共通点
どちらも自身にとって好ましいことを集中してやるという点では共通していますが、以下のような相違点があります。
それぞれの特徴
熱中:短期間のことが多い。真剣にかつ冷静に物事を行う様を表す場合が多いので、研究や調査など「答えを出すための思考が必要な行動」に重点のある事柄に用いられる。対象に「人」をとれない。
夢中:他の様々なことを忘れて~する/~だ。あまり深く考えずに物事を行ったり、それを考えている様を表す場合が多いので、ゲームやおもちゃといった「おもしろさ」に重点のある事柄に用いられる。対象に「人」をとれる。
助詞
私はゲームに夢中だ。
私はゲームに熱中している。
どちらも助詞は「に」をとります。
品詞
私はゲームに夢中だ。
私はゲームに熱中している。
「夢中」は形容動詞(な形容詞)です。「熱中」はさ行変格活用動詞(3グループ動詞)です。
比較・例文
それではここからは両者を比較しながら例文で具体的に見ていきましょう。
彼は子どもの頃からゲームに( 〇夢中だ △熱中している )。
「熱中」は比較的短期間のことを述べるので、使いにくいです。
子どもはおもちゃに( 〇夢中だ ×熱中している )。
子どもがおもちゃを遊ぶ際に、おもちゃの構造などを深く考えて遊ぶということはないので、「夢中」が適当です。
教授は遺伝子の研究に( 〇夢中だ 〇熱中している )。
夢中:教授が研究にかかりきりで、他の事は何もしていないほどやっている。
熱中:集中して研究している。
遭難から1週間、救出直後の彼は出された食事を( 〇夢中で ×熱中して )食べた。
1週間ぶりの食料に対して冷静に食事する風景はあまり想像できません。
水面にサメのヒレが見えて、私は( 〇夢中で ×熱中して )泳いで逃げた。
「熱中」は真剣にかつ冷静に物事に取り組む姿勢を表すので、このような状況では使われません。
父は定年後、( 〇夢中になれる 〇熱中できる )ものを見つけた。
これは何を見つけたのか、具体的なことが書かれていないので、どちらも使えますが、「夢中」を使う場合は何か楽しげなもの、「熱中」を使う場合は真剣に取り組む事が考えられます。
花子ちゃんは太郎くんに( 〇夢中だ ×熱中している )。
「熱中」は何か動作を伴うことにしか使えません。対象に「人」をとる場合、その人のことで頭がいっぱいという状態を述べているだけなので、「夢中」が適当です。同様に、
うちの息子はカニカマに( 〇夢中だ ×熱中している )。
花子とカニカマの共通点は動作性が一切ない名詞ということです。そのような名詞を用いると、「そのことで頭がいっぱいだ」という意味になります。また、同時に「熱中」が使える可能性が0になります。このことを裏付ける例文として以下のものがあります。
昆虫に( 〇夢中だ ×熱中している )。
昆虫採集に( 〇夢中だ 〇熱中している )。
昆虫は動作性のない名詞ですが、昆虫採集は動作性のある名詞です。研究や食事も動作性があります。
まとめ
上でも少し触れましたが、「この文はどちらも使えるんじゃないか」という文も多くあります。
父は定年後、ゲートボールに( 〇夢中だ 〇熱中している )。
彼は本業よりも副業の方に( 〇夢中だ 〇熱中している )。
しかし、これらはどれも文法的には正しいですが、意味合いが変わってくるので、注意が必要です。
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