日本語学校の模擬授業・面接で聞かれる事と採用者への提案

私は日本語教師養成のレッスンをしています。その受講者から模擬で出される課題、実際に模擬で聞かれたこと、そして私自身が学校を変える際に聞かれたことをまとめてみました。

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当サイト管理人による、日本語教師養成個人レッスンの詳細はこちら

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模擬授業で聞かれること

文型の教え方

模擬授業では主に初級の文型の教え方を聞かれます。最近よく聞くのは「教科書を使わない方法で教えてください」というもの。そして、私のレッスン受講者にこう訴えられます。

「養成講座で教科書を使わないで教える方法は習っていません!」

養成で教科書を使って教える方法を学び、卒業したら日本語学校で教科書を使わないでと言われるなんてどうなっているのでしょうか。
これについては非常に長くなるので、授業のコツをご覧ください。教科書を使わない授業の実践法を様々な角度から紹介しています。

文型の違い

文型の違いについて、模擬授業をやっている最中に採用担当者が応募者に質問するということがかつてはよくありました。私が新人だった頃は結構しつこく聞かれて、心砕けた記憶があるのですが、私のレッスン受講者に聞くと最近はあまり尋問されていないようです。人手不足なのであまりいじめないようにしているのでしょう。

筆記試験

数は少ないですが、筆記試験があるところもあります。課題は当日に知らされることもあり、対策が立てにくいですが、こちらも初級の文型について聞く学校が多いようです。

教師の立ち振る舞いを見る模擬授業と違って、こちらは知識を問われるので、検定に合格している程度の知識があれば問題ないかと思います。

採用面接で確認しておきたいこと

ここからは、聞かれることではなく、聞いておきたいことを紹介します。しっかりと言質を取っておかないと後で問題になります。

初級教科書は何を採用しているか

面接ではなく、電話で私は聞きます。それぐらい大事です。
みん日がほとんどだと思いますが、中でもみん日1版ならばそこはやめた方がいいでしょう。教師としてのスキルが上がらないどころか、腐っていく一方です。なぜなら、1版2版でほぼ変化のないみん日すら変える決断もできない牛歩学校だとわかるから。「貴校では教え方の見直しはなさっていますか」と聞けない、学校選びで迷っている新人の方々はやってみてください。

添削の量

これも本当は電話で聞きたいぐらいなのですが、さすがに電話口でこんな事言う人がいたら私でもその場でお断りします。
しかし、面接の場でしたら、是非聞いておきましょう。添削にお金が支払われない学校もありますし、酷いところだと三時間無給添削地獄なんてところもあります。

また、試験作成やプリント作成は誰が行うのか(学校既存のものを実施する所、その都度教師が作成する所)も聞いておきたいです。作成料が支払われるのかは重要です。

1クラスの人数

以下は、当サイトで実施したアンケートの結果(2018年1月27日時点)です。緑色紫色の棒グラフに属する学校は危険です。数は少ないようですが、あります。

講義調の授業だったらまだいいのですが、皆でリピートなり活動なりをする言語学習の場で20人を超えるクラスでは効率が悪く、当然教師の負担もとんでもないことになります。ちなみにベストな人数は15人前後と言われており、上の【日本語学校】のグラフを見ると多くの学校がそれを守っていないようです。15人前後では採算がとれないのでしょう。それを守っているかどうかをちゃんと聞いておきましょう。

学生の国籍

事前にどこの国の学生に教えることになるのかは、授業の組み立てに大きく関わることです
例えば、単一国籍の学校なら、活動で「相手の国の銀行が何時から何時まで開いているか聞く」「相手の国の言葉で〇〇は何と言うかを尋ねる」といった授業ができません。
また、「非漢字圏が多ければ文字に一層注意を払う」という配慮も必要になってきます。

【どっちがいい?】単一国籍クラスか多国籍クラスか
よく同僚とこの話題について話すのですが、結論はだいたいいつも同じです。皆さんは単一国籍クラスと多国籍クラス、どちらがいいと思いますか。 単一国籍クラス とは、クラスで学ぶ留学生の出身国が一つのみのクラスのことです。それではそれぞれのメリット...

給与

これを聞かない人が結構いるようです。日本人的というか、なぜ働く上でもっとも大事なことを聞かないのか。しっかり聞いておきましょう。なお、別の学校に行くというのは、給与アップの最大のチャンスです。詳しくは以下の記事をご覧ください。

日本語学校、掛け持ちのメリットとデメリット
非常勤講師は掛け持ちの方がいいのか、それとも一つの学校で働いた方がいいのか、色々な側面から解説していきます。 メリット 取得経験値の早さと多さ、豊富さ 様々な学校で同時に多種多様な国の学生と、教材、テキスト、環境で教えながら学べる状況に身を...

その他

他にも、JLPTの各レベルの合格者数進学先の学校防災訓練の有無引継ぎのやり方学校の教材ストック他待遇などありますが、枚挙にいとまがありませんし、あまり面接で聞き過ぎると「コイツ色々聞いてきて面倒くさそう。採用は見送ろう」となってしまう可能性もあります(本来は根掘り葉掘り聞いてもいいはずなのですが、残念ながら日本社会はまだその次元に到達していません)ので、気をつけてください。

採用担当者への提案

ここからは採用担当者への提案です。「『て形』を教えてください」というよりも応募者の力量がはかれるのではないかと思います。

文型は指定しないで模擬をやらせる

どの日本語学校も模擬では「て形を教えてください」「受身を~」「敬語を~」と文型を教えるよう応募者に課題を与えます。模擬でやる文型って結局何をやっても同じだと思うんです。

だったら、「自分の得意な文型で模擬をやってください」という課題でいいのではないでしょうか
応募者の得意な文型がわかるだけでなく、得意なものを教えるという安心感から多少は緊張がほぐれ、いつもの自分で授業ができるようになります

状況を与え模擬をやらせる

文型を教えさせるのではなく、状況を与え、それに合った文型を応募者に教えるというものを課してみてはいかがでしょうか。具体的には

「学校が自然災害で休校になるかもしれないということを教師からのメールで知った学習者Aは学習者Bにそれを伝えたい。ここでは仮に台風とする。台風が学校所在地を逸れた場合は休校にならない。AはBに対してどのように説明すればいいか」

という課題です。以下、考えられる会話例です。

A:明日台風で(原因の「で」)学校が休みになるそうです(伝聞の「そうだ」)よ

B:え、本当ですか。明日は台風が来ないと言っていました(引用の「と言っていた」)よ

A:じゃ休みにならないかもしれません(可能性の「かもしれない」)。台風が来ない場合(条件の「場合」)は、休みにならないそうです(伝聞の「そうだ」)

もちろん”状況”が課題であって、上の伝聞などの文型は使わなくてもいいです。あくまで応募者の

  1. 課題の状況でどのような授業を組み立てるか
  2. どの文型を使い、それらをうまく組み込めているか
  3. どのような導入をし、練習を経て運用(活動)に持っていくか
  4. 最終的に、しっかり課題が達成されているか

を見るために実施するものです。こうすることで、積み上げ式ではなく、螺旋式(スパイラル式)の授業ができるかがわかります。

言葉の意味の違いを説明させる

例えば、「『女』と『女性』、『先生』と『教師』の意味を初級後半レベルの学習者に教えてください」というようなものです。これのメリットは準備のない学習者からの質問に対する対応がチェックできることです。もちろん語彙力も計れますが、それよりも対応力がわかる事の方が大きいです。

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