「教材分析」とは何か。見るポイントと教授項目の取捨選択

教材を分析しろ分析しろとよく聞きますが、何のこっちゃわかりません。

本記事では具体的に何が分析と呼ばれる行為なのかを【~方がA(adjectiveの略)です】を例に取り解説します。対象のテキストと範囲は、みんなの日本語初級2版の1課~50課(以下、みん日と表記)と、できる日本語の初級と初中級と中級(以下、でき日と表記)です。

【形容詞+方がAです】の扱いについて

みん日もでき日も、【形容詞+方がAです】という形は扱っていません。例文を一つ示します。

質問 :傘は赤いのと青いのと、どちらが好きですか。
答え1:赤い方が好きです。
答え2:赤い傘の方が好きです。

上の答え1、「赤い方が~」という言い方はテキストには載っていません。答え2の言い方で教えます。つまり、【形容詞+方がAです】を【名詞+の方がAです】として提出しなければなりません。

ちなみに、比較はみん日ならば12課で、でき日なら初級6課「~のほうがAです」で教えます。でき日は12課で「Vた方がAです Vない方がAです」がありますが、これは比較ではなく、提案の用法です。
両者とも【形容詞+方がAです】はありません

本冊にないから教えなくてもいいのか

では、テキストにない形、【形容詞+方がAです】を教えてもいいものでしょうか。また、動詞との接続【動詞+方がAです】はどうでしょうか。

テキストの意図を考える

みん日もでき日も提案としての「Vた方がAです Vない方がAです」はありますが、比較表現としてはありません

【提案】
病院へ行った方がいいですよ。
【比較】
バスで行くより電車で行った方が早いです。

比較を教える際に動詞との接続も入れると、学習者が「行ったの方がAですよ」と誤用を量産してしまうことを考えての配慮だと思います。実際、「するの方がいいですよ」「辛いの方が好きです」という誤用はよく聞きます。これは【名詞+の方がAです】を最初に練習することから来る誤用です

余談ですが、テレビや電車で「おいしいのがいい」「赤いのがいい」と言っているのを頻繁に聞きます。正しくは「おいしい方がいい」または、「おいしい物の方がいい」です。日常使う分には構いませんが、学習者の前では使わないように注意しましょう。

誤用の原因は何/誰かを考える

本冊には動詞を使った【比較】はありません。形容詞は【提案】も【比較】もありません。日本語教師のプロ集団が何年もかけて頭を悩ませバランスを調整した日本語の教科書です、「ないけど教えた方がいい」と勝手に判断することは、果たして是か非か。これは非常に難しい問題です。

  • 教えないから、誤用が生まれる
  • 教えるから、誤用が生まれる

自分の考えがそのプロ集団に勝っていると信じ切れるのなら教えてもいいでしょう。言語の学習に、教授法に今のところ答えはありません。テキストを作っている人達が正解とは限りません。
そして、教えるという決断をするならば、チームで教えている人達に「教える」という報告が必要です。試験を作るのがその判断をした人とは違うならばなおさらです。

テキストにはないわけですから、難易度も上がります。できるクラスならばまだいいのですが、できないクラスにテキストにはない形を教えると「教えるから、誤用が生まれる」が起こってしまいます。起こるというよりも、教師自身が誤用を誘因していると言ってもいいでしょう

 

分析する対象を広げる

本冊:教科書のみを指す
副教材:本冊に準じて作られたテキスト

本冊に準拠して作られたテキストが各社から出版されています。文字や読解、聴解、問題集、訳本などがそれに当たります。
教材分析は本冊を基本とし、そこから副教材と分析の範囲を広げていきます。本冊にあるものは授業で全て教えますが、副教材にあるものは、授業中に教えるかどうかの検討が必要です。検討はチーム内の教師と行わなければなりません。

話を「~方がAです」に戻します。本冊に【形容詞+方がAです】の形はありません。このような場合、副教材も調べてみます。可能性は低いですが、本冊にはなくて副教材にはあるということもあります(みん日教材分析対象はこちらの初級おすすめ参考書の『みんなの日本語』の項、でき日教材分析対象は『できる日本語』の項をご覧ください)。

「副教材にあるから教える」のではなく、「副教材にもあるけどどうする?」とチームなり学校なりで相談することが大事です。何を教えて、教えないのかを学習者のレベルに合わせて取捨選択しないと、授業で習っていないことが試験には出題されているという最悪の事態になりかねません。
試験に合格することが日本語学習の最終目標ではありませんが、学校という”てい”を成している以上、組織内での統一は必要不可欠です。

教材分析のその先

教材分析が終わったら、いよいよ教材作成に移ります。まずは、目標やそれを達成できる活動を作ります。次に、それを達成できるように道を作っていきます。使えそうな副教材を模索し、例文を考え、ピクチャーカードを作り、フラッシュカードプリントでやる課題も必要なら作ります。ホワイトボードの板書計画も必要です。それら全ての根っこにあるのが教材分析なのです。分析せずして授業準備は始まらないと言っても過言ではないでしょう。

そんな大事な分析をおろそかにすると、学習者の質問に答えられず、授業は余ったり足りなかったり、授業の質も学生からの評価も下がると、何もいいことがありません。どれか一つでも当てはまったことのある人は、まず分析からしっかり組み立ててみてはいかがでしょうか。

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