「ごとき」「ごとく」【N1】
用法①:たとえ、比喩
≪接続≫
普通形+ごとき/ごとく┃以下接続例
V:する+が/かの+ごとき/ごとく
A:なし
Na:しずか+であるが/であるか(の)+ごとき/ごとく
N:本+の/であるが/であるか(の)+ごとき/ごとく
≪意味・使い方≫
Xごとき/ごとくY。
- XのようなY、XのようにY <Y as like X>
- 実際にXではないが、Xのように見える、という比喩の表現
- 古い言い方で、書き言葉として使われる
1.接続が複雑すぎるので、全て教えず、使うテキストに準拠したほうがいい
2.参考書によっても接続が分かれており、動詞を辞書形のみとするものや、「が」「かの」の有無もそれぞれである
例文
その家は、映画に出てくるかのごとき豪華な装飾がされていた。
彼女の料理は、レストランで出てくるがごとき美味しさだった。
彼女の美しさは、天使のごとき光輝きを放っていた。
彼は、老人のごとき落ち着いた物腰で話しかけた。
彼女の声は、天使のごとき美しい歌声だった。
彼の車は、スポーツカーのごとき速さを誇っていた。
彼は、ロボットのごとき正確な動作で仕事をこなした。
あの花畑は、絵画であるがごとき美しさを持っていた。
その家は、城であるがごとき大きさだ。
彼は、恐竜であるかのごとき巨体を誇っていた。
雨は、打ちつけるがごとく地面に降り注いだ。
彼は、冷静にまるで問題がなかったかのごとく話した。
彼女の声は、鳥のさえずりのごとく美しかった。
彼女は、美しい花のごとく咲いていた。
彼のスピーチは、詩のごとく美しく感動的だった。
山のごとく仕事がある。
彼女は、まるで風船であるがごとく膨らんでいる。
彼の歩き方は、王様であるかのごとく威厳があった。
用法②:軽視
≪接続≫
N+ごとき┃以下接続例
V:なし
A:なし
Na:なし
N:お前だ+ごとき
≪意味・使い方≫
Xごときが/に、Y。
- Xなんか <someone like X>
- Xにはおもに人が入り、Xは自分より下である、という、Xを見下す表現になる
- Xに自分を入れて、謙遜を表すこともできる
1.マンガやドラマなどで使われ、実際の会話で使われることは少ない
例文
お前ごときが私に勝てると思うのか。
君ごときが私の夢を邪魔できるとでも思っているのか?
彼女ごときが、私たちの仲を引き裂くことはできない。
君ごときに私を止められるとでも思っているのか?
あんな人間ごときに、私たちは負けるわけがない。
あいつごときが私を傷つけることはできない。
彼らごときが私たちを止めることはできない。
私ごときがこんな物をいただいてもよろしいのでしょうか。
私ごとき新人にこんな大きな仕事をまかせていただいてありがとうございます。
類似文型とその違い
「なんか」「なんて」【N3】
「など」【N2】
「くらい」【N3】
「にすぎない」【N2】
「ごとき」を含め、これらはすべて「Xなんか」「Xにすぎない」のように使い、Xを軽視しているという話者の感情を表します。軽視とは、軽く見る、重要だと思わない、大事にあつかわない、という意味です。
これらの文型は、使う場面や直前の品詞などが異なります。
まず、使う場面についてです。「なんか/なんて」「くらい」は、日常会話でよく使われます。「など」は、すこしかしこまった言い方で、あらたまった場面で使われます。「にすぎない」は、書き言葉で使われます。「ごとき」は少し古い表現で、マンガやドラマのセリフとして使われることが多いです。
つぎに、Xに使えることばの品詞についてです。「Xなんか/なんて」「Xなど」は、Xは名詞のみです。例えば、「ピアノの練習なんか/なんてもうやりたくない」「英語であいさつをすることなど容易だ」のように使います。
「Xくらい」は、Xは動詞、イ形容詞、ナ形容詞、名詞です。例えば、「ひらがなを書くくらいできる」「少し体調が悪いくらいでは休めない」「論文は、内容が正確なくらいでは足りず、深い考察が必要だ」「今どきスマホくらい誰でも持っている」のように使います。
「Xにすぎない」は、Xは動詞、ナ形容詞、名詞です。例えば、「日常会話ができるにすぎない」「彼は日本国内でのみ有名にすぎない」「彼はただの友達にすぎない」のように使います。
「Xごとき」は、Xは名詞(おもに人物)のみです。「ごとき」のあとには「が」または「に」が続きます。例えば、「彼ごときが私たちを止めることはできない」のように使います。
最後に、文末に使えるかどうかです。これらの中で、文末に使えるのは「にすぎない」のみです。
例:〇可能性にすぎない。
×可能性なんかだ/などだ。
×可能性くらいだ。
×可能性ごときだ。
このように、これらの文型は全てなにかを軽視しているという話者の感情を表しますが、使う場面や直前の品詞などが異なります。まとめると以下の通りです。
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