「葉っぱ」「先っちょ」混同を回避するアクセントと名詞性無意接尾辞

授業後、学習者(S)から質問がありました。

S:先生、「端」と「端っこ」は同じですか
T:同じです。意味は同じですが、じゃ「っこ」は何だと思いますか
S:うーん

他にも、「隅っこ」「地べた」「ほっぺ」「泥んこ」「空っぽ」「輪っか」などがあります。「葉っぱ」の「っぱ」や、「先っちょ」の「っちょ」はいったい何なのでしょうか。

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日本語は同音異義語が多い

日本語は同音異義語が非常に多いです。難しい言葉で言うと、「日本語は音節数の少ない言語」なのです。漢字であれば違いを簡単に示せるのですが、会話だとそうはいきません。そこで、私達は一つ一つを使い分けるために、アクセント(accent)を変えたり、文脈で意思疎通を行うのです。

例えば、「柿」と「牡蠣」

上のように、アクセントが異なります。以下、「橋」と「箸」、「飴」と「雨」、「雲」と「蜘蛛」のアクセントです。

 

 

「くも」のように同じものもあります。

「っぱ」「っこ」の正体

「っぱ」「っこ」「っちょ」名詞性接尾辞だと考えられます。名詞性接尾辞とは、「私達」の「達」や、「本屋」の「屋」、「技術者」の「者」などのことです。

接尾辞にはいくつか種類があります。

名詞性接尾辞
 私達/技術者

動詞性接尾辞
 欲しがる/汗ばむ

形容詞性接尾辞
 白+い/理屈+っぽい/恩着せ+がましい

形容動詞性接尾辞
 道徳的/つややか

副詞性接尾辞
 歴史上/教育上

これら「達」「屋」にはしっかりとした意味・役割がありますが、「っぱ」「っちょ」などに意味はありません。単に区別するためだけに接続されたものなのです

「達」「屋」を名詞性有意接尾辞
「っぱ」「っちょ」を名詞性無意接尾辞

と呼ぶことにします。

結論

「葉っぱ」は「歯」や「刃」などと区別するために「っぱ」が付いたと考えられる。他にも
「端っこ」は「箸」「橋」などとの区別のため
「角っちょ」は「門」などとの区別のため
「先っちょ」は「咲き」「割き」などとの区別のため
「ほっぺ」は元々「頬(ほお)」なので、「法(ほう)」「報(ほう)」などとの区別のため

それぞれ名詞性無意接尾辞がつけられたのでしょう。

他、それっぽい言葉

「目ん玉」

「目ん玉」というのも「目」に名詞性接尾辞「ん玉」が付いたように見えますが、違います。「目ん玉」の「ん」は「の」が会話で使われる際に形が変わったものです。
例:いつしたのですか➔したんですか
  よくここで遊んだものだ➔もんだ

「花びら」

これは名詞性無意接尾辞でありません。有意の方です。「びら」というのは意味があります。平たく風になびくようなもののことを「びら(びら)」と表現します。これはオノマトペ由来のものです。
花というと、茎から含めて呼ぶこともありますし、葉や花粉を含めることもあります。しかし、花びらは「びら」の部分しか指しません。そういう意味でも「葉っぱ」の「っぱ」のように同音異義語と区別する名詞性無意接尾辞とは異なります。

「嘘っぱち」

「っぱち」は恐らく「嘘八百(八百はたくさんという意味)」が崩れて「っぱち」となったのだと考えられます。

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