参考書を貪り、学生に背を向ける教師

オリジナル教材が大好きなA先生がいた。色々なものを作って、楽しませているつもりでいた。学生の質問に答えられないのを楽しさでごまかしていた。
しかし、学生の質問は毎日のようにあってA先生は悩んでいた。A先生は先輩先生にどうしたらいいですか、と相談した。そうしたら先輩は

「学生に質問させたらダメだ」

と教えてくれた。それからというもの授業準備の時間がさらに増えた。
そもそも学生の質問を予測できるまでに数年かかる事に気づいたのは相談してから数年後。

確かに先輩の言ってる事は間違っていない。質問できない学生の方が圧倒的に多いんだから、「質問しなくてもいい授業」を目指すべき、なんだけど「これを教えると、この質問が来る」という予測はなかなか難しい。結局A先生が出した答えは、

参考書を手当たり次第に読みあさる

ことだった。

そのおかげで(せいで)本棚が全段たわんだ。通勤途中、トイレの中、寝る前、休日、時間の許す限り本を読みあさり、理論武装で授業に挑んだ。しかし、授業はうまくいかなかった。

たわむ本棚を見て、悲しい事に気が付いた。

私は何も考えてない

本に書いてある説明を垂れ流し、例文をそのまま拝借し、学生に背を向ける。それはただの文字の音声化でしかない。これが教師と言えるのだろうか。信頼されるだろうか。

自分に足りないものを考え始めた。その頃にはもうずいぶん時間が経っていたので、基礎はできていた

私に足りないのはオリジナリティだ

最後に出したA先生の答えは、新人の頃に実践していたオリジナル教材の作成だった。さいわいなことに、参考書を読みあさった時間はその作成を助けてくれた。基礎もない内からオリジナル教材なんか作っても授業はうまくいくわけがなかった

長い寄り道をしながら変な成長を遂げたA先生は今、授業を楽しんでいるそうだ。

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