【3課】教案:ここ/そこ/あそこは<場所>です

みんなの日本語 初級I 第二版』完全準拠。
導入や練習の仕方、教師として知っておきたい文型のポイントなどを解説します。

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学習項目

練習A
1.ここは<場所>です
2.<場所>はここです
3.Nは<場所>です
4.<場所>はこちらです
5.国/会社/大学は~です
6.N1のN2(生産国)
7.このNは〇〇円です

教案

新出語彙

この課では場所の名前がたくさん出てきます。長音を含む長い名前が多いので、しっかりと言えるまで練習しましょう。

練習A-1:ここ/そこ/あそこは<場所>です

ここでは、以下2つの使い方を学びます。
1.話し手と聞き手が実際にその場所にいる使い方 
2.写真や見取り図、地図を見て話し手が「ここは場所です」という使い方

導入

T:ここ(床を指さす)は教室です。
 (ドアを開けて)そこはトイレです。あそこは階段です。

ここ は きょうしつ です。

「ここ/そこ/あそこ」の指し示す範囲は、2課でやった「これ/それ/あれ」と同じであることを確認します。学生の反応を見て、もう一度絵を描くなりして復習してもよいでしょう。

T:(世界地図を使って)ここは日本です。ここはアメリカです。ここは?
S:中国です。
T:はい。ここは中国です。S1さん、ここは?
S1:イタリアです。
T:そうです。ここはイタリアです。S2さん、ここは?
S2:フランスです。
T:ここはフランスです。

練習B-1

◆B-1の絵を拡大し使用
T:ここは食堂です。(リピート練習)
 ここは?(受付を指す)
S:受付です。
T:ここは受付です。(リピート練習)
 (続けて2~4も行う)

練習A-2:<場所>はここ/そこ/あそこです

導入

T:(教室がある建物などの見取り図(拡大して見せる)を指して)
 教室はここです。トイレはここです。S1さん、事務所は?
S1:事務所…ここです。
T:はい。事務所はここです。

じむしょ は ここ です。

T:S2さん、食堂は?食堂はどこですか。
S2:…ここです。

しょくどう は どこ ですか。

T:(ホワイトボードに辞書を立てかけて、その前に立ち)あれ?辞書。辞書はどこですか。
S:辞書はそこです。
T:ありがとうございます。
T:(学生一人に教室の隅に隠れるように立ってもらう)あれ?S1さん。S1さんはどこですか。
S:S1さんはあそこです。

ここでついうっかり10課の学習項目「あります・います」を使わないように気をつけましょう。混乱のもとになります。ちょっと知っている学生が「あります・います」と発話した場合は、「よく知ってるねえ」で流しましょう。

練習B-2

T:(例の絵を見せて)トイレはどこですか。(リピート練習)どこですか?
S:あそこです。(リピート練習)
T:(1の絵を見せて)会議室は・・・(質問を作るよう促す)
S:会議室はどこですか。(リピート練習)
T:どこですか。
S:ここです。(リピート練習)
 (続けて2~4も行う)

活動:私の国はここです

◆学生に「私の国はここです」と指してもらい、国名を当てるゲーム
活動の流れ:
1.大きな世界地図を用意し、ホワイトボードに貼る
2.Tが「私の国はここです。ここはどこですか。」と聞き、手本を見せる
3.学生に一人ずつ出てきてもらい、同じようにしてもらう
4.聞いている学生は国名を答える

単国籍クラスなら、「うち(hometown)」を導入し、都市当てゲームでもいいです。みんなが同じ出身なら、第三者(ミラーさんなど)と国名を書いたカードを渡し、「ミラーさんの国はここです。」などですることもできます。珍しい国のほうが盛り上がります。

練習A-3:Nは<場所>です

ここで尋ねるNは以下の3つです。
1.物(パソコンなど)
2.人(テレーザちゃんなど)
3.場所(ワイン売り場など)

導入

T:(見取り図などを使って)自動販売機はどこですか。(それとなく2階を指す)
S:2階です。
T:はい。自動販売機は2階です。

じどうはんばいき は 2かい です。

階数の数え方は少々特殊です。練習Bで出てくる特殊なものは「1階(いっかい)」と「3階(さんがい)」だけですが、余裕があればすべて練習してもよいでしょう。

『みんなの日本語』で採用している階数の数え方は以下の通りです。(『翻訳・文法解説』169ページ参照)
1:いっかい
2:にかい
3:さんがい
4:よんかい
5:ごかい
6:ろっかい
7:ななかい
8:はっかい
9:きゅうかい
10:じゅっかい、じっかい
?:なんがい
3階(かい/がい)、8階(はっ/はち)、何階(かい/がい)は、個人差や地域差もあると思います。助数詞を苦手とする学習者も多いので、この段階ではあまり間違いに目くじら立てずにさらっと訂正する程度でよいでしょう。

T:(再び見取り図、必要な情報を入れておく)~先生はどこですか。
S:~先生は事務所です。
T:食堂はどこですか。
S:食堂は1階です。

T:私のうちは池袋です。S1さんのうちはどこですか。
S1:荻窪です。
T:S1さん、S2さんに。S2さんの・・・(質問を作るよう促す)
S1:S2さんのうちはどこですか。
S2:新宿です。

留学生なら、「うち」は今住んでいる家と故郷の家と2つあると思います。「日本のうち」「国のうち」と分けて聞くのもひとつの手です。

練習B-3

◆見取り図を使って行う
T:自動販売機はどこですか。(リピート練習)
S:2階です。(リピート練習)
T:テレーザちゃんは・・・?(質問を作るよう促す)
S:テレーザちゃんはどこですか。(リピート練習)
T:どこですか?
S:教室です。(リピート練習)
 (続けて2~4も行う)

B-3をそのままやってもいいですが、未習語に厳しくなければ学生が学んでいる場所にある語彙(図書室、体育館、コンビニ、売店など)をどんどん教えて練習しましょう。なかなか使わないであろう語彙(食堂など)を使って練習するより、はるかに有益です。

練習C-2

練習C-2をそのままするのではなく、会話の型を使って、自分たちの情報でペアワークをさせましょう。単国籍クラスなら、「うち」だけでも構いません。

世界地図を使って「~はどこですか」を組み合わせてもおもしろいです。

発展:書き練習&部屋番号

文型練習帳』8ページを使って、文を書く練習をします。

活動の流れ:
1.質問と答えの文を書くことを確認
2.各自書き込む。Tは机間巡視でチェック
3.板書させる
4.音読させ、リピート練習。適宜板書を添削する

なお、部屋番号の読み方は本冊にはありませんが、使うことが多いのでここで導入しておきましょう。

部屋番号は「204」なら「に、まる、よん」と、数字をひとつずつ読み、「0」は「まる」と読むことが多いですが、普通の数字と同じように「にひゃくよん」と読む場合もあります。

使用教材:

練習A-4:<場所>はこちら/そちら/あちらです

導入

◆デパートの絵と店員の絵で、知らない人同士の会話であることを示す
T:(客)階段はどちらですか。 (店員)あちらです。

かいだん は どちら ですか。
…あちら です。

媒介語が使えれば、「あそこ」より「あちら」のほうが丁寧であることを簡単に説明します。できなければ、友達同士の会話と対比して、丁寧であることを伝えましょう。

T:ここ、こちら。そこ、そちら。あそこ、あちら。どこ、どちら。

T:(見取り図を使って)トイレはどちらですか。
S:こちらです。
T:自動販売機はどちらですか。
S:2階です。

練習B-4

◆パワーポイントで2人の人物の絵を示すなど、状況をしっかり把握させて行う
T:(デパートで、客と店員の会話を見せる。客の上に吹き出しで【階段?】と書く)
 階段はどちらですか。(リピート練習)
 (アニメーションで、奥のほうに階段の絵を出す)
S:あちらです。(リピート練習)
T:(同じく、【エスカレーター?】で)エスカレーター・・・(質問を作るよう促す)
S:エスカレーターはどちらですか。(リピート練習)
 (続けて1~4を行う)
 ※3は寮の受付、4は大人同士の会話、などを設定するとよい

活動:買い物リスト

◆買い物リストを使って、買いたいものがどこにあるか尋ねる練習
 デパートの図は『翻訳・文法解説』25ページを使うとよい
活動の流れ:
1.ペアを作り、それぞれに買い物リスト(本、時計などが書いてある)を配布する
2.一人が客、一人がデパートの店員になり、客は店員にリストのものがどこにあるかを尋ねる
3.店員は『翻訳・文法解説』25ページを見ながら「~階です」と答える

リストが終わったら、自分たちで自由に会話させても面白いです。

使用教材:

練習A-5:国/会社/大学は~です

導入

◆男の人とミラーさんの会話を見せる
T:(男の人)私の国は日本です。ミラーさんのお国はどちらですか。
 (ミラー)アメリカです。
 (男の人)会社はどちらですか。
 (ミラー)IMCです。

おくに/かいしゃ は どちらですか。

日本語では、「会社」や「学校」は「何(what)」ではなく「どこ・どちら(where)」を使って尋ねることを強調しましょう。

T:S1さんのお国はどちらですか。
S1:中国です。
T:S1さん、S2さんに。(質問するよう促す)
S1:S2さんのお国はどちらですか。
S2:ベトナムです。

練習B-5&6

この練習は、「その場にいない人(ミラーさんなど)」について私たち2人で会話する、という状況を設定してもいいですが、少々ややこしいです。第三者(男の人など)と該当者(ミラーさんなど)の会話、という状況を提示し、その人になりきって練習する、というほうがわかりやすいです。

◆導入と同じように、男の人と該当者の会話を見せて行う
 パワーポイントを使って、国名や会社名をアニメーションで小出しにするとなおよい
T:ミラーさんのお国・・・?(質問を作るよう促す)
S:ミラーさんのお国はどちらですか。(リピート練習)
T:(【アメリカ】を出す)
S:アメリカです。(リピート練習)
T:会社・・・?(質問を作るよう促す)
S:ミラーさんの会社はどちらですか。(リピート練習)
T:(【IMC】を出す)
S:IMCです。(リピート練習)
 (続けて1~4を行う)

練習A-6:N1のN2(生産国)

1課では「人の所属」、2課では「物の内容」を扱いました。3課では、「物の生産国」を表す「N1のN2」を勉強します。疑問詞は「なん」ではなく「どこ」になります。

導入

T:(持ち物を使って)これは日本のかばんです。これはアメリカのパソコンです。これはイタリアの時計です。

これ は アメリカ の パソコン です。

T:S1さん、それはどこの時計ですか。
S1:これは中国の時計です。

それ は どこ の とけい ですか。

◆様々なものや写真を使って練習
T:(ベンツ)これはどこの車ですか。
S:ドイツの車です。
T:(ヴィトンのかばん)これはどこのかばんですか。
S:フランスのかばんです。

練習B-7

T:(例の絵を見せる。国は隠しておく)これはどこのかばんですか。(リピート練習)
 (【韓国】を見せる)
S:韓国のかばんです。(リピート練習)
T:(ワインの絵)これは・・・?(質問を作るよう促す)
S:これはどこのワインですか。(リピート練習)
T:(【フランス】を見せる)
S:フランスのワインです。(リピート練習)
 (続けて2~4も行う)

質問の答えについて、2課で勉強した形式名詞の「の」を使って「韓国のです」「フランスのです」と言っても構いません。

練習A-7:このNは〇〇円です

導入:数字(100~〇百万)

100までは簡単なのですが、100台、1000台は音の変化があり学生は一苦労です。1~100までを復習した後、音の変化をしっかり確認してから何度も練習させましょう。練習Bをするには「〇百万」まで言えれば大丈夫ですが、余裕があれば「〇千万」や「〇億」も紹介しましょう。一覧は『翻訳・文法解説』の164ページにあります。

◆おすすめの導入・練習
1.パワーポイントなどで数字と読み方を提示し、リピート練習
2.ランダムに数字を提示し、読む練習
3.教師が言った数字をカードを並び替えて作る練習
4.ビンゴゲーム

導入:このNは〇〇円です

T:(教科書の値段のところを見せて)この本は2500円です。
 (周りのもので行う)このパソコンは7万円です。このボールペンは120円です。

この ほん は 2500円 です。

「1000円」が「イチセンエン」になったり、「セエン」になったりしてしまうことがあります。よく聞いて、その都度注意しましょう。
また、自分の時計やネクタイを指し、とんでもない値段を書くと盛り上がります。
例:この時計は…980000000円です。

T:S1さん、この本(文法解説)はいくらですか。
S1:2000円です。
T:S2さん、このボールペンはいくらですか。
S2:100円です。

この ほん は いくら ですか。

練習B-8

T:(例の絵を見せる。値段は隠しておく)このかばんはいくらですか。(リピート練習)
 (【¥7,300】を見せる)
S:7300円です。(リピート練習)
T:(ワインの絵)この・・?(質問を作るよう促す)
S:このワインはいくらですか。(リピート練習)
T:(【¥3,200】を見せる)
S:3200円です。(リピート練習)
 (続けて2~4も行う)

楽しい授業の作り方

問題をやらせるのでも、言い方たった一つで、学生のやる気が変わります。
以下のような問題をさせたい時に、

ただ「書いてください」というよりも、「これはゲームです。こちら(教室右半分を指しながら)はAチーム、こちら(左)はBです。」と宣言して早押しクイズみたいにすると、授業が楽しくなります。
ゲームなので大声になるし、大声のおかげで互いのミスに気づきやすくピアラーニングになる、発話量も増える、なにより楽しいです。

【2課】教案:これ/それ/あれはNです
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【4課】教案:時間/曜日、初動詞
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