初級、特に0初級の学習者に何かを伝えるのは非常に骨が折れます。それがこの仕事のだいご味ではあるのですが、注意する時や日本語のルールを教える際など、だいご味などと言っている場合ではないことも多いです。今回はそれら状況下において使える言葉群を紹介します。
「さようなら」「こんにちは」
使用頻度:★★★★★
「さようなら」は「消す」の、「こんにちは」は「に変える」の代用語です。
T:「ています」の後ろに「んです」をつけます。どうなりますか。
S:ていますんです
T:て「います」さようなら、「います」のふつう形は「いる」ですから、「います」さようなら、「いる」こんにちは
「コピーします」
使用頻度:★★★★☆
「写す」の代用語です。特に注意する時によく使います。新人の頃、まだ語彙コントロールが未熟な私は
「宿題写したでしょ?」
「テスト写した人は0点ね」
などと言っていました。学生は「ん?何をしたら0点だって!?」となるわけです。そこで思いついたのがこの「コピーする」。
「宿題コピーしたでしょ?」
「テストコピーした人は0点ね」
しかし、教師側がこれに慣れすぎると、今度は学習者の実生活に支障が生じるので、頃合いを見て、「写す」を無理矢理にでも使って注意することが求められます。支障とはつまり、日本人は「コピーする」を「コピー機で印刷する」の意味で使うため、学習者が「写す」の意味で使うとまずいということです。
ちなみに頃合いを見てと書きましたが、JLPT対策・EJU対策が始まる中級レベルで「写す」が出始めます。聴解問題内、学生同士で「ねえ、この間のレポート写してもいい?」という会話をよく聞きます。
「チェンジします」
使用頻度:★★★★★
「かえる」の代用語です。「かえる」をひらがなで表記したのは、様々な「かえる」を表せるからです。
替える
カンニングする学生を試験中席移動させたい時
T:S1さん、S2さん、チェンジ(席を指しながら)
「席を替わってください」
「席を移動してください」
はなかなか伝わりません。代わりに「S1さんは後ろに行ってください。S2さんは前に来てください」でもいいですが、長いです。「席、チェンジ」が手っ取り早いです。
変える
て形など、変換の導入をする時
T:「立ちます」は、ますの前がチですから、「立って」にチェンジします
代える
プリントが不鮮明に印刷されてしまったものを学生が申し出た時
T:じゃ、この紙とチェンジしましょう
「先生の部屋」
使用頻度:★★☆☆☆
講師室、または教務室、職員室など様々な言い方がありますが、初級学習者ならば「〇階の先生の部屋」で通じます。そんなに使用頻度は高くありませんが、
T:今から1階の先生の部屋へインタビューに行きましょう
T:今日田中先生、先生の部屋にいたよ
みたいな感じで使えます。
英語は世界共通語!?
英語は世界共通語!と買い被っていると痛い目を見ます。「この英単語はさすがに知ってるでしょ!」という英単語も、殊日本語教育機関ではなかなか共通してくれません。
しかし、そんな中でも多少は役に立ってくれる少数精鋭の、教室で使える英単語と、日本語の代用語をいくつか紹介しました。
ちなみに、「直接法厳守!いかなる媒介語も禁止!」という学校もあるので、そういう場合は使用を避けましょう。
レベルを下げる代用法
代用する方法は
- 簡単な英語にする方法
- より易しい言葉に言い換える方法
とがあります。2は「食事する」をよりレベルの低い類義語である「食べる」、「シルバー」は「年配の人・老人・年を取った人」などといった語で代用することを指します。校外学習で引率時に、施設の日本人が話す日本語を日本語に”翻訳する”のがこの2ですが、この2の方法は少し難しく、何が何より易しいのかをつかむまでに時間がかかります。
最初の内は、上で述べてきた代用語を使うとスムーズに指示が出せます。
代用語は随時追加していきますので、時々のぞいてみてください。
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