コロナ禍の日本語教育現場

今年、2020年の自分のTwitterを見ていて、意外とコロナ関連のつぶやきをしていないなあと思いました。そこで、コロナで大変だった自分と、同業者から聞いた話をここでまとめておこうと思いました。

もしまたこのような緊急事態が起こった場合、私たちはどのような状況だったのか、そして何に悩み、何が大変で、どのように対処したのかを自分用としてここに記録しておきます。

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当サイト管理人による、日本語教師養成個人レッスンの詳細はこちら

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日本語教育現場の現状

クラスの状況

水を飲むとき以外で学生のフルフェイスを見ることがなかった今年。誰かがくしゃみをしただけで誰かが睨み付け、マスクで先生も学生も呼吸が苦しいという日々でしたし、今もそうです。

もちろんこんな状況が早く終わる事を常に祈っていますが、後述するオンライン授業よりはマシだと思います。

学生同士でケンカ

マスクをしない、嫌がる学生が必ず一クラスに一人程度はいました。これの対応になかなか骨が折れました。

マスクをしない学生を注意すると、だいたい下の3つのパターンに分かれます。

  • タイプ1:注意をすると学生がキレる
  • タイプ2:注意をするとその時だけはマスクをするがすぐに外す
  • タイプ3:注意をするとそれ以降は授業最後までマスクをつける

タイプ3はほとんどいません。1割程度で、タイプ2が8割、タイプ1が1割ほどいました。タイプ1はクラスメイトと仲がよくなかったり、唯我独尊状態の子どもが多かったです。「病気でつけ続けられないんです」と釈明してくれればこちらも他の学生に説明なり対応できるのですが、彼らの言い分はひたすら「私は大丈夫、コロナじゃない。私はコロナなりません」です。この状況でそれを言い切れるほどの強者です、何を言っても無駄です。

つぶれる学校

コロナ禍によって経営が苦しくなった日本語学校の話を多く聞きました。

母体が別業種、旅行代理店や不動産、日本人を対象とした語学学校・塾などである場合はなんとか持ちこたえられたところもあるようです。

zoomで授業という地獄

オンライン授業が緊急事態宣言の時にどこの学校でも行われたと思います。現在も大学や専門学校では依然多く行われています。この時もお互いに辛かったです。

問題1:出席したかどうかの判定

通常であれば、授業が開始した時に出席を取り、そこにいれば出席、いなければ欠席です。こんなの言うまでもないことです。では、オンライン授業の『出席』とは?

  • A 授業開始前に出席を取り、返事をしたら出席。授業終了前に出席を取り、返事をしたら出席
  • B zoomの画面に顔を見せた時点で出席
  • C zoomの画面に授業終了後まで顔を見せ続けたら出席

Aは授業開始時だけ返事をすればいいので、後はzoomをONにしているだけで学生はゲームし放題です。終了前に適当に返事をすればいいだけです。Bも同様です。Cが理想ではありますが、できませんでした。ケータイやパソコンにカメラがない、または故障したと学生に言われればオシマイです。学校が、先生が買ってやるわけにもいきません。

問題2:授業がやりにくい

まずは新入生や海外にいる学生、留年して落ちてきた学生などの一度も会った事のない学生の顔と名前が一致しません。さらに、zoomで参加させることで精一杯の彼らにzoomの画面に自分の正しい名前を表示させるのは難しかったです。というか無理でした。

画面に学生がいない場合、知っている学生なら名前を呼んでそこにいるかどうか確認できますが、それができません。

基本的に彼らは顔を見せたがらないので、結局できませんでした。

5人や10人程度ならまだしも、それの2倍、3倍の人数に、しかも日本語もまともに話せない留学生にそれができるでしょうか。私には無理でした。

配布物(いわゆるプリント)もデータで送信し合えばできそうなのに、これが様々な要因によりできません。長くなるので割愛します。

さらに、うるさいという問題も大きかったです。
zoomの授業を開始したと同時に、駅構内のアナウンスが鳴り響き、とてもうるさかったです。
またある学生はベトナムから参加しているのですが、あのベトナム独特の喧騒がダイレクトに授業中鳴り響き続けていました。

レベルの高いクラス、頭のいい学生ばかりのクラスでは、ちゃんと学生が質問する時、学生が先生に当てられた時にだけミュートを解除し、話し始めていました。しかし、そうでないクラスはそれができません。先生の「話す時だけミュートを解除、それ以外はミュートにして」という指示は、もちろん通りません。

ゲームの音や寝ている学生のいびきも聞こえます。

ミュートにしたり、しなかったり、ゲームしたい学生はミュートにして、先生が学生の動向をチェックするために学生のミュートを解除するとまたミュートにしてきたり、もう本当に授業はカオス状態でした。

もう思い出したくもありません。

問題3:クラスが仲良くならない

問題2に書いた通り、クラスが仲良くなりません。活動などは夢のまた夢です。

問題4:学生の反応がわからない

問題2に書いた通り、学生の反応がわからないので、授業が進行しにくいです。

授業は学生の反応を見ながら、何を教えるか決めます。今日は雰囲気が重いなあと感じたらおもしろい導入を、クラスがちょっとうるさいと感じたらまじめな導入をする、というように導入案をいくつも作っておいて、学生の雰囲気や反応により何をどのように導入するかその都度決めます。それらが全て封じられると、もういつもの『授業』は成立しません。ただの『講義』になり下がります。

根本的な問題

そもそも、根本的な問題として、通信量制限によりzoomすらできない学生すらいました。

以上のことにより、留学生にオンライン授業は無理だと痛感しました。

コロナ禍での印象的なシーン

中国からの留学生で、二週間前に来日、隔離後初めて対面した留学生がくしゃみをしました。その中国人留学生は申し訳なさそうに後ずさりし、マスクの上から手で覆いました。その姿を、怯えるような目を見て、とても胸が痛くなりました。

また、ある学生は、SNS、WeChatやFacebookのグループチャット?私も詳しくはわからないのですが、そういったものを使って全校生徒の不安を煽り、学校を無理矢理休校にさせようと企てていました。それの対応に教務も事務も手を焼きました。

今後の教育現場

どの学校に在籍していても思うのは、この業界のアナログ体質です。それがこのコロナ禍により、一気にデジタル化したと、私自身も感じましたし、他の学校にいる教師の話を聞いていても感じました。
全学生にタブレット配布のような極端なものはまだまだ先の話になりそうですが、それでもかなり進展はしたと言えます。

これからこの業界がどのようになるのかは未知数です。もしかしたら世界的にオンライン授業が当たり前になって、先述したような「留学生にオンライン授業は無理です。」という言葉を訂正しなければならない世の中になっているかもしれません。

だけど、できれば私は対面授業を続けたい。あのライブ感を、全体で生み出す一体感を大切にした授業を作っていきたいと、今年強く思いました。

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