上級の9つの格助詞一覧 用法の教え方

前回の記事では絵を使って簡単な助詞の使い方を紹介しましたが、こちらでは初級以上の助詞の用法を紹介します。

助詞は様々な種類があります。格助詞副助詞接続助詞提題助詞取り立て助詞終助詞並列助詞などです。ここで紹介するのは格助詞だけです(並列助詞については少し触れています)。中級や上級で難しい会話、発表、記述をする時は格助詞以外の助詞も勉強した方がいいです

それから、『初級の9つの助詞の用法と使い方 練習問題つき)』では、例えば格助詞「を」の用法は3つとしましたが(【対象】【移動】【起点】)、本当はもっと細かく分けることができます。ここからはそれについて詳しく説明していきます。

◆記号の意味
 は用法がほぼ同じ
 例:学校 へ 行く。 = 学校 に 行く。
 は用法が同じではない
 例:この家は木 で 作られました。 ≠ この家は木 から 作られました。
 は用法が一部同じ、または似ている
 例:彼 に 会う。 ≒ 彼 と 会う。

格助詞の「を」

【生産物】

  • お湯 を 沸かす。
  • セーター を 編む。
  • 穴 を 掘る。

お湯は沸かさないし、セーターも編まない。穴も掘らない。この用法は、沸かしてできたのがお湯であり、編んでできたのがセーター、掘るも同様である。

【対象①:感情が向かう対象】

  • 人 を 愛する。
  • 彼 を 嫌う。
  • 彼はウィスキー を 好んで飲んでいる。

【対象②:使役の対象】

  • 先生は学生 を 立たせた。
  • 私は友達 を 怒らせた。

【対象③:授ける対象】

  • 私は彼に本 を あげた。
  • 弟子に書物 を 授けた。
  • 犬に餌 を 与えた。

【対象④:動作の対象】

  • ごはん を 食べます。
  • 日本語 を 勉強します。

【移動①:移動動作が行われる場所】

  • 公園 を 歩く。
  • 日本 を 旅行する。

「公園 で 歩く。」「日本 で 旅行する。」は✕ではないし、こういう風に言う日本人もいるにはいるが、普通は「を」を使う。しかし、次の移動②の用法は「で」と入れ替えることができない。

【移動②:移動動作の通過点】

  • 橋 を 渡る。 ✕橋 で 渡る。
  • 改札 を 通る。 ✕改札 で 通る。
  • まっすぐこの道 を 行ってください。 ✕この道 で 行ってください。

【移動③:移動動作の起点】

  • 家 を 出ます。
  • 飛行機が空港 を 出発しました。

格助詞の「で」

【動作が行われる場所】

  • A 学校 で 勉強します。 ✕学校 において 勉強します。
  • B 家 で ごはんを食べます。 ✕家 において ごはんを食べます。
  • (ニュース)世田谷区 で 大規模な火災が発生した。 = 世田谷区 において 大規模な火災が発生した。

「において」はかたい表現なので、日常的な事柄を扱うAとBのような文は「において」が使えない。

【限定】

  • A あと3人 で 申し込みを締め切ります。
  • 今日 で 閉店だ。

A:3人まで申し込みが可能。4人目は申し込みができない、という意味。

【基準】

  • A 3人 で 3000円のお支払いです。
  • B りんご2つ で 430円もする。

A:1人1000円の支払い、B:1つ215円、という意味。

【範囲】

  • 日本 で は女性が夜普通に出歩く。
  • ここ で はたばこが吸えない。

この範囲を表す「で」の用法は、多く「は」を「で」の後に伴う。さらに、「では」を「は」入れ替えることもできる。

  • 日本 は 女性が夜普通に出歩く。
  • ここ は たばこが吸えない。

これは「は」の主題の用法が関係している。女性が出歩く事が日本で行われ、禁煙である事がここで行われている事を表す。

【道具】

  • 箸 で 食べます。
  • ボール で あそびます。
  • えんぴつ で 書きます。

【手段】

  • 日本語 で 話します。
  • 電車 で 行きます。

【動作主の状態】

  • 裸足 で 歩く。 = 裸足のまま歩く。
  • A 素手 で 触るな。 = 素手のまま触るな。

「で」の前の言葉の状態で、「で」の後の言葉の動作を行う、という意味。Aの文は素手でなければ触ってもいい、つまり、手袋をつけて触れば問題ない。

【動作を行う主体】

主体は組織や集団のみ。個人は不可。この「で」は「が」で言い換えることができる。

  • 費用は自治体で負担いたします。
  • 警察でその事件の捜査を始めたらしい。
  • 国で責任を負うべき事案だ。

【原因・理由】

  • 病気 で 学校を休みました。
  • 台風 で 電車が止まりました。

【材料】

  • この家は木 で 作られました。 ≠ この家は木 から 作られました。
  • おにぎりは米 で 作ります。 ≠ おにぎりは米 から 作ります。

「で」と「から」の違い

格助詞の「と」

【共同行為者】

  • 彼女 と 結婚します。
  • 彼 と 握手します。
  • 彼 と 会う。

【行為の相手】

  • 友達 と 学校に行く。
  • 友達 と 勉強します。

上の共同行為者と何が違うのか。「と一緒に」に置き換えることができるかどうかを見てみればわかる。共同行為者はできず、行為の相手はできる。つまり、この2つは似ているようだが、用法は異なっていると言える。

