新型コロナウイルス感染拡大の影響で、教育界では遠隔で行うオンライン授業(リモート授業)がひろく行われるようになりました。
ここでは、これからますます進んでいくであろう教育界のICT化を見据え、オンライン授業を行うにあたって教師・先生が知っていると便利なデジタルツールをご紹介します。
タッチパネル対応ノートPC
オンライン授業をするにあたって、パソコンは欠かせないものです。授業もテストも添削も、すべてパソコンを使って行わなければなりません。
昨今、従来のノートPCにくわえて、Apple社のiPadシリーズやMicrosoft社のSurfaceシリーズなど、持ち運びが便利なタブレットPCも人気がでてきました。
タブレットPCを使って授業をするうえでいいところは、なんといってもタッチペンを使って画面に直接書けることです。画面に直接書けるということは、PPTを見せながら、そこに学生の解答を板書したり、提出物を手書きで採点したりすることができる、ということです。
しかし、タブレットPCだとキーボードがついていなかったり、HDMIやVGAを接続してスクリーンに映し出すことが難しかったりする場合があるほか、容量や処理速度ではどうしてもノートPCに劣ってしまうため、授業準備を含め様々な面からみると、不都合なことも多々ありました。
そこで、私がおすすめするのはタッチパネル対応ノートPCです。
タッチパネル対応PCは、「画面に直接書ける」というタブレットPCのいいところがありながら、キーボードやHDMI接続端子、容量・処理速度がノートPCと同じという、まさに教師にうってつけのパソコンです。
様々な性能、価格のものがありますが、私がおすすめするのはLenovo社のIdeaPad C340です。
このPCにはタッチペンが標準装備されていて、画面にペンで書くことができます。普通のノートパソコンと同じように使えるため、ワードやパワーポイントを使って授業準備はもちろんのこと、オンライン授業中もスクリーンを見せながらちょっとしたメモを付け加えたり、学生の答えを書き入れたり、学生が提出した作文を手書きで添削したり、これ1台でさまざまなことが行えます。
また、今後対面授業においても、板書をPC上で行えばいちいちホワイトボードを消す手間もなく、時間を効率よく使えることにつながります。
サブディスプレイ(マルチモニター)
デスクトップPCを使う時には、必ずディスプレイ画面(モニター画面)があると思いますが、そのディスプレイ(モニター)、じつはノートPCにもつなげることができます。
HDMIケーブル等を使ってノートパソコンとディスプレイ(モニター)をつなげると、オンライン授業の時に非常に役に立ちます。そして、メインで使うノートPCの画面に対し、補助的に使えるディスプレイ(モニター)をサブディスプレイと呼んでいます。
まず、パワーポイントには「発表者ツール」という機能がついています。これは、学生に見せる画面とは別に、「次のアニメーションは何か」や「メモ」などを見ながら話せる機能です。
下の画像、下の1が「発表者ツール」の画面で、上の2が学生に見せる画面です。
私がオンライン授業をするときは、ノートPCとサブディスプレイ両方を使用し、1の画面(ノートPCの画面)に教師用の発表者ツール、2の画面(サブディスプレイの画面)に学生用画面を映し、2の画面のみを学生に共有して見せています。
なお、発表者ツールは閉じたり小さくしたりすることもできます。ですので、サブディスプレイを使えば、学生にサブティスプレイのPPTを見せたまま、ノートPCのほうで学生の顔を確認したり、教案を確認したり、メモをとったりすることもできるというわけです。
また、サブディスプレイは授業準備にも役立ちます。自分の好きなように画面を使い分けることができるので、例えば以前作った教材をサブディスプレイに映して、参照しながらノートPCのほうで新しい教材を作ったり、使ったPPTをサブに映し、見ながら授業記録を書いたりすることができるのです。
上記のような使い方をするのであれば、高価なものは必要ないでしょう。1万円程度で買えるものもあります。普段自宅の決まった場所で授業や準備をするという方には、ぜひおすすめする方法です。
Zoomの様々な機能
Zoomはすでにひろく知られていますが、その中でも授業に役立つ機能をご紹介します。
画面共有
Zoomでは、PPTだけではなく、PDFやWord、インターネットブラウザなど、様々な画面の共有ができます。
Skypeなどにも画面共有の機能はありましたが、Zoomではデスクトップではなくアプリ単位で共有ができるので(もちろんデスクトップの共有もできます)、デスクトップがごちゃごちゃしていても、それが学生に見えることはありません。
また、学生に画面共有させることもできます。これを使えば、学生がPDFを見せながらスピーチをしたり、添削のために自分のファイルを見せたりすることができます。
これは、設定の「ミーティングにて(基本)」で、「画面共有」をOnにし、「共有できるのは誰ですか?」を「全参加者」にすればできます。
また、Zoomを始めた後でも「セキュリティ」で「画面を共有」を選べば、参加者が自分の画面を共有できるようになります。
チャット
チャットというとおしゃべりのイメージが強いですが、私は問題の答えを書かせたり、作った例文を書かせたりしています。
オンライン授業だと、どうしても学生に答えを言わせるまでにタイムラグが生まれ、テンポが悪くなるだけでなく、その小さなタイムラグの積み重ねで時間が足りなくなることがよくあります。
