「先生、また嘘です」
とよく授業中に言われます。もちろん、理由もなくただ楽しいから嘘をついているわけではありません。
私が嘘をつく理由
私が嘘をつく理由は、教室に日本語を教える人が一人しかいないからです。
授業中一人二役をこなす場面は多いです。
例えば、ある授業で仮定の用法の「~たら」を教える場合、仮定を教えるのですから、私が仮に40歳の既婚者で娘と伴侶の3人家族実家は神奈川にあり両親は共に医者だった場合、
「お金があったら、結婚したいです」
という文は違和感を伴って学生に受け取られます。「先生はたぶんお金があるだろうし、結婚もしてるよね。この「~たら」ってどういう意味なんだろう」と取られかねません。
教室に先生は一人、だけどこなす役はいくつもある。金持ち、既婚者、大工、20歳、北海道在住の人などなど、様々な役です。だから私は私を規定せず、素性を明かさず、いつでもどの教室でも誰にでもなれるニュートラルな人物でいることを心掛けているのです。その方が授業がやりやすいのです。
嘘をつかれたまま卒業する学生がかわいそう
「嘘をつかれたまま卒業する学生がかわいそう」という意見もあるかもしれません。しかし、学生が卒業した後、
S1:あの先生は結局既婚だったの?
S2:え、独身じゃない?ていうか何歳なのかな?
S1:さあ?
といった会話はしていないでしょう。先生を好いてくれる学生も興味を持つ学生もいますが、どうしても、絶対に先生の属性を知りたい!と願う学生はいません。メリットがないからです。
学生と教師の関係
私が何者なのかは重要ではないのです。私について彼らに知っておいてほしいのは、私が日本語教師で、学生の日本語力を高めるのが仕事であるということ、その一点のみです。
そのためならば、嘘つきと呼ばれても気にしません。
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