【比較】

  • 日本 と ベトナム と どちらが大きいですか。
  • 私の服は友達の と 同じです。
  • 私の服は友達の と ちがいます。

【引用】

  • 先生は明日テストだ と 言っていました。
  • 私はいい と 思います。

【変化】

この「と」は「に」で言い換えることができる場合がある。

  • A 明日は雨 と なります。 = 明日は雨 に なります。
  • B ✕日本語が上手 と なりました。 〇日本語が上手 に なりました。

Aの文は天気予報で予報士が言う場合はどちらでも構わないが、Bは非常に身近な、日常的な会話で発する内容なので、不可となる。かたい、文語体で使うのが「となる」。

【内容】

  • 容疑者を犯人 と みなし、警察は彼を取り押さえた。

【並列助詞】

このページでは格助詞に絞って解説をしているが、これを入れないと納得できないと思い、入れる事にした。

  • 部屋に机 と いすがある。

これは並列助詞であり、格助詞ではない。

  • 彼は彼女 と 約束した。

これは格助詞であり、並列助詞ではない。並列助詞についてはこちらで詳しく解説している。
>>7つの並列助詞一覧 用法の教え方

格助詞の「に」

【存在の場所】

  • 学校 に います。
  • 私は家 に います。
  • へや に テレビがありません。

【動作の向かう先】

  • 友達 に 話します。
  • 母 に あげました。
  • 先生 に 伝えます。

【移動先】

  • 駅 に 着く。
  • 空港 に 到着する。

【用途】

  • このペンは絵を描くの に 使います。
  • Suicaは改札を通るの に 便利です。
  • この棒は背中をかくの に 役に立つ。

【目的】

  • 買い物 に 行きます。
  • 公園へ遊び に 来ました。

【変化】

  • 日本語が上手 に なりました。
  • 明日は雨 に なります。 ≒ 明日は雨 と なります。

【時】

  • 3時 に 寝ます。
  • 5月 に 国へ帰ります。

【行為・物の与え手】

  • 友達 に プレゼントをもらいました。 = 友達 から プレゼントをもらいました。
  • 誰か に 足を踏まれた。 ≠ 誰か から 足を踏まれた。
  • 弟 に カメラを壊されました。 ≠ 弟 から カメラを壊されました。

「誰か から 足を踏まれた」と言う日本人もいるが、「誰か に 足を踏まれた」の方が自然。

【対象に対する主体の状態】

  • 彼はいつも年配の人 に 親切だ。
  • 彼はこのプロジェクト に 熱心だ。

【原因・理由】

  • 彼は結果 に 落胆した。
  • 彼は仕事 に 悩んでいる。
  • 彼はお酒 に 酔った。

【能力】

  • 彼はこの辺り に 明るい。
  • 彼は歴史 に 詳しい。
  • 彼は数字 に 弱い。

格助詞の「が」

【変化の主体】

  • 体重 が 増える。
  • 背 が 伸びる。

【状態の主体】

  • 私 が チョウです。
  • どのりんご が おいしいですか。
  • 用事(ようじ)/かばん が あります。

【動作の主体】

  • 私 が します。 ≒ 私 は します。
  • 猫 が 来た。 ≒ 猫 は 来た。
  • 花 が 咲きます。 ≒ 花 は 咲きます。

「が」と「は」の違いについては以下を参照のこと。

助詞「は」「が」の用法 違いと使い分け

【対象(たいしょう)】

  • 日本料理 が 好きです。
  • 漢字 が 嫌(きら)いです。
  • パスポート が 必要(ひつよう)です。

※「が」は研究者などにより分け方が異なる。

格助詞の「へ」

【方向】

「へ」を「に」に入れ替えることが可能。

  • 家 へ 帰ります。 = 家 に 帰ります。
  • 日本 へ 来ました。 = 日本 に 来ました。

【動作の対象】

「へ」を「に」に入れ替えることが可能。

  • 警察 へ 知らせてください。 = 警察 に 知らせてください。

格助詞の「から」

【移動の起点】

  • 学校 から 歩いて行きます。

【時の起点】

  • 9時 から 勉強しました。

【原料】

  • ワインはぶどう から 作ります。
  • パンは小麦(こむぎ) から 作ります。

【授受表現の授ける側を表す】

動詞により「から」を「に」に入れ替えることが可能。

  • 友達 から 聞きました。 = 友達 に 聞きました。
  • 父 から お金をもらった。 = 父 に お金をもらった。
  • 友達 から お金を集める。 ≠ 友達 に お金を集める。

