完全攻略!自動詞・他動詞とは 検定風練習問題つき

動詞は自動詞と他動詞の2つに分けられます。「“人”が他に影響を及ぼすのが他動詞でそうでないのが自動詞」というのは誤りです。他にも自他動詞には様々な勘違いがあるので、まずはそれらから説明していきます。

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自他動詞 2つの勘違い

自動詞≠無意志動詞

「自動詞は全て無意志動詞である」と勘違いされている方がいます。自動詞が多いというだけで、イコールではありません。このように勘違いする学習者も多いです。そしてなぜ教師も学習者もこのような勘違いをするのかというと、意志無意志を教え始めるのが、自他動詞を教える時期と重なっているからです

  • 消えます(電気が)
  • 壊れます(コップが)
  • 折れます(木が)
  • 破れます(紙が)
  • 汚れます(服が)
  • 外れます(ボタンが)
  • やせます

これらは29課で教える自動詞であり、全て無意志動詞です。しかし、

  • 学校へ行く
  • 9時に起きる
  • 部屋で踊る
  • 近所を回る

これらは全て自動詞であり、意志動詞です。他にも「助詞のガが付く動詞は無意志/自動詞だ」と思っている人もいますが、それも誤りなので注意しましょう。

「人が~」≠他動詞

よく「“人”がなになにをします。他動詞です。そうじゃないものは自動詞です」などと説明する先生がいますが、大変な誤りです。また、これも学習者によく同じ事を言われます。次の動詞を見てください。自動詞と他動詞、どちらでしょうか。

  • 運ぶ
  • 治す

「運ぶ」は他動詞です。最初に思いつくのは「人が荷物を運ぶ」という文だと思います。これはまさに「“人”がなになにをします」の説明に当てはまりますが、「貨物列車が荷物を運ぶ」という文の場合は、当てはまりません。「治す」も「医者が病気を治す」と「その薬が難病を治した」とがあります。

恐らくですが、「“人”がなになにをします。他動詞です」と説明する人は意志動詞を他動詞、無意志動詞を自動詞と勘違いしているのだと思います。意志無意志動詞についてはこちらで詳しく解説しています。

【結果】は自動詞が多い

「~ている」は日本語では様々な用法があります。

  • 【進行】今食べている
  • 【結果】窓が割れている
  • 【経験】富士山に一度登っている
  • 【習慣】いつもあの喫茶店に通っている
  • 【属性】彼はあの学校で勉強している 彼女はあそこで働いている

分け方は教科書によって違うようですが、だいたいどの教科書でも上の5つは初級段階で学ぶ用法です。
2つ目の【結果】、この用法を表す際に他動詞よりもはるかに用いられるのが自動詞です(他動詞も少しあります)

移動動詞は自動詞か他動詞か

移動動詞は自動詞です。問題は助詞です。

  • 行く:Pへ/に(動作の向き)
  • 渡る:Pを(行為が行われる場所)

自動詞ですが、ガをとらない。他動詞は【行為の影響が他に及ぶ動詞】の事。移動する事で影響が及ぶのは自分(疲れる)か地面(痛がる)ぐらいなので、自動詞という事になります。
しかし、この「他に影響が及ぶ」という話は日本語学習者の学習過程で自他を学習する段階ではまず理解不能です。何度か試しましたが、おすすめしません。

動詞の自他対応

動詞には「切れる・切る」のように、語幹同形、自他で対応する言葉があります。他にも「付く・付ける」「開く(あく)・開く(ひらく)」などがあります。一方、自他で対応する言葉がないものもあります。例えば、「読む」「書く」「食べる」は他動詞で、これに対応する自動詞はありません。このような他動詞を「無対他動詞(むついたどうし)」と呼び、「行く」「泣く」「起きる」などは「無対自動詞」と呼ばれます。

自動詞・他動詞とは

それでは、自動詞とは、他動詞とは何なのでしょうか。その定義を以下で紹介します。これを冒頭で述べるべきだと思いましたが、話が難しく、しかも学習者には伝えられないので、あえて最後に持って来ました。覚えていて損はありませんが、教育現場ではあまり役に立たない話です。

①「が」:ほほ全ての動詞において、主体の動作、変化(の結果)などを表す。この「が」を主格助詞と呼ぶ
②「を」:一部の動詞において、動作が及ぶ対象、動作や変化の結果などを表す。この「を」を対格名詞句と呼ぶ

①と②を踏まえた上で、「が」「を」の両方を用いることができる動詞を他動詞と呼びます。上の画像で言えば、「電気が付く」には主格助詞「が」は使えないため自動詞だとわかります。「電気をつける」には主格助詞「が」及び、対格名詞句「を」が使えるため他動詞であるとわかります。

この自他動詞の判別方法は先ほども述べた通り、日本語学習者には教えられません。なぜなら、「人が電気がつく」に違和感を覚えるのは日本語母語話者だからです

T:ほら、ね?これ、「薬が人々が治った」、変でしょう?おかしいよね?だから自動詞ってわかるんだよ

と言われても学習者は「だからその違和感の正体を教えてくれ」と思うでしょう。だから、教育現場ではあまり役に立たないのです。
ちなみに、その正体とは、チョムスキーの生成文法です。アメリカの言語学者チョムスキーが提唱した理論で、人間は生まれながらにして、言語能力の獲得を可能にする言語獲得マシン、普遍文法を持って生まれてくるというものです。
この生成文法を獲得するには日本語母語話者として生まれるか、相当な訓練を積まなければなりません。従って、学習者に「ほらこの文、違和感」とは言えないのです。

日本語教育能力検定試験風オリジナル自他動詞問題

日本語教育能力検定試験っぽく問題を作ってみました。最後の問題のみ平成28年度過去問からです。

次の問題の【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを、それぞれ1~3の中から一つずつ選べ。

(1) 【動詞の自他】
1 食べる 2 走る 3 開ける
(2) 【動詞の自他】
1 進む 2 読む 3 揉む
(3) 【動詞の自他】
1 付く 2 着く 3 着る
(4) 【動詞の自他】
1 付ける 2 書ける 3 欠ける
(5) 【動詞の自他】
1 浮く 2 飛ぶ 3 投げる
(6) 【動詞の自他】
1 空く 2 開く 3 吹く

(7) 【動詞の自他】 平成28年度過去問より
1 走る 2 渡る 3 通る 4 回る 5 移る

日本語教育能力検定試験風オリジナル自他動詞問題の答えと解説

(1) 【動詞の自他】
1 食べる 2 走る 3 開ける
答えは2です。「走る」のみ移動動詞で、自動詞です。移動動詞は全て自動詞です

(2) 【動詞の自他】
1 進む 2 読む 3 揉む
答えは1です。「進む」のみ移動動詞で、自動詞です。移動動詞、「進む」や「泳ぐ」「飛ぶ」などは移動する場所を「を」で表すということに注意しましょう。「道を進む」「25mを泳ぐ※」「空を飛ぶ」。
※「場所を移動動詞」と「場所で移動動詞」についてはこちらのページで詳しく解説しています

(3) 【動詞の自他】
1 付く 2 着く 3 着る
答えは3です。「着く」は「駅に着く」で自動詞です。漢字は同じですが「着る」は「服を着る」で他動詞です。1は「服に染みが付く」で自動詞です。
蛇足ですが、学習者に「きます は1グループですか、2ですか、3?」と聞かれたら、「2と3」と答えましょう。「きます」は「着ます(2グループ動詞)」と「来ます(3)」とひらがな表記、または単語のみで発話した場合、2か3か区別ができません。

(4) 【動詞の自他】
1 付ける 2 書ける 3 欠ける
答えは1です。「書ける」は「書く」の可能動詞です。可能動詞は全て自動詞です。「欠ける」も自動詞です。

(5) 【動詞の自他】
1 浮く 2 飛ぶ 3 投げる
答えは3です。

(6) 【動詞の自他】
1 空く 2 開く 3 吹く
答えは1です。「開く」と「吹く」は自他同形です。どちらも初級段階で学ぶ動詞です。「ドアが開く/を開く」、「風が吹く・笛を吹く」

(7) 【動詞の自他】 平成28年度過去問より
1 走る 2 渡る 3 通る 4 回る 5 移る
答えは1です。1のみ無対自動詞です。「渡る-渡す」「通る-通す」「回る-回す」「移る-移す」
「走る-✕」:対になる他動詞がない。

 

他の問題は検定問題にまとめてあります。

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コメント

  1. 初めまして。いつも参考にさせて頂いています。ありがとうございます。
    練習問題の3番ですが、答えは1なのでしょうか?
    1・2は自動詞、3は他動詞で答えは3だと思ったのですが、解答を見ても答えが1になる理由がよくわかりませんでした。

    • 大変失礼いたしました。おっしゃる通り、答えは3です。解説、修正いたしましたので、ご査収ください。コメント、ありがとうございました。