留学生は“話せる”ようにならないといけないのか

日本語を学ぶ留学生にとって、会話能力の習得は必要不可欠なのでしょうか? 日本語教育の現場では、読み書きや試験対策に重点が置かれる一方、会話能力の重要性についての議論が続いています。本稿では、留学生を取り巻く日本語教育の実情を整理しつつ、会話能力がなぜ必要かを論じます。
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日本語学習者の多様なニーズ

日本には様々な日本語教育機関があります。機関によって目指すものは様々です。

主婦や二世に日本語を教えている機関だったら話せることを目指した方がいいと思います。近所付き合いや友達を作るのに読み書きやJLPTの取得はそれほど緊急性を要しません。

企業でビジネスパーソンに日本語を教えているなら、ビジネスで使える表現などを教授、やはり会議やプレゼンで話せるようにしないといけないでしょう。

日本語学習者の背景は多岐にわたり、学習目的によって求められるスキルも異なります

留学生と日本語教育の実情

日本の日本語学校の多くは、大学や専門学校への進学を目標とする「進学校」の性格が強く、JLPTや日本留学試験(EJU)の高得点を目指すカリキュラムが主流です。
これらの試験では、読解や聴解が重視される一方、発話能力(会話力)は直接評価されません。たとえば、JLPTの聴解問題では会話内容を理解する力が試されますが、受験者自身が話す機会は提供されません。このため、会話練習が後回しにされがちなのが現状です
しかし、会話能力が試験で問われないからといって、留学生にとって不要であるとは言えません。むしろ、会話能力は学業や社会生活を成功させるための基盤となるのです。

なぜ留学生に会話能力が必要なのか

  • 学業での必要性
    大学や専門学校での学びは、講義の受講だけでなく、ゼミやグループワークでの議論が欠かせません。これらの場面では、自分の意見を明確に伝え、相手の話を理解する会話能力が求められます。試験対策に偏った学習では、こうした実践的な場面に対応できません。

  • 社会生活での適応力
    留学生は日本の社会で生活する中で、日常生活やアルバイト、インターンシップなど、さまざまな場面で日本人とコミュニケーションを取る必要があります。たとえば、アパートの契約や病院での受診、友人との交流など、読み書きだけでは解決できない状況が多々あります。

  • 将来のキャリア形成
    日本の企業で働くことを目指す留学生にとって、会話能力は書類上の資格以上に重要です。面接や職場でのコミュニケーションを通じて、信頼関係を築き、チームの一員として機能するためには、流暢かつ適切な日本語での会話が不可欠です。

会話と面接:混同される誤解

一部の日本語学校では、進学のための面接対策として「どんな質問にも答えられるように」と指導されることがあります。しかし、面接での受け答えと日常的な会話は異なるスキルです。
面接は一方的な質問応答が中心であり、特定の目的に沿った限定的なコミュニケーションです。一方、会話は双方向性が高く、状況に応じた柔軟な対応が求められます
この違いを明確にせず、面接対策を会話練習と混同してしまうと、留学生は実生活で必要なコミュニケーション能力を十分に身につけられないリスクがあります。
たとえば、大学でのグループディスカッションやアルバイト先での同僚との会話など、進学後の場面では、試験対策だけでは対応できない「実践的な会話力」が求められます。

日本の実情と会話能力の価値

日本の社会では、学歴や資格が重視される傾向が強く、企業の採用プロセスでもJLPTの成績が参考にされることが多いです。
しかし、書類選考を通過した後、面接や職場でのコミュニケーションでは、流暢な日本語でのやり取りが求められます。特に、留学生が日本の大学や企業で活躍するためには、単なる試験の点数だけでなく、実際に「話せる」力が不可欠です
さらに、グローバル化が進む現代では、言語能力の評価基準として、ヨーロッパのCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)日本のJFスタンダードのような「can-do」基準が注目されています。これらの基準では、特定の場面で「何ができるか」が重視され、会話能力がその中心に据えられています。日本の人事担当者も、徐々にこうした国際的な基準を意識し始めています。

教育現場への提言

日本語教育の現場では、会話能力の育成を軽視する傾向がありますが、これを改める必要があります。具体的には、以下のような改善が求められます。
  • 会話に特化した授業の導入
    特定の場面(例:大学でのディスカッション、アルバイトでの接客)を想定したロールプレイやディベートを取り入れ、実際の会話で使える表現を学ぶ機会を増やす。
  • 評価方法の見直し
    期末試験が筆記中心である現状を見直し、会話能力を評価するスピーキングテストを導入する。これにより、学生の会話練習への動機付けが高まる。
  • 実践的な目標設定
    JFスタンダードやCEFRに基づく「can-do」リストを活用し、学生が具体的な会話スキルを段階的に習得できるカリキュラムを構築する。

結論:留学生に会話能力は必要不可欠

日本語を学ぶ留学生にとって、会話能力は学業、日常生活、将来のキャリアのいずれにおいても不可欠です。試験対策や資格取得が重要であることは確かですが、それだけでは日本の社会で十分に活躍することはできません。
会話能力は、留学生が日本での学びや生活を充実させ、将来の可能性を広げるための鍵です。日本語教育の現場は、会話練習をカリキュラムの中心に据え、留学生が「話せる」ようになるための支援を強化すべきです。
言語は使ってこそ定着し、活きてきます。留学生が日本の社会で輝くために、「話せる」力を育むことは、今、必要不可欠なのです。

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