【原因】

  • 不注意 から 事故を起こした。 = 不注意 で 事故を起こした。
  • 彼はへたに経験があったこと から 油断し失敗してしまった。 = 彼はへたに経験があったこと で 油断し失敗してしまった。

【判断の根拠】

  • 彼の推理 から 判断すると犯人は山田さんになる。
  • DNA鑑定の結果 から 彼は父親ではないことが明らかだった。
  • 容疑者は全く反省していないこと から 減刑は難しいだろう。

格助詞の「まで」

【移動の終了地点】

  • 学校 まで 歩いて行きます。

【事態の終了地点】

  • 9時 まで 勉強しました。
  • 6時から9時 まで 勉強しました。
  • どうやら茶番もここ まで のようだ。
  • 地震はいつ まで 続くのだろうか。

格助詞の「より」

【比較の基準】

  • XさんはYさん より 背(せ)が高いです。 = X > Y
  • Xさん より Yさんの方が背が高いです。 = Y > X

【時の起点】

これは初級で学習しそうだが、初級の教科書、少なくとも『みんなの日本語-初級』では扱わない。

  • 式は正午 より 開始いたします。
  • 私の新生活がいよいよ明日 より 始まるのだ。

【移動の起点】

  • ここ より 先、危険!(看板などでよく見られる) = ここ から 先、危険!

【限定】

  • とにかくAをやってみる より ほかないだろう。 = とにかくAをやってみる しか ほかないだろう。

Aをやる以外にない。Aだけをやる。

格助詞の省略

話し言葉においては、「たばこ買ってきて」のように格助詞の省略がよく見られます、注意すべき点があります。

全て省略されるわけではない

全ての格助詞が話し言葉において省略されるわけではない。

省略可能なもの「が・に・へ・を」

  • A:誰(が)行く? B:私(が)行くよ。
  • A:どこ(に/へ)行くの? B:ちょっとスーパー(に/へ)行ってくる。
  • A:今何(を)してる? B:日本語(を)勉強してるとこ。

省略不可なもの「で・から・まで・と・より」

  • A:学校勉強している。(「で」の省略は不可)
  • 3時勉強する。(「から」なのか「まで」なのか、または「に」なのかわからない)
  • 彼会う。(「と」なのか「に」なのかわからない)
  • XさんはYさん背が高いです。(「より」の省略は不可)

「に」の【時】の用法は省略不可だが、【場所】は可能。

格助詞が省略されても文の意味に支障は生じない

動詞のタイプによって格助詞の組み合わせが決まるから、意味に支障は生じない

言語現象との関わり

目的語に助詞「も」をつけると、下のように「を」が消える。格助詞の省略はそれ以外の言語現象との関わりが認められる。

  • 本を買った→本も買った

日本語を勉強している外国人へ

日本語を教える仕事をしてみたいなら、ここまで専門的に勉強する必要があります。しかし、普通に日本語を使って大学や専門学校で勉強したりする時は不要です。もし将来、「どうしてこの助詞はこんな使い方をするんだろう?」と思った時は、またこのページを読んでみてください。

日本語教師になりたい人、日本語教育能力検定試験合格を目指す人へ

検定の最初の試験Ⅰには5つから1つ種類の違うものを選ぶ問題があります。その中に助詞を問うものがあります。下のようなものです。少し考えてみてください。答えはすぐ下にあります。

1.警察でその事件の捜査を始めたらしい。
2.上野公園でお花見をしようという話がある。
3.郷土資料館で特別公開を予定しているそうだ。
4.A大学で新校舎建設のための募金を呼びかけている。
5.県庁で地域の新しい日本語教育支援を計画している。

答えは

 

です。助詞の問題は検定に毎年、100%出題されているので、用法の違いを把握しておく必要があります。そして、実際に外国人に教える現場ではこの種類を見分ける力が大変役に立ちます。詳しくはこちらのカテゴリーにまとめてあるので、ご覧ください。

また、助詞の用法の分け方には「が」の項で述べた通り研究者などにより様々です。当ページではかなり細かく分けました。読んでいて「同じじゃない?」と思われた方もいらっしゃると思います。

そして、最後に、主に初級の範囲で扱う助詞をまとめ、当ページより言葉を極力省き、画像で解説したものが下記のページです。

初級(しょきゅう)の9つの助詞(じょし)の用法と使い方 練習問題つき

初級で助詞について質問された場合は該当ページ画像などを見せながら説明すると理解の一助となるかと思いますので、ご活用ください。

日本語教師のN1et、管理人による日本語教師養成レッスン詳細はこちら

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