ったかと思うと笑いだした」のように使います。自分のことを言うときには使えません。
「か~ないかのうちに」は、これらの文型の中では一番XとYがほぼ同時であることを強調することができます。例えば、「彼は話を聞き終えるか聞き終えないかのうちに、部屋を出た」のように使います。
「が早いか」は、XとYとどちらが早いかわからない、とYの早さを強調することができます。例えば、「ベルが鳴るが早いか彼は急いでトイレへ走った」のように使います。
「そばから」は、何度XをしてもすぐYになってしまう、というマイナスな繰り返しを言うときに使います。例えば、「大切な話を聞いたそばから忘れてしまう」のように使います。
「なり」は、Xの状況のままYをする、というときに使います。Yは話者にとって望ましくないことが多いです。例えば、「彼は授業が始まるなり寝てしまった」のように使います。
「や否や」は、Xが終わるのを待ち構えていた、というニュアンスがあります。例えば、「彼は授業が終わるや否や教室を飛び出した」のように使います。
このように、これらの文型は全て「Xの直後にY」という意味ですが、使う場面やニュアンスが異なります。まとめると以下の通りです。
- 「XたとたんにY」:突然起こったマイナスな変化<会話◎>
- 「Xと思うとY」:XとYが反対の行為である<会話◎>
- 「XかXないかのうちにY」:XとYがほぼ同時であることを強調<会話〇>
- 「Xが早いかY」:XとYとどちらが早いかわからない<書き△>
- 「XそばからY」:マイナスな繰り返し<会話◎>
- 「XなりY」:Xの状況のままY(話者にとって好ましくない行為)をする<会話〇>
- 「Xや否やY」:Xが終わるのを待ち構えていた<書き◎>
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