用法① 対象
1.Xを対象として、何かを行ったり、思ったりする、という用法。その行為や思ったことは後件で述べる。
2.助詞「を」で言える場合は無理に「に対して」を使わない。下2つは「行為が及ぶ対象を指す」という「に対して」の用法が使えそうな後件だが、使えないことに注意。
・授業中うるさい学生 ✕に対して 〇を 黙らせた。
・年配の方 ✕に対して 〇を もっと敬うべきだ。
3.「に対し」はさらに硬い言い方。
4.Yが名詞句の場合「に対する」となる。
例文
彼は友達や家族だけでなく、自分に対しても厳しい。
(会議で)彼の意見に対する反対意見はありますか。
最近の若い人は政治に対してあまり関心がない。
今度の選挙に対する国民の考えを聞く。
新しいウイルス対する薬ができたそうだ。
彼はいつも授業に熱心だ。
幼稚園建設に対して住民は激しく抗議した。
父親が息子に対して甘すぎるので、母親はいつも父親を注意している。
学生が授業に対して消極的なので、先生は困っている。
目上に対しては敬語を使わなければならない。
母親は私がやることに対しいつもダメだと言ってきます。
昨年より僕自身に対し全く知らない方より一方的な誹謗中傷があった。
ご質問に対しできる限り回答させていただきます。
一般人がオタクに対してもつ感情。
多くの子どもたちに対し常に手遅れの状態になっている。
テーマに対し、あらかじめ肯定、否定派とわけられ、討論をする。
市民団体などが山本に対し抗議を行った。
すべての整数kに対し、P(k)は整数であることを証明せよ。
校歌に対し感情を持たせた。
持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった。
水は地球に存在する水量に対しほんのわずかでしかない。
日本の対抗措置に対し怒り。
用法② 対比/~と比べて
接続
名詞だけに接続┃以下接続例
V:なし
A:なし
Na:なし
N:ことの+に対して
意味・使い方
1.XとYを比べ、その結果を後件で述べる。
例文
明るい兄に対して、弟は暗い性格だ。
日本人の平均寿命は、男性78歳に対して、女性85歳だ。
一万人の敵に対して、味方はたったの500人しかいなかった。
スポーツが好きな彼女に対して、私は読書が好きだ。
「町に愛着がある」のは約8割に対し、「行政に関心がある」「地域活動の経験がある」では半数の約4割という結果でした
明るさと心地よさがあったのに対し25歳の時書いたこの本には真面目さがあった
情報伝達物質をフェロモンというのに対し、異種個体間で作用する情報伝達物質を何というでしょう?
比較文型:「にひきかえ N1」
ニタイシテは前と後の事柄を中間的な立場で冷静に対比させる。ニヒキカエは個人的な不満を含んだ文型
・私の報酬が30万なの◎にひきかえ 〇に対して、あいつは100万ももらったらしい
(↑ただ、この文ではノニが最も自然だが、あくまで不満を含む文で違いを示すためこれを提示した)
(↓個人的な不満ではないため、使いにくい)
・歌舞伎町は夜は人がたくさんいるの?にひきかえ 〇に対して、昼はがらがらだ
学習者の誤用例
以下のような誤用が大変多く見られる。
✕中国人に対して漢字は簡単だ。
✕子どもに対して千円は大きい金だ。
〇中国人にとって漢字は簡単だ。
〇子どもにとって千円は大金だ。
「にとって」「に対して」という2つの言い方は中国語では同じらしく、そのせいで上記のように書いてしまう学生が多くなる。授業では質問がなくても、誤用がなくても、こちらからこのことについて触れた方がいい。
相手・対象族
「について N3」
「に関して N2」
「に対して N3」
「を巡って N2」
相手・対象マトメ分類
についてN3
対象
制限ゆるい
唯一初級(L21)で既習
に関してN2
硬いニツイテ
制限きつい
に対してN3
①対象②対比
を巡ってN2
議論する
マイナス寄り
【Ⅰについて に関して】【Ⅱに対して】【Ⅲを巡って】のように分けられ、その中でもⅡが異質
ニツイテ:内容 ニタイシテ:行為の対象
・社長に対して質問した(質問した相手は社長)
・社長について質問した(質問した内容は社長の事。質問した相手が社長かどうか不明)
硬さ・会話での使用率
を巡って・に関して > に対して > について
動作主の数
について→単・複
に関して→単・複
に対して→単・複
を巡って→複
複合助詞として見た時に切り離して、V部をVジにできるもの
について→×につくN
に関して→〇に関するN
に対して→〇に対するN
を巡って→〇を巡るN
以下2点より、ニタイシテは「行為」と「内容」に影響する文型であり、異質である
◆内容に『のみ』言及している文型かどうか
〇について 〇に関して ×に対して 〇を巡って
◆助詞「に」と入れ換え可能かどうか
×について ×に関して 〇に対して ×を巡って
ニタイシテは対象の助詞「に」と置き換え可能な場合が多い
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