日本語学習者のひらがな・カタカナの誤用例と直し方のコツ

日本語教育機関が抱える学生が、中国人留学生から非漢字圏の学生にシフトしつつあります。それに伴って文字指導に苦慮する先生方もいらっしゃるかと思いますが、当記事ではその指導の一助になればと、留学生がよくやってしまう文字の間違いを紹介、その指導法も併せて紹介しています。

ひらがな・カタカナ指導について

カタカナは出身国問わず苦戦する文字です。ひらがなは距離がおかしかったり、線を入れる箇所や中心がずれたり、というぐらいの間違いですが、カタカナはそれらに加えて字形がぐにゃぐにゃになりがちです。

以下は実際の留学生の誤用例とその直し方(赤ペンの入れ方)です。学生に配ってもいいですし、教える前に教師が見ておくだけでも彼らがどんな風に間違うのか予習できるでしょう。

カタカナだけでなく、ひらがなや漢字も何度言っても直らないように見えますが、子供の成長に親が気づきにくいのと同じです。少しずつですがちゃんと改善されているのは、同じ人に初級と上級で教えればわかります。

そして子供同様、幼少期についた癖や習慣がなかなか直らないのと同じで、字形も初級の時にしっかり直さないと中級・上級で直すのは大変難しいです

許容範囲は教師によっても違いますが、字体があっていれば〇にする(後述)など、配慮も必要です。
しかし、「ン・ソ」「シ・ツ」などはしつこく訂正し続けないと、彼らが困ることになります。銀行の口座を開設する際に、「ホアン」が正しいのに用紙に「ホアソ」と書けばどうなるか、私はわかりませんが、ただ恐ろしく面倒そうです。学校の試験や、入学試験の小論文でも同様、減点の対象になります。

下の画像は、ンとソの誤用が酷い学生を居残り指導した際のWBです。

T:ちがう!ンはもっと下!ソは上に!
S:せ、先生・・・もう許してください・・・

選択問題で確認

上の誤用例を利用し、選択問題ができます。左端に正しい字を書き、その右に①②③と正しい字形のもの、そうでないものをランダムに並べ、正しいものを学生に選ばせるもの。拡大して全体でやったり、プリントでやったりとやり方はいろいろあります。

訓読みと音読み。漢字指導について

訓読みと音読みは教えなければならないのでしょうか。L1新出の「学」を例に考えてみましょう。

「学」の訓は「まなぶ」、音は「ガク」です。これは「学校」や「学生」にも使われる漢字で、L1にふさわしい漢字です。学生もこれはすぐに書けるし、読めるようになります。
しかし、「まなぶ」は別です。これは全課通して教えることもなく、また私達の生活においても多用されるとは言えません。
この「まなぶ」を学生に教える必要性を私は感じません。「訓読みは、ま!な!ぶ!覚えて!」と言われて覚えるでしょうか。使わないものは覚えない。これは言語習得において常識で、「まなぶ」を教える必要はないのです
そもそも訓や音などと分けて教えるのはナンセンスで、学生にしてみれば、

S:そんなのは知らん、使うのを教えてくれ

です。
よって、漢字テストで「まなぶ」を問う意味はなく、覚える時間も無駄です。他にも「自」の訓読み「みずから」を教えたり、反対に「働く」の音読み「どう」を教えたりするのも同様です。
ずっと教えなくてもいいというわけではなく、段階を踏もうという話です。

さらに、書き順も教える必要はありません。空書もはなはだ時間の無駄です。一つの漢字に音も訓も教え、意味、そして連濁などによる音変化までやって、その上書き順?日本人でもひらがなの書き順すらままならない人だっているのだから、漢字の書き順なんて彼らには到底無理なことは明らかです。

留学生と日本人の漢字を学ぶ期間、環境は全く別物です。日本語学習者、留学生にしてもビジネスパーソンにしても、彼らには往々にして時間がありません。せめて、読める事を目指すとか、書けるだけでオッケーなどしなければ、目標を絞らずあれもこれもとやり、結局卒業時漢字は読めない書けないという悲しい結果になってしまいかねません。

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漢字の字形の指導はほどほどに

字体や字形についての説明です。

字体
とはその文字の持つ核となる部分。共通点。『木』という漢字を『大』と書いたらそれは『木』とは認識されない。しかし、『木』の縦画をトメるハネるかは人によって違う。しかし、どちらにしてもそれは『木』と認識され得る。その文字の持つ共通点、骨組みから外れなければいいのだ。
字形
とは実際に書かれる文字。10人いれば10通りの字形が存在する。
「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」(平成28年2月29日国語分科会)より
〇手書き文字と印刷文字の表し方には,習慣の違いがあり,一方だけが正しいのではない。
〇字の細部に違いがあっても,その漢字の骨組みが同じであれば,誤っているとはみなされない。
引用元:「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」(文化審議会国語分科会)の概要

このように、国の方針として明記されているのですから、あまり字形にうるさくならないように。

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“日本語学習者のひらがな・カタカナの誤用例と直し方のコツ” への1件の返信

  1. たいへん心に訴える記事内容でした。
    非漢字圏の学生に、「きれいな ひらがな」「きれいな カタカナ」を求めるのは、大変な労力です。自分は残念ながら「ひらがな」の文字に自信がないので、特に指導時のストレスといったらありません。「ツ」「シ」とかも何回も教えますね。非漢字圏学生がすべて、字形に問題を生じるかと言うと、そうでもないのです。数回書き取りするだけで、日本人とそん色ないレベルまで書けるようになる学生もいます。でも、何度指導しても、同じようなミスを繰り返し、「自分の字形のどこが問題なのか、判断つかない。正直、これ以上やってられないよ」とあからさまな態度を示す学生もいます。指導する教師側も、教師によって、ひらがなの字形のクセが個々にあり、「模範」が微妙に異なります。確かに初級時にきちんとした字形を曲がりなりにも確保しておかなければ、化石化してからでは遅いという理由に納得はしますが、それにしても、担任によっては、妥協がなく、「とにかくキチンと書けるまで徹底指導してください」と言い、それに従って繰り返す「ひらがな指導」には、内心、辟易します。こんなことでは日本語教師として失格なんだろうな、と思いながら…。しかも、国名は避けますが(インド南東部隣、小さな島の国)、4月入学としながら、お金を作るのに時間がかかり、さみだれ式に順次入国、そのたびに、クラス編成をやり直し、そして50音をイチから教えるという今年度のパターンに嫌気倍増、情けないですけどノイローゼに近くなりました。それで悩んだ末、そのローレベルのクラス担当からは外してもらいました。「あいうえお」からスタート、4回目、また字形の細かな指導、という事態には耐えられませんでした。長々書きこんでしまい、申し訳ありません。でも、どのあたりで許容するかとうのも、重要ではないでしょうか。カタカナの「ナ」「メ」、前述の「ツ」「シ」、「ン」「ソ」など、おろそかには絶対できない肝はあります。でも、細かすぎるのも学生側だって、最初からヤラれたら、ヤル気なくすと思いますね。

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