「だに」【N1】
用法①:だけで
≪接続≫
V辞書形+だに┃以下接続例
V:想像する+だに
A:なし
Na:なし
N:なし
≪意味・使い方≫
XだにY。
- XするだけでもYだ。 <Just doing X makes you Y.>
- 学習者にわかる言葉で書く(例:Yに自分の意志ですることは×)
1.実際にはそうなっていない、体験していないが、そうするだけでも後件だ。
2.日常会話ではもちろん、文語でもなかなか使う機会のない文型。
よく一緒に使われる言葉・文型・表現
X:「想像する」「考える」などの思考する動詞
Y:「恐ろしい」などの悲観的、ネガティブな言葉
例文
私の会社が潰れるなんて考えるだに恐ろしい。
彼の交通事故の話は聞くだに痛くなる。
いつも金持ち自慢している彼が実はごはんに塩を食べて生活している苦労人だったとは。彼の気持ちを想像するだに悲しくなる。
人工知能が街を歩き回る世界を想像するだに恐ろしい。
そんな理屈に当てはめてるとは、考えるだにおぞましすぎる。
ドブ臭くて押し入れから何が出てくるか考えるだに恐ろしい部屋。
それを考えるだに胸が痛い。
明日のプレゼン、考えるだに憂鬱だ。
用法②:さえ
≪接続≫
N+だに┃以下接続例
V:なし
A:なし
Na:なし
N:想像だ+だに
≪意味・使い方≫
XだにY。
1.「さえ N3」 <even>と似ている使い方
1.慣用的に使われる。接続できる言葉もかなり限られている。
2.「思いだに~。」という言い方もあるが、これをじしょ形にして「思うだに~。」とはならない
3.「未だに(:まだ)」という言葉があるが、これは「未然+だに(強調の「さえ」)」を組み合わせたもの。「今だに」と書くのは誤りである。
よく一緒に使われる言葉・文型・表現
X:「想像」などの思考する動詞
Y:「恐ろしい」などの悲観的、ネガティブな言葉
例文
叩いてもその虫は微動だにしなかった。(=全然動かなかった)
昔は駅でも役所でも皆が喫煙していたが、今なら想像だにできない風景だ。
昔の自分は今の情けない自分の状況を想像だにできなかっただろう。
あなたには想像だにできないでしょうが、これは実際に起こったことなんです。
自分には予想だにつかない光景だった。
明治の世には想像だにできなかった道具が現在には多くある。
パントマイムの人が出てきた時に微動だにしなかったからロボットが出てきたのかと思った。
誰かにそんなに大切にしてもらう日々が自分に訪れるなんて思いだにしなかった。
類似文型とその違い
「さえ」と「だに」は、両方とも同じような意味を表す接続助詞ですが、微妙な違いがあります。
「さえ」は、最低限の条件を示し、それを満たせば他のことは自由に行うことができることを表します。また、「さえ」は、期待されないことが起こった場合でも、その最低限の条件は依然として成立することを示すことがあります。
例えば、「水さえあれば、生き延びられる」という文では、「水」があれば、その他の条件は何でも良く、最低限の条件である「水」があれば生き延びることができるという意味になります。
一方、「だに」は、「さえ」よりもさらに最低限の条件を示し、それを満たすこと自体が非常に難しい、あるいは不可能であることを示します。また、「だに」は、「〜さえも」の形で用いられ、驚きや異常性を表すことがあります。「予想だにしない」「想像だにしない」とよく一緒に使われるのはそのためです。
例えば、「この穏やかな海で船が沈むなんて、予想だにしなかった」という文では、船が沈む可能性は考えられるが、その可能性が非常に低く、実現することが困難であるため、その可能性をまったく考慮していなかったということを表します。
つまり、「さえ」は最低限の条件を示し、それを満たせば他のことは自由に行えることを表し、「だに」は、最低限の条件を示し、それを満たすこと自体が非常に難しい、あるいは不可能であることを表します。
上のような細かい意味の違いはありますが、実際に行われている使い分けとしては言葉の共起性です。「子どもさえ無事ならいい」という文の「さえ」に「だに」は使えないように、「さえ」が使えて、「だに」が使えない文(共起できない語)は非常に多いです。
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