私:A先生、たら・と・ばの違いって知ってます?
A先生:ああ、何となくね。でも知らなくてもいいんですよ
私:どうしてですか
A:私はもう上級しか教えませんから
知りたがっているのに教えない
ある学生がA先生にたら・と・ばの違いを質問していたのを聞いて、もしやと思い尋ねてみました。下はその時の学生とA先生の会話です。
S:A先生、「たら」と「と」と「ば」の違いは何ですか
A:それはね、あなたにはまだ早いから知らなくてもいいの
S:でも・・・知りたいです
A:まだあなたには理解できないからいいの
S:・・・
私:(ええ・・・)
「たら・と・ば」とは
「たら・と・ば」といえば、使う言葉の意志性や状態性が深く関わる初級の難関です。一般的には「たられば」と言われ、「たらればの話はするな」のように使われますが、日本語教育ではこれに「と」が加わります。
以下のような文がたら・と・ばを使った文です。誤用も混ぜておきました。
- 駅に着くと、電話してください
- 歩いて行ったら、1時間かかります
- 暇だったら、手伝ってください
- 駅に着けば、電話してください
- お金があれば、買うつもりです
初級を2周もすれば説明できるようになる教授事項(本来は教師になる前に知っておくべきことですが)です。
仮にA先生がたら・と・ばの違いを知っていて、学生のレベルを鑑みてあえて教えないという選択をしたとしたら、なおたちが悪いです。
教えないケース
教えるかどうかが分かれる教授項目があります。たら・と・ば3つをまとめて教えるというのもその一つです。しかし、教えるかどうかを判断するのはクラス単位で行います。なぜならクラスは玉石混交、いくら試験でレベル分けしても、それを理解できる人とできない人がいるからです。
今回の場合、質問に来たのは1人です。「先生に聞いたらこの違いを説明してくれる!」とやってきたのです。そんな学生に対して「あなたにはまだ早い」と一蹴する教師は果たして教師なのでしょうか。
困るという状況に至る“過程”には準備不足という“段階”があります。A先生はおそらく困ることをやめ、ごまかすという手法でこれまでやってきたのでしょう。
信頼される教師とは
ずっと上級にいること、初級にいること自体は別にいいんです。適材適所、向き不向きがあるのですから。しかし、「だから教えていないレベルの知識を知る必要はない」とは決してなりません。
上級をずっと教えてしまっていて、初級の教授事項に疎いという方は意外と多いです。そして、皆A先生と同じことを言うのです。
「大丈夫ですよ。私はもう初級を教えませんから」
何が大丈夫なのかさっぱりわかりません。初級の大切さは以下の記事でも書きましたが

最初に上級に配置される不幸な教師も確かにいます。A先生ももしかしたらそうなのかもしれませんが、上級を教えていても、初級の基本的な教授事項ぐらい把握しておくべきです。
常に知らないことを減らしていく努力ができる人が信頼される教師なのではないでしょうか。
コメント
こんにちは。よく読ませていただいています。ありがとうございます。
少し、言葉の使い方で気になることがあります。「学生のレベルを鑑みて」とおっしゃっていますが、この場合の「鑑みて」はどういう意味でしょうか。「を鑑みて」はよく使われるのでしょうか。