学生の叱り方 「イヤな奴」編

学生との対話で、時に「イヤな奴」と感じる態度に出くわすことがあります。特に、屁理屈や言い訳を繰り返す学生への対応は、教師にとって悩みの種です。
本記事では、こうした学生への論理的かつ効果的な叱り方を、実際のやり取りを基に整理し、わかりやすく解説します。以下の内容は、教師(T)と学生(S)の対話を例に、冷静かつ明確に対応する方法を紹介します。
スポンサーリンク

当サイト管理人による、日本語教師養成個人レッスンの詳細はこちら

当サイト管理人による、日本語教師養成個人レッスンの詳細はこちら

「私の国では」を主張する学生への対応事例:文が長すぎる学生

以下は、記述の授業で実際にあったやり取りです。
 
T: あなたの文章は一文が長すぎて、主語と述語がずれて読みにくいよ。
S: 私の国では、長い文の方が頭が良く見えるんです。
T: 今あなたがいる国は?
S: 日本です。
T: そう。書いているのも日本語だよね。日本語では、わかりやすく簡潔な文章が求められるよ。
 
この学生は「私の国では」を繰り返し、自身の文章の欠点を認めません。最終的に「ここは日本」と一言で論点を明確にしました。日本にいるのに、よその「正解」を持ちだしてはいけません。
 

対応のポイント

このような学生には、以下のステップで対応すると効果的です:

  1. 論点をずらす主張を特定する:「私の国では」は問題の核心(文章のわかりにくさ)を避けるための言い訳です。
  2. 事実で切り返す:「ここは日本」というシンプルな事実を提示し、学生の主張を論理的に遮断します。
  3. 改善を促す:日本語の文章では明瞭さが重要であることを伝え、具体的な改善点を提示します。

この手法は、学生が文化や慣習を盾に議論を逸らす場合に有効です。冷静に事実を突きつけることで、屁理屈を封じ込めます。

「ここはどこ?」でルールを明確化

事例:授業中の飲食授業中に飲食を始めた学生とのやり取りです。
T: お腹すいたの? あなたの国では授業中に食べてもいいの?
S:

  • ケース1:いいえ
    S: いいえ、ダメです。
    T: じゃあ日本だから大丈夫だと思った? それとも私の授業だから? 他の先生ではしないのに、私の授業でするのはなぜ?
  • ケース2:はい(嘘の場合)
    S: はい、いいです!
    T: そう。でもここは日本だよ。日本の学校では授業中の飲食は禁止だから、覚えておいてね。

どちらの回答でも、「ここは日本だから」という結論に導きます。

対応のポイント

  1. 質問で学生の論理を試す:学生の主張(「私の国では」)をそのまま受け止め、矛盾を浮き彫りにします。
  2. ルールを明確に伝える:日本の学校文化を簡潔に説明し、ルール遵守の必要性を伝えます。
  3. 穏やかに注意する:常習でない場合、「やめてね」と簡潔に伝えるだけで十分です。くどい言い回しは逆効果になることもあります。

この手法は、学生がルール違反を正当化しようとする場合に有効です。事実に基づき、論理的にルールを再確認させます。

「私はだれ?」で個別対応の違いを説明

似たものに「私はだれ?」というのもやります。
T:バナナ食べたらダメだよ
S:でも山田先生は注意しません
T:え?山田先生は注意しないの!?
S:はい!
T:私の名前知ってる!?
S:カキアゲ先生!
T:山田先生じゃないね!

しかし、賢い学習者はこれでは終わりません。

S:じゃ学校として方針を統一するべきです。山田先生は許して、カキアゲ先生は許さないというのは学校としておかしいのではないでしょうか

と言われますが、こう返します。

T:Sさんの国の先生はレポートの締切に優しい人厳しい人、1分遅刻しただけで欠席にする人しない人、授業中に寝たら注意に来る人来ない人、先生によって違ったでしょ?

  • ケース1:違いを認める場合
    S:はい、先生によって対応は違います
    T:この学校もそうだよ。先生によって注意するポイントが違う
  • ケース2:違いを否定する場合
    S:いいえ、同じでした。全ての先生が同じ対応をとっていました
    T:そうなんだ。じゃ私が悪かったんだね。校長に報告に行って。「私が授業中にバナナを食べていたら、山田先生は注意しなかったのに、カキアゲ先生は注意しました。不愉快です」って

対応のポイント

  1. 教師の個性を強調:教師ごとに指導スタイルが異なるのは自然だと説明します。
  2. 学生の主張を逆手に取る:極端な反論(「すべての先生が同じ」)には、ユーモアを交えて論理の矛盾を指摘します。
  3. 最終手段としてのエスカレーション:「校長に報告」を提案することで、学生に自分の主張の妥当性を再考させます。

この手法は、学生が教師間の違いを利用して言い訳する場合に有効です。ただし、「校長に報告」は最終手段として慎重に使いましょう。

「イヤな先生」にならないために

上記の対応は、屁理屈や言い訳を繰り返す学生に対して有効ですが、全体的に「イヤな先生」と思われるリスクがあります。以下の点に留意してください:

  • 簡潔さを優先:常習でない限り、「やめてね」と簡潔に注意する方が好感を持たれます。くどい対応は学生の反発を招く可能性があります。
  • ユーモアと共感:論理的な指摘に軽いユーモアを交えると、学生との関係が和らぎます。
  • 授業の効率を重視長引く議論は授業の「無駄な時間」を増やします。必要に応じて、個別対応を授業後に持ち越すのも有効です

叱り方に関しては以下の記事も参考にしてみてください。

学生の叱り方
話すな ケータイ使うな 寝るな叱り方何の話?学生は教師ほど他の学生の私語を気にしていません。私語にヒス起こすぐらいなら、そのまま授業を続けましょう。あまりしつこく注意し過ぎると、授業のテンポも悪くなるし、優秀な学生も調子が狂って結果皆うるさ...
学生とうまくいかない時は。ある学生との記録
学生の叱り方について以前書きましたが、今回は叱らない、というやり方です。ある学生との衝突ある学生と衝突しました。衝突というか、一方的に嫌われた感じですが。授業中話も聞かずに内職をしたり、漫画を読んだりとしていたので、注意しました。しかし、彼...

コメント

  1. はじめまして。
    いつも大変参考にさせて頂いています。現在、私は上級クラスを受け持っています。私自身経験も3年程度で経験も浅く学生に不満を持たれることは理解しています。
    そこで相談ですが、一人のベトナム人の女子学生があからさまに当てると嫌な顔をしたり、挨拶をしなかったり、寝たりします。明らかに私のことが嫌いなのだと思います。しかし私はどうして嫌われたのか理由が分からないのです。
    この場合、個別に呼び出して話を聞くべきでしょうか。さらに関係が悪化してしまうような気もしています。
    授業を妨害するような行為はないので様子を見るべきか悩んでいます。
    何かアドバイスを頂けると幸いです。

    • コメントありがとうございます。管理人のカキアゲです。嫌われることは人間なので必ずあるでしょう。まずはそれを「当然」だと思うことが大事です。気にし過ぎると授業や他の学生、そして先生自身に悪影響を及ぼしかねません。
      該当学生はあまり刺激しないようにそっとしておいた方がいいかもしれません。妨害行為が出てきたらそれこそ呼び出して話し合うべきですが、時間が解決することも多いですから。

      • カキアゲ先生
        迅速なご回答ありがとうございます。
        そうですよね。当然ですよね。そう思うことにします。クラス全員に好かれる必要はないですよね!
        気持ちが楽になりました。
        ありがとうございました。
        今後ともよろしくお願い致します。