『みんなの日本語 初級I 第二版』完全準拠。
導入や練習の仕方、教師として知っておきたい文型のポイントなどを解説します。
学習項目
練習A
1.<場所>へ行きます
2.<手段>で<場所>へ行きます
3.<人>と<場所>へ来ました
4.<時>(に)<場所>へ帰ります
教案
新出語彙
この課では「先/今/来+週/月」や日付など、こまごました語彙がたくさん出てきます。「先/今/来+週/月」は時制に関わってくる言葉なので、確実に覚えさせましょう。日付はなかなか定着しないので、しばらくは毎回の授業で繰り返すなど意識的に定着を図りましょう。
練習A-1:<場所>へ行きます/来ます/帰ります
導入:<場所>へ行きます/練習B-1
◆練習B-1を使って導入する。パワーポイントでアニメーションをつけるとよい
T:(「行きます」の絵を見せて)これはなんですか。
S:行きます。
T:(行き先にスーパーの絵を出し、スーパーを指す)これは?
S:スーパーです。
T:はい。スーパーへ(スーパーを指す)、行きます(人が行くジェスチャー)。
スーパーへ行きます。(リピート練習)
板書は色を変えるなどするとわかりやすいです。板書が大変ならパワーポイントを使うのがおすすめです。
T:(郵便局の絵に変えて)これは?
S:郵便局です。
T:郵便局・・・?(文を作るよう促す)
S:郵便局へ行きます。(リピート練習)
(続けて2~4も行う
導入:どこへ行きますか
◆時計の針を授業終了時間に合わせて、今日どこへ行くか尋ねる
T:〇時です。終わりました。皆さん、銀行へ行きますか。デパートへ行きますか。銀行?デパート?美術館?図書館?どこへ行きますか。
…~へ いきます。
T:S1さん、今日どこへ行きますか。
S1:食堂へ行きます。
T:S1さん、S2さんに。(質問するよう促す)
S1:S2さん、今日どこへ行きますか。
S2:寮へ行きます。
T:寮へ帰ります。
S2:寮へ帰ります。
◆「どこへも行きません」も導入
T:S3さんは今週の日曜日、どこへ行きますか。
S3:新宿へ行きます。
T:S3さん、S4さんに。
S3:S4さんは今週の日曜日、どこへ行きますか。
S4:行きません。
T:どこへも行きません。
S4:どこへも行きません。
「どこへも」は必ず否定形と一緒に使うことを強調しましょう。なお、「どこへも」の「へ」は省略可です。「行きません」が学生から出ない場合は、教師にむけて質問させて、提示しましょう。
◆過去形も導入
T:S5さんは先週の日曜日、どこへ行きましたか。
S5:デパートへ行きました。
T:S5さん、S6さんに。
S5:S6さんは先週の日曜日、どこへ行きましたか。
S6:どこへも行きませんでした。
どこ へも いきませんでした。
場所の絵カードを使った”教師が喋らない”授業の展開方法があります。5課の移動動詞もあるので是非ご覧ください。
練習B-2
◆パワーポイントでAさんとBさんの会話として見せるとわかりやすい
T:(Aさんの上に吹き出しで)今朝どこへ行きましたか。(リピート練習)
(Bさんの上にスーパーの絵を出す)
S:スーパーへ行きました。(リピート練習)
T:(Aさんの上に吹き出しで【せんげつ】)先月・・・?(質問を作るよう促す)
S:先月どこへ行きましたか。(リピート練習)
T:(Bさんの上にアメリカの絵を出す)
S:アメリカへ行きました。(リピート練習)
(続けて2~4も行う)
練習A-2:<手段>で<場所>へ行きます/来ます/帰ります
「手段・方法」を尋ねる言い方は「なんで」と「なにで」の2種類ありますが、ここでは「なんで」で教授します。
導入
◆冒頭で使った「行きます」の絵をもう一度見せる
T:これは?