そういったことをなくすために、「一人ひとつチャットに書いて」と指示し、それをホワイトボードやPPTに貼り付けてフィードバックすると、かなり早く進みます。
また、Zoomでは学生同士のプライベートチャットを禁止できます(許可することもできます)。教師(ホスト)とはプライベートチャットができるため、ほかの人に知られたくないようなことはプライベートに送るよう指示しています。
ファイル送信
これはチャットについている機能ですが、チャットを通じてPDFやWord、画像などのファイルを送信することができます。
ただし、学生が使っている端末によっては、送信ができないようです(iPhoneには送信できませんでした)。きちんと受信できることを確認したうえであれば、手軽に使える機能です。
設定方法は、「ミーティングにて(基本)」で、「ファイル送信」をOnにします。
ブレイクアウトルーム
Zoomの参加者を、いくつかの小部屋に分ける機能です。ペアワークやグループワークをさせるのに役立ちます。ランダムでグループを分けることも、教師が指定して分けることもできます。
教師(ホスト)は、どの部屋にも参加できるので巡回もできますし、学生が教師を自分の部屋に呼ぶこともできます。
また、学生を1人ずつの部屋に分ければ、個別面談も可能です。例えば、プレゼンテーションの準備時間に学生を1人ずつの部屋に分け、一人ひとり進捗を確認したり、質疑応答やアドバイスをしたりすることができます。
設定方法は、「ミーティングにて(詳細)」で、「ブレイクアウトルーム」をOnにします。
投票
本来は投票の機能ですが、私は学生の理解度をはかるミニテストのように使っています。
学生がZoomに登録していなければ匿名での送信になるため、実際に誰がよくできていたかなどはわからないのですが、全体の傾向はつかめるため、理解が足りないところを集中的に説明したりすることができます。
また、スクリーンで問題を見せて考えさせるより、自分で手を動かして答えを選ぶほうが、学生もやっていて多少楽しいのではないかと思います。
設定方法は、「ミーティングにて(基本)」で、「投票中です」をOnにするだけです。
たとえば、このような投票を作成すると、
Zoomではこのように表示されます。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートは、「複数人がオンライン上で同時に編集できるエクセル」というようなものです。
Zoomのブレイクアウトルームなどでグループワークをさせると、それぞれの部屋でホワイトボードを使ったりチャットを使ったりして話の内容をメモさせることはできるのですが、全体に戻った時にそれを共有してもらうのが大変です。グループ数が多ければ多いほど、全体で共有するのに時間がかかります。
そんなとき、このGoogleスプレッドシートが役立ちます。
使い方は以下の通りです。
1.スプレッドシートを作成(「空白」を選択)。
2.右上の「共有」を押し、「リンクを知っている全員に変更」を押し、「閲覧者」を「編集者」にする。
3.「リンクをコピー」を押すとURLがコピーされるので、学生にそのURLを教える。
たったこれだけです。授業が始まる前に、なにを話してほしいか、話した結果何をどこに書いてほしいか、スプレッドシートに書いておけば、学生もわかりやすいでしょう。
たとえば、私は語彙の学習時、教師が提示した6つのことばについてグループで1つ例文を作り、スプレッドシートに書かせました。それを使いながら、ポイントを説明したり、間違いを訂正してフィードバックしたりしました。
以下の画像は、学生がそれぞれグループで話しながら、例文を記入しているところです。
Google Jamboard
Google Jamboardは、「複数人がオンライン上で同時に編集できるホワイトボード」のようなものです。
こちらも、先ほどのGoogleスプレッドシート同様、Zoomのブレイクアウトルームでのグループワークの際などに役立ちます。
文字を打ったり、フリーハンドで字や絵を書いたりすることができるので、様々な使い方ができます。
使い方やリンクの教え方などはGoogleスプレッドシートと同じです。
Googleスプレッドシートより簡単に文字を打つことができますが、たくさんの文字を打つのには向いていませんので、適宜使い分けましょう。
以下に使用例を載せます。
Googleフォーム
以前、Googleフォームを使って試験の採点を自動化してみたという記事を書きましたが、今回はGoogleフォームをプレゼンテーションの際の学生同士の評価に使用します。
いつもプレゼンテーションをするときは、学生同士でも評価をさせていました。今回は、それをGoogleフォームを用いて行いました。
使い方は以下の通りです。
1.Googleフォームを作成(「空白」を選択)。
2.質問を作っていく。
3.右上の「送信」を押し、クリップのようなマークを選択。URLを短縮をチェックしてからコピー。
4.コピーされたURLを学生に教える。
5.プレゼン終了後、「回答」のスプレッドシートのマークを押す。
6.以下のような表が出てくるので、プレゼンをした人ごとに編集するなどして、発表者に評価をメールなどで送付する。
このGoogleフォームを使った相互評価方式は、対面授業でも活用できると思います。
また、グーグルフォームを使ってテストやクイズを作ることもできます。詳しくは、以下のページをご参照ください。
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