留学生と事務の攻防
授業開始前、一人の留学生(S)が学校の事務(A、日本人)へ来ました。
S:パソコンを使いたいです
A:何に使うの?
S:ちょっと
A:ちょっと何?
S:あーえーあのー
その学生が言いたくないのか、もしくは説明できないのか、また急いでいてそれを説明をする時間がないのかは判然としませんでしたが、とにかくずっと日本人の事務に懇願していました。
A:うーん、授業の後はダメ?
S:ダメです
A:でももう後10分で始まるよ
S:すぐ終わります
Aが遠くにいた偉い事務員(B)に相談しましたが、答えは同じ。
B:あと10分だからまた今度
A:だって。授業の後でいい?
S:ダメです
察する力
今回の問題点を先に挙げます。
- 留学生は日本的な察する力がなかった、授業で教えられていなかった
- 事務員が留学生に対して常に疑問形で返答していた
『日本的な察する力』は日本語能力試験でも出題されるものです。その力が直接問われるというわけではなく、その力がないと解けない問題がたくさん出るのです。例えば以下のような問題です。
【聴解】
男:これ持っていってくれない?
女:あ、えっと、ちょっと用事が・・・・・・
男:そうですか
問題:女の人はこれから何をしますか
かなり適当に作ったものですが、だいたいこんな感じです。女性ははっきりと断っていません。しかし、女性の反応を聞いて、男性は断られたことを理解しなければ解けない問題です。
事務員のAさんは「授業後でいいですか」と疑問形を使って実質的に断っていました。しかし、留学生はいいか悪いかを聞かれているので「ダメです」と答えています。察する力を授業で扱っていないのなら当然の反応です。
事務員は「授業後ならいいです」「授業後に来てください」とはっきりと言えばよかったのです。
今回の2人の脳内でどうなっていたかを書いてみます。
A:うーん、授業の後はダメ?
S:ダメです
A:(あれ?断ったのに。しかも断り方が酷いんだけど何なのこの子)でもあと10分で授業が
S:すぐ終わります(あれ?ダメって言ってるのにしつこいなあこの事務員。すぐ終わるしさっさと使わせてくんないかな)
ちなみに、多くの留学生が言う「すぐ終わる」「明日持って来る」は実現されません。私が事務員でも授業前に使わせる許可は出さなかったでしょう。
今後の日本
日本に定住する外国人は毎年増えています。今回のような攻防は今後増えていくことが予想されます。お坊さん・お祈り・ラマダン・肉、日本語教育機関の宗教問題でも少し触れましたが、問題はどっちに寄せるかです。
彼らの習慣や宗教、考え方を完全に無視してはいけません。日本人も外国人に歩み寄らなければなりません。しかし、ここは日本です。ですから、最も大事なのは今回のような攻防が起こらないように、日本語教師が外国人に日本の習慣をしっかりと伝えることなのだと改めて思いました。
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