S:スーパーへ行きます。
T:(バスの絵を「人」と「スーパー」の間に出す)これは何ですか。
S:バスです。
T:そうですね。スーパーへ行きます。バスで、スーパーへ行きます。
T:S3さんは今週の日曜日、新宿へ行きますね。
S3:はい。
T:バスで行きますか。
S3:いいえ。電車で行きます。
T:S1さんは、今日、食堂へ行きますね。バスで?電車で?なんで行きますか。
S1:歩いてで行きます。
T:歩いて行きます。
…でんしゃ で いきます。
…あるいて いきます。
「歩いてで」とならないように注意しましょう。「歩いて」が「て形」であることには触れず、一つの言い方として覚えさせます。
練習B-3
◆パワーポイントでAさんとBさんの会話として見せるとわかりやすい。ペアワークにしてもよい
T:(京都の写真を見せ、Aさんの発話として)なんで京都へ行きますか。(リピート練習)
(Bさんの上に電車の絵を出す)
S:電車で行きます。(リピート練習)
T:(学校の絵を見せる)これは何ですか。
S:学校です。
T:なん・・・?(質問を作るよう促す)
S:なんで学校へ行きますか。(リピート練習)
T:(Bさんの上に自転車の絵を出す)
S:自転車で行きます。(リピート練習)
(続けて2~4も行う)
練習A-3:<人>と<場所>へ行きます/来ます/帰ります
導入
◆冒頭で使った「行きます」の絵をもう一度見せる
T:スーパーへ行きます。(「友達」の絵を見せる)友達と、スーパーへ行きます。
T:S3さんは今週の日曜日、新宿へ行きますね。誰と、行きますか。
S3:友達と行きます。
T:S1さんは、今日、誰と食堂へ行きますか。
S1:ひとり・・・
T:ひとりで行きます。
…ともだち と いきます。
…ひとりで いきます。
学生がよくやる誤用に「ひとりでと」あるいは「ひとりと」がありますが、そうならないように注意しましょう。「歩いて」と同様、一つの言い方として覚えさせます。
練習B-4
◆パワーポイントでAさんとBさんの会話として見せるとわかりやすい。ペアワークにしてもよい
T:(京都の写真を見せ、Aさんの発話として)だれと京都へ行きますか。(リピート練習)
(Bさんの上に友達の絵を出す)
S:友達と行きます。(リピート練習)
T:(美術館の絵を見せる)これは何ですか。
S:美術館です。
T:だれ・・・?(質問を作るよう促す)
S:だれと学校へ行きますか。(リピート練習)
T:(Bさんの上に彼女の絵を出す)
S:彼女と行きます。(リピート練習)
(続けて2~4も行う)
練習A-4:<時>(に)<場所>へ行きます/来ます/帰ります
4課では、「昨日/今日/明日」、「毎朝/昼/晩」、「〇曜日」などの時間の言葉を勉強しました。5課では、これらに加え「先/今/来+週/月」「去年/今年/来年」と「〇月〇日」を勉強します。
導入:〇月〇日
カレンダーを使うなどして、月と日の言い方を練習します。特に日付はややこしいので、何度も繰り返し練習します。「何月」「何日」もあわせて導入しておきましょう。ちなみに、『翻訳・文法解説』の166ページに一覧でまとまっています。
★ポイント
・4時=○しがつ ×よんがつ
・9時=○くがつ ×きゅうがつ
・ついたち~とおか、じゅうよっか、じゅうくにち、はつか、にじゅうよっか、にじゅうくにち
導入:<時>(に)行きます
・〇月〇日 に V。
・〇時 に V。
・〇曜日 [に] V。([に]は省略可)
・来週 V。
つまり、いつを基準とするかで指すものが変わる場合には、「に」がつかないということになります。しかし、それを説明するのは難しいので、「数字がある場合は「に」をつける」と覚えさせるといいでしょう。曜日は個人的な語感では「に」があったほうがなじみますが、『みんなの日本語』ではどちらでも可となっていますので、上の「数字がある場合ルール」で教えてしまっても構いません。
明日は何曜日ですか。
S:土曜日です。
T:そうですね。私は、土曜日、新宿へ行きます。
明日は何月何日ですか。
S:9月8日です。
T:そうです。私は、9月8日「に」(強調)新宿へ行きます。
どようび しんじゅく へ いきます。
9月8日 に しんじゅく へ いきます。
T:S1さんは、新宿へ行きましたか。
S1:はい、行きました。
T:いつ、新宿へ行きましたか。
S2:先週行きました。
練習B-5
◆パワーポイントでAさんとBさんの会話として見せるとわかりやすい。ペアワークにしてもよい
T:(京都の写真を見せ、Aさんの発話として)いつ京都へ行きますか。(リピート練習)
(Bさんの上に【3月3日】を出す)
S:3月3日に行きます。(リピート練習)
T:(東京の絵を見せる)いつ・・・?(質問を作るよう促す)
S:いつ東京へ行きますか。(リピート練習)
T:(Bさんの上に【来週】を出す)
S:来週行きます。(リピート練習)
(続けて1~4も行う)
導入:<時>(に)来ます・帰ります
T:S2さんはいつ日本へ来ましたか。
S2:今年の4月に来ました。
T:S3さんはいつ日本へ来ましたか。
S3:去年の9月に来ました。
T:S4さんはいつ国へ帰りますか。
S4:来年の3月に帰ります。
…ことしの4がつ に きました。
いつ くに へ かえりますか。
…らいねんの3がつ に かえります。
「今年4月」「来年3月」という言い方もできますが、『みんなの日本語』では「の」を入れた形を採用しています。
◆「行きます」「来ます」「帰ります」の違いを、絵などを使って確認
T:(ミラーさんの絵を使って)ミラーさんはアメリカ人です。今年の9月に日本へ来ます。12月に中国へ行きます。来年の3月にアメリカへ帰ります。
練習B-6
◆絵を拡大し、一緒に見ながら行う。学生自身がミラーさんになりきる、またはインタビュアーがミラーさんにインタビューする、という場面を設定するとよい
T:いつ日本へ来ましたか。(リピート練習)
S:去年の9月に来ました。(リピート練習)
T:だれと日本へ来ましたか。(リピート練習)
S:ひとりで来ました。(リピート練習)
(続けて2~4も行う)
まとめ
疑問語と助詞
この課ではたくさんの疑問語と助詞を勉強したので、ここで整理しておきましょう。
1.どこ へ いきますか。
しんじゅく へ いきます。
2.なん で いきますか。
でんしゃ で いきます。/あるいて いきます。
3.だれ と いきますか。
ともだち と いきます。/ひとりで いきます。
4.いつ いきますか。
あした いきます。/どようび いきます。/9月8日 に いきます。
練習B-7
◆予定表を拡大し、一緒に見ながら行う
T:毎朝何時に会社へ行きますか。(リピート練習)
S:7時半に行きます。(リピート練習)
(続けて1~4も行う)
誕生日
T:私の誕生日は10月15日です。S1さんの誕生日はいつですか。
S1:9月20日です。
…〇月〇日 です。
T:S1さん、S2さんに。(質問するよう促す)
S1:S2さんの誕生日はいつですか。
S2:6月2日です。
練習B-8
◆絵を拡大して見せながら行う。日付を隠しながらするとよい。
T:ミラーさんの誕生日はいつですか。(リピート練習)
(【10月6日】を見せる)
S:10月6日です。(リピート練習)
T:やまださんの・・・(質問を作るよう促す)
S:山田さんの誕生日はいつですか。
T:(【3月27日】を見せる)
S:3月27日です。(リピート練習)
(続けて2~4も行う)
活動:誕生日はいつですか
◆有名なキャラクターの誕生日を使って、ペアワークで日付の言い方の練習をする
活動の流れ:
1.キャラクターを8名ほど(仮にa~hとする)用意。Aさんにはa~dの誕生日とe~hの名前、Bさんにはa~dの名前とe~hの誕生日を書いた紙を渡す。
2.「aさんの誕生日はいつですか。」「〇月〇日です。」という会話を繰り返し、情報がわかったら紙にメモする。
3.最後に、Tが1人ずつ指名し、「aさんの誕生日はいつですか。」と聞き、答えてもらう。
用意するキャラクターはなんでもいい(架空でもいい)ですが、おすすめはマンガ『ONE PIECE(ワンピース)』のキャラクターです。公式に設定されている誕生日は読み方が特殊な日のものが多く、日付の練習にうってつけです。キャラクターの名前もカタカナで、読む練習にもなります。
活動:インタビュー
活動の流れ:
1.「いつ日本へ来ましたか」「今週の日曜日どこへ行きますか」などの質問と、答えを書く欄があるワークシートを配布。答えの欄には「わたし」と「 さん」がある
2.まず、質問に対して自分の答えを「わたし」の欄に書く。単語だけではなく完全文で書くよう指示する
3.次に、自分の答えが書き終わった人同士で、インタビューしあう
4.相手の答えを自分のシートに書き込む
5.余裕があれば、「~さんは〇月に日本へ来ました」などと発表させてもよい
教師用メモ
「行きます」と「来ます」(ダイクシス)
「行きます」や「来ます」は、どちらも「A地点からB地点へ移動する」という意味ですが、だれの視点でその行為を説明するかによって使い分けが生じます。つまり、文脈に依って初めて意味の決まる言葉で、これを「ダイクシス(直示)」よびます。
日本語の場合は、話し手の視点で「行く」と「来る」使い分けます。そして、話し手がいる地点から遠ざかる場合は「行く」、話し手の地点に近づく場合は「来る」を使います。
例1)
母「早く来なさい。」(話し手の地点に聞き手が近づく)
子「いま行くよ。」(話し手の地点から遠ざかる)
例2)
君の家に行くよ。(話し手の地点から遠ざかる ※”君”は今家にいてもいなくてもいい)
例3)
A「明日も学校へ行く。」(Aは今学校にいない)
B「明日も学校へ来る。」(Bは今学校にいる)
一方、他の言語では「行く」「来る」に相当する言葉はあっても、使い分けのルールが微妙に異なる場合があります。例えば英語の場合は、話し手と聞き手、双方の視点が置かれている地点を基準に、遠ざかる場合は”go”、近づく場合は”come”を使います。
例1)
母「Come here quickly.」(聞き手がhereに近づく)
子「I’m coming.」(話し手がhereに近づく)
例2)
I will come to your house. (your houseに近づく ※”you”は今家にいる)
「行く」「来る」は基本的な動詞だし簡単でしょ、学生もこんなところで間違えないはず、と思っていると、驚くと思います。このダイクシスの誤用は多いので、注意が必要です。
学生の誤用例:
去年日本へ行きました。
今日学校へ行く時、先生に会いました。
私は明日新宿へ遊びに来ます。
もっとも、この違いについて今の時点でくどくど説明する必要はなく、とにかく「今いる場所から離れる場合は「行く」、今いる場所に近づく場合は「来る」をつかって説明する」ということがわかってもらえれば大丈夫です。
同様に学生がつまずくものに「貸す」と「借りる」があります。これは14課を参照してください。
「なんで」と「なにで」
通常、「何」は後ろに「タ行・ダ行」がつくと「なん」と読む、というルールがありますが(詳しくはこちら)、「何で」は「なんで」とも「なにで」とも読める特別なケースです。
『みんなの日本語』では、ルールにのっとり「なんで」を使っていますが、これは「手段や方法」のほかに「理由」を尋ねる用法でもあります。
知りたがる学生がいれば、「なんで」には2つの用法があること、紛らわしいので「手段や方法」は「なんで」、「理由」は「どうして」という言葉もあることを教えてあげるといいでしょう。
授業に役立つ資料
時間を表す言葉のまとめプリントです。ご活用ください。
助詞
この課では、たくさんの助詞が出てきました。助詞の使い方・用法、説明の仕方などを画像でわかりやすく説明したページを作ったので、ぜひご覧ください。画像はそのまま授業で使えるので、ご活用ください。
コメント