オノマトペ(擬態語と擬音語)の恣意性 『ベギラゴン』が強そうに聞こえる理由

ピカチュウは『ピカ』という擬態語と『チュウ』という擬音語から名付けられたものです。擬態語擬音語を総称してオノマトペと呼びます。

私は外国人に日本語を教える仕事をしていますが、このオノマトペを外国人に教えるのは難しいです。それは、“日本人”の言葉に対する恣意性によるものです。恣意性についてはつまらないのでページ下部で述べます。まずは擬態語と擬音語についての説明から。

2種類のオノマトペ

擬態語:音が出ない

実際に音が出ないオノマトペを擬態語と呼びます。

擬音語:音が出る

実際に音が出るオノマトペを擬音語と呼びます。

オノマトペの楽しみ方

漫画には音がありません。しかし、オノマトペを使用すれば、紙面で暴れるキャラクターがどのような動きをしているかがわかり、漫画に臨場感が増します。ピカチュウもそうですが、キャラクター名にオノマトペが使われたりと、日本のアニメやゲームなどはわかると大変楽しいものです。使われている作品を紹介する前に、オノマトペにはある程度のルールがあるので、それを紹介します。

一定のルール

オノマトペには非常に豊富な造語力があります。上のルールを使えばいくらでも言葉を生み出すことができます。濁点は言葉に強い印象を持たせ、促音は素早さを、清音は心地よさなどを表す際などに用いられます。

もちろん何事にも例外というものがありますし、オノマトペは年代や性別によってその感じ方、造語力に違いがあるので、このルールが絶対的なものだとは思わないでください。あくまで目安です。

ワンピース

ワンピースの悪魔の実はオノマトペを使ったものが多く見られます。

このメラメラの実は火がメラメラと燃える様子を表すオノマトペです。他にもモクモクの実(雲人間)やグラグラの実(揺らす能力)などがありますが、そのどれもがオノマトペだと推察できます。

ドラゴンクエスト

ドラゴンクエストのベギラゴン。これはオノマトペと言えないかもしれませんが、上のルールを適用すると、「強そうに聞こえるように」とよく考えられていると思います。これを、例えばヘキラコンとすると、とても弱そうに聞こえます。

他にもドラゴンクエストに出て来る呪文の名前にはメラというものがありますが、これは先に述べたメラメラの実同様、オノマトペ由来と言えるでしょう。

堀井雄二氏(ドラクエの生みの親)らがこのルールを知った上で名付けたかは定かではありませんが、会議では「これ強そう!これにしよう!」と言っていたのではないかと推察できます。

LINEスタンプ

LINEだけではありません。いわゆるスタンプのようなものは昔からありましたが、キャラクターと共に添えられる言葉はどれもオノマトペです。

看板やメニュー

どちらも松屋の看板に書いてあったものです。下はココ壱番屋というカレー屋のメニューにあったものです。

食材がどのような状態であるか(ごろっと・シャキシャキ)だけでなく、味がどのようなものか(ピリッ)までを文字で表します。

モチベーションアップ

学習者に教える際は、このようにポップカルチャーや、ラインなどの実用性を伴ったものを絡めながら教えるとモチベーションもあがり、授業が生きたものとなります

さらに、オノマトペが会話内で多く使われているものを見せてもいいかもしれません。プロデューサーみたいな話し方になっていますが、以下はオノマトペを多く使用した例です。

言語の恣意性とは

来日留学生の前で教卓をコンコンと叩きます。「これを言葉にしてみて」と彼らに言うと国によって様々な言葉が出ます。拳を教卓に叩きつけ「これは?」と言うと、やはり同様の反応です。

言語においては、表すものと表されるものとの間に必然的な関係はないとされています。これを恣意性といいます。しかしオノマトペは必然的ではありませんが、語形と語義の間に因果関係が認められます。
具体例を挙げて説明します。

「机を叩いた際に鳴る音をコンコンと呼ぶことにしよう!」と決めたのはいつでしょうか。誰が何を基準にそのように決めたのかは誰にもわかりません。しかし、“日本人ならば”その音をコンコンと表現するようになっています。仮に、それをスンスンやポラポラ、トッカノームと表現しなければならないということなったら、非常に落ち着かないでしょう。

次に、iPS細胞という名前が初めて世に出た時、山中伸弥教授が「これはiPS細胞といいます」と言って誰が反対したでしょうか。誰もいませんし、そこに気持ち悪さもありません。誰もが「へえ、iPS細胞ねえ」と思ったはずです。仮に教授が「やっぱりiiPS細胞にします」「長いからi胞にします」といっても何ら不都合はありません。教授がそう”決めた”のですから。

同様にして、鶏をニワトリ、牛をウシと呼ぶのは他の動物と区別しているに過ぎず、鶏をウシ、牛をブタと呼んでも、社会がそれを認めれば何の不都合もないと言う事です。

しかし、オノマトペはそうはいきません。必然的とはいえないまでも、語形と意味との間にある程度因果的な繋がりが認められます

これは、スイスの言語学者フェルディナン・ド・ソシュールが唱えた、【語の指し示す対象と語形に必然的な繋がりがない事や、言語によって概念化の仕方が違う】と言う事からも確かです。

ダラダラと長く書きましたが、要は、オノマトペとはその言語を用いる人々の共通する感覚から生まれたもの、ということです。

オノマトペを学習者に教えるタイミング

オノマトペの説明自体は初級の語彙でもできます。しかし、日本語教育において、初級の教科書ではあまりオノマトペは見られません。そして、学習者が興味を持ち始めるのは中級後半ぐらいからでしょうか。在日期間が長くなるにつれ、聞く頻度も増えていきます。上級ならば恣意性について教えてもいいでしょう。皆目をキラキラさせて聞きますし、一生懸命メモします。JLPTのN1の試験でもわからないと答えられない問題もあります。

オノマトペは実益兼ねたお勉強なのです!

皆さんもぜひ授業で扱ってみてください